著者
小林 まおり 倉片 憲治
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.85-93, 2023-02-01 (Released:2023-03-01)
参考文献数
73

女声と男声,どちらが聞き取り易いであろうか。一般に女声の方が聞き取り易いとされているが,高齢者や聴覚障がい者では聞き取りづらいとの意見もある。本総説では,種々の研究結果を概観することで,この問いへの解答を試みた。まず,聴取実験を行った研究を比較したところ,女声の方が了解度や印象評価の結果は高いものの,概してその効果は小さかった。次に,音響特徴を分析した研究では,了解性の高い音声の特徴が女声に多くみられる傾向にあった。一方,高齢者で男声よりも女声の方が聞き取りにくいことを示した実験結果は確認できなかった。最後に,これらレビューの結果から,話者の性別のバランスを考慮した音声研究の必要性について提言を行った。
著者
小林 まおり 上野 佳奈子
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.212-220, 2017-04-01 (Released:2017-10-01)
参考文献数
8

本研究では,ホールにおけるフルート演奏音の聴感印象について,楽器の個性としての遠鳴り・そば鳴りの観点から検討した。実験では,ステージと客席で同時に収録した8本のフルートの演奏音を3次元音場再現装置で実験参加者に呈示し,各楽器についてそば鳴り・遠鳴りの評価を求めた。その際,遠鳴り・そば鳴りの定義や重視する聴感印象についてインタビュー調査を行った。その結果,定義については通説と概して一致するものの,評価時の着眼点は個人差があることが分かった。各フルートの評価は着眼点に応じて異なっていたが,比較的多数の実験参加者に遠鳴り・そば鳴りと評価された楽器については音圧レベル,及び倍音構造において共通の傾向がみられ,主観的評価との対応が確認された。
著者
小林 まおり 藤井 真治 岩谷 幸雄 坂本 修一 鈴木 陽一
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.93-97, 2011-03-31 (Released:2017-02-01)
参考文献数
25

The perception of the spatial location of an auditory stimulus can be captured by a spatially disparate visual stimulus, a phenomenon known as the ventriloquism effect. Many studies have shown temporal and spatial dependency of this phenomenon but its temporal dynamics are not fully understood. In this study, we presented participants with a three-minute of audio-visual stimuli, consisting of a pair of light and sound noise with a spatial disparity of either 0, 5 or 10 degrees. Ten participants were instructed to observe the audio-visual stimuli, and to report their position consistency of stimuli by pushing one of two bottoms, which indicated "same" or "different" respectively. The time series reported were analyzed as perceptual transitions. The results showed that (1) the mean total duration of the "same location" response increased as the disparities between noise and light decreased, (2) the percept switched during the stimulus presentation in all disparity condition after initial build-up of perception of "same location", and (3) the mean transition times varied depending on the disparity condition. These results show that the ventriloquism effect varies with observation time, suggesting that audiovisual spatial integration have time-varying nature.