著者
伊藤 操子 植木 邦和 坂本 修一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.41-48, 1982-05-26 (Released:2009-12-17)
参考文献数
15
被引用文献数
1 3 1

1) 鉄道敷において管理対象となる植生の概要を知るために, 国鉄沿線の問題雑草に関する全国的なアンケート調査を行うとともに, 大阪周辺の線路について優占草種とその分布に影響する人為的要因との関係を調査, 検討した。2) アンケート調査において問題雑草として最も回答の多かった種ススキであり, 北海道から鹿児島までほぼ全域でみとめられた。2~3位はイタドリ, クズで山形以南で広く問題視されており, さらにヨモギ属, セイタカアワダチソウ, ササ葉類, ヨシ, スギナも多かった。北海道における種類は本州以南とかなり異っていた。3) 大阪周辺についての車窓調査の結果, 発生量の多い大型草本は, ススキ, セイタカアワダチソウ, エノコログサ属, チガヤ及びクズであった。これらの発生量と線路側面の形態, 過去の草管理及び周囲の環境との間には関連性がみとめられた。すなわち, ススキ及びチガヤには市街地化の程度が進んだ地域において減少する傾向が, セイタカアワダチソウ及びクズには逆の傾向がみとめられた。クズは特に広い盛土法面に多かった。エノコログサ属の発生は, 明らかに刈取り下で非常に少く, 除草剤処理部分で多くなる傾向を示した。これに対してセイタカアワダチソウ及びチガヤは除草剤処理部分でやや少なかった。
著者
坂本 修一 鈴木 陽一 天野 成昭 小澤 賢司 近藤 公久 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.842-849, 1998-12-01
被引用文献数
62

単語了解度試験用の単語リストの構築にあたって, 日常会話の聴き取りも含めた音声聴取能力をより正確に評価することを目指すには, 単語の難易度を統制することが望ましい。また, 補聴器適合の評価などの臨床応用を考えたときには, 限定された単語数で, 音韻バランスがよく取れた単語リストを作成することが実用上重要である。本論文では, 難易度の指標として親密度を用いてこれを統制し, また語頭の音韻バランスだけではなく, 語中の音韻バランスも考慮した単語了解度試験用単語リストの作成手法を提案する。また, 実際にこの方法を用いて, 親密度を4段階にパラメータ化して統制した単語リストの構築を行った。この単語リストは, 1枚50単語からなり, 各親密度段階について各20枚, 計80枚のリストから構成されている。更に, リストの妥当性を確認するための聴取実験を行った結果, 単語了解度が親密度を変えることによって系統的に変化することが示された。
著者
小松 賢志 坂本 修一 小林 純也 松浦 伸也
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本報告では、放射線感受性、染色体不安定性(ゲノム不安定性)ならびに高発がん性のヒト劣性遺伝病の責任蛋白が相同組換えの蛋白であることを示した。この事は、生命維持に根元的で有ると思われていた相同組換えが欠損してもヒトは生存可能であることを初めて報告しただけでなく、相同組換え異常がゲノム不安定性と高発がん性をもたらす可能性をヒト遺伝病で示した。また、NBS1の細胞内機能としては、相同組換えに必要と思われているMRE11ヌクレースと複合体を形成後に、ヒストンH2AXとの相互作用によりにMRE11をDNA二重鎖切断部位にリクルートする機構を明らかにした。その一方で、NBS1は日本人に多い早老症ワーナー症候群の蛋白WRNと相互作用することや、DNA鎖架橋剤に高感受性を示すヒト劣性遺伝病ファンコニー貧血の蛋白FANCと複合体を形成することを報告した。これら相互作用のDNA二重鎖切断修復における意味は不明であるが、細胞内では種々の蛋白による細胞内修復ネットワークによりゲノム安定化が保たれている。また、ナイミーヘン症候群ならび毛細血管拡張性運動失調症とMre11欠損遺伝病の毛細血管拡張性運動失調症類似疾患は似たような細胞学的特性を呈する。実際に、NBS1,MRE11,ATMはともに放射線照射後のチェックポイントに機能することが判明した。しかしながら、NBS1,MRE11は修復に必須であるが、ATMはそうでないことから、NBS1,MRE11,ATMの中で特にNBS1がチェックポイントと修復のシグナルの十字路になっていることが示された。
著者
高橋 純一 安永 大地 杉村 伸一郎 行場 次朗 坂本 修一 堀川 友慈 齋藤 五大 大村 一史
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究が対象とする「アファンタジア(aphantasia)」は,実際の知覚は機能しているにもかかわらず心的イメージが機能しない特質のことであり,新たな事例として提唱された。心的イメージとは刺激対象が実際に目の前に存在していなくとも,それを疑似体験できる機能である。私たちは想像(創造)や思考など日常生活で意識せずにイメージを多用しているが,アファンタジア当事者はイメージを思い浮かべることが少ないことから,結果的にイメージ以外の情報処理機構を用いていると推測できる。本研究は,アファンタジアという新たな事例の認知・神経科学的理解を通して,社会におけるアファンタジア理解を促進しようとするものである。
著者
寺本 渉 吉田 和博 日高 聡太 浅井 暢子 行場 次朗 坂本 修一 岩谷 幸雄 鈴木 陽一
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第8回大会
巻号頁・発行日
pp.37, 2010 (Released:2010-09-01)

背景的・空間的な「場」の本物らしさに関係する臨場感はよく取り上げられるが、場面の印象にとって重要な前景的要素(対象や事象など)の本物らしさを表す感性については検討されていない。本研究では,この前景的要素の本物らしさに対応する感性を「迫真性」と定義し,臨場感との比較を通じて,その時空間特性を検討した。まず,「鹿威し」がある庭園風景を素材とし、その提示視野角と背景音の音圧レベルを操作した。その結果、臨場感は視野角も音圧も大きいほど高まるが,迫真性は視野角が中程度,背景音が実物と同じ場合に最も高くなることがわかった。次に,鹿威しの打叩映像と打叩音の時間ずれを操作した結果,臨場感は音が映像に先行しても高く維持されるのに対し,迫真性は音が映像に対して遅れても維持された。以上の結果は,臨場感と迫真性は異なる時空間情報によって創出される独立した感性であることを示唆する。
著者
小林 まおり 藤井 真治 岩谷 幸雄 坂本 修一 鈴木 陽一
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.93-97, 2011-03-31 (Released:2017-02-01)
参考文献数
25

The perception of the spatial location of an auditory stimulus can be captured by a spatially disparate visual stimulus, a phenomenon known as the ventriloquism effect. Many studies have shown temporal and spatial dependency of this phenomenon but its temporal dynamics are not fully understood. In this study, we presented participants with a three-minute of audio-visual stimuli, consisting of a pair of light and sound noise with a spatial disparity of either 0, 5 or 10 degrees. Ten participants were instructed to observe the audio-visual stimuli, and to report their position consistency of stimuli by pushing one of two bottoms, which indicated "same" or "different" respectively. The time series reported were analyzed as perceptual transitions. The results showed that (1) the mean total duration of the "same location" response increased as the disparities between noise and light decreased, (2) the percept switched during the stimulus presentation in all disparity condition after initial build-up of perception of "same location", and (3) the mean transition times varied depending on the disparity condition. These results show that the ventriloquism effect varies with observation time, suggesting that audiovisual spatial integration have time-varying nature.
著者
坂本 修一 天野 成昭 鈴木 陽一 近藤 公久 小澤 賢司 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.351-357, 2004-07-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
17
被引用文献数
2

親密度と音韻バランスを統制した単語リストを用いた単語了解度試験を実施し,モーラ位置ごとの正答率に及ぼす親密度の影響を調査した。その結果,試験語が実単語であることを被験者に教示しない場合でも,単語了解度に親密度の影響が見られ,更に,第1モーラの正答率は,低親密度単語では単音節明瞭度と同程度であるのに対し,高親密度単語では単音節明瞭度より高くなることが示された。本結果は,非単語の回答を許すような聴取実験を行う際にも,親密度が結果に影響を及ぼすため,試験単語の親密度の統制が必要であることを示唆する。
著者
寺本 渉 吉田 和博 浅井 暢子 日高 聡太 行場 次朗 坂本 修一 岩谷 幸雄 鈴木 陽一
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.37-44, 2012
参考文献数
22

情報通信技術の発展に伴い,より自然でリアルなコミュニケーションシステムへの期待が高まっている。それを実現するためには,情報の受け手である人を意識し,臨場感や迫真性など高度感性情報の創出・評価技術を確立していく必要がある。本稿では,まず,バーチャル・リアリティ(VR)や立体映像・立体音響分野で,従来用いられてきた感性情報である臨場感を取り上げ,質問紙調査から得られたデータに基づき,臨場感とは何かについて議論を行う。次に,背景的な「場」の本物らしさに関係すると考えられる臨場感に対して,前景情報を中心とした本物らしさに関連すると考えられる感性印象「迫真性」を取り上げ,両者の相違について実験データを示す。最後に,VRを通じたコミュニケーション場面で問題となる他者の存在感(臨(隣)人感)について,最近行った評価の試みを紹介する。
著者
寺本 渉 吉田 和博 日高 聡太 浅井 暢子 行場 次朗 坂本 修一 岩谷 幸雄 鈴木 陽一
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.37, 2010

背景的・空間的な「場」の本物らしさに関係する臨場感はよく取り上げられるが、場面の印象にとって重要な前景的要素(対象や事象など)の本物らしさを表す感性については検討されていない。本研究では,この前景的要素の本物らしさに対応する感性を「迫真性」と定義し,臨場感との比較を通じて,その時空間特性を検討した。まず,「鹿威し」がある庭園風景を素材とし、その提示視野角と背景音の音圧レベルを操作した。その結果、臨場感は視野角も音圧も大きいほど高まるが,迫真性は視野角が中程度,背景音が実物と同じ場合に最も高くなることがわかった。次に,鹿威しの打叩映像と打叩音の時間ずれを操作した結果,臨場感は音が映像に先行しても高く維持されるのに対し,迫真性は音が映像に対して遅れても維持された。以上の結果は,臨場感と迫真性は異なる時空間情報によって創出される独立した感性であることを示唆する。
著者
崔 正烈 増見 洋治 岩谷 幸雄 勝本 道哲 坂本 修一 鈴木 陽一
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.459-469, 2014

We developed a signal sound which robustly inform citizens of disaster information even if speech signal is hardly intelligible because of long-path echoes and intense background noise. To do this research, we examined various factors required to develop such a signal sound under actual out-door conditions as well as laboratory (in-door) conditions with long-path echoes by use of multidimensional psychophysical evaluation for several candidate signal sounds as well as some other alarm signal sounds. Based on the experiments, we have finally chosen a single good candidate sign sound.
著者
坂本 修一 小玉 純一 本郷 哲 岡本 拓磨 岩谷 幸雄 鈴木 陽一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.171, pp.19-23, 2010-08-02

我々は,多数のマイクロホンを設置した球状マイクロホンアレイSENZI(Symmetrical object with ENchased Zillion microphones)を収音に用いた音空間収音・再生手法を提案している.これまでの研究結果から,SENZIを設計する際に,1)空間的折返し歪みの影響を避けるためできるだけ密にマイクロホンを設置すること,2)制御方向の間隔を5°以下にすること,3)SENZIの直径を聴取者の頭部サイズに合わせること,といった設計指針が得られてきた.本報告では,この指針にしたがって設計,実装した252chのECMマイクロホンから構成されるSENZIシステムについて記す.計算機シミュレーションにより再現される音空間の精度を検証した結果,設計した252chの球状マイクロホンアレイにより,音空間を精度高く収音できることが示された.
著者
本多 明生 神田 敬幸 柴田 寛 浅井 暢子 寺本 渉 坂本 修一 岩谷 幸雄 行場 次朗 鈴木 陽一
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.93-101, 2013

Senses of presence and verisimilitude are affected differently by temporal asynchrony between audio-visual components of audio-visual content. To investigate whether this result is valid more generally, we conducted an experiment using a clip of western orchestral music. Results revealed that the sense of verisimilitude is more sensitive to audiovisual synchronicity than to the display size, whereas the sense of presence is more sensitive to the spatial size than the temporal property. These findings corresponded well with those of the previous study, which indicated that the sense of verisimilitude is distinguishable from the sense of presence. Furthermore, we discussed important considerations related to measurement for Kansei information such as the sense of presence and verisimilitude.
著者
寺本 渉 吉田 和博 日高 聡太 浅井 暢子 行場 次朗 坂本 修一 岩谷 幸雄 鈴木 陽一
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.483-486, 2010
被引用文献数
8

For virtual reality systems, the enhancement of a sense of presence (a subjective experience of being in one place even when one is physically situated in another) has been the most important issue. Both theoretically and empirically, the sense of presence has been found to relate dominantly to background components contained in a scene. In contrast, the reality or virtuality which can be assumed to link essentially to foreground components in a scene has not been investigated in detail. The present study defined the latter type of sense as vraisemblance (verisimilitude), and made an exploratory investigation into spatio-temporal characteristics responsible for the higher vraisemblance by using a scene containing Shishi-odoshi (a traditional Japanese fountain made of bamboos) in a Japanese garden as audio-visual stimuli. In Experiment 1, the effects of the field size of view and the sound pressure level of the background were investigated. Higher vraisemblance was observed with the middle field size of view with the original sound pressure level of the background, whereas higher sense of presence was observed with the larger field size of view with the larger background sound. In Experiment 2, the effect of temporal asynchrony between the foreground audio-visual stimuli produced by Shishi-odoshi was investigated. The results show that the range of temporal-window for the audio-visual stimuli necessary for high vraisemblance was different from those for high presence. These findings suggest that the sense of vraisemblance can be distinguishable from the sense of presence, and deeply involved to the foreground-based aesthetic impression in a scene.