著者
河崎 雅人 松井 愛生 小池 守
出版者
一般社団法人 数学教育学会
雑誌
数学教育学会誌 (ISSN:13497332)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3-4, pp.65-73, 2017 (Released:2020-04-21)

小学校学習指導要領解説算数編には人口密度や速さの単位は組立単位と例示されてはいる が,面積や体積以外の組立単位について,授業で指導されることはない.そこで,単位に着 目した「単位量当たりの大きさ」や「速さ」の指導方法について示唆を得るために,児童を 実際に指導する小学校教員の組立単位に関する理解状況を調査することにした.現職の小学 校教員に対して,(一つ分の数)×(いくつ分)=(ぜんぶの数)に関する問題の解答例を3 種類用意し,それぞれの解答例に記された数値に単位を記述させた.同時に,調査参加者の プロファイルを調査した.その結果,「km/時」等の速さに関する組立単位は,経験年数,算 数や理科の得意・不得意,算数の指導のしやすさには関係なく理解されていたが,速さ以外 の2種の量に対して乗法や除法の演算を行った結果が表わす量の単位についての理解は不足 していることがわかった.
著者
河崎 雅人 藤井 涼太 小池 守 梅澤 実
出版者
一般社団法人 数学教育学会
雑誌
数学教育学会誌 (ISSN:13497332)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1-2, pp.11-18, 2018 (Released:2019-10-16)

本研究は,かけ算九九の習熟を図るための3つの教材を用いた学習後の習熟状況により, 児童の習熟度に応じた適切な教材を明らかにしようとしたものである.本調査では,ゲーム 教材,ドリル教材,パズル教材を対象とした.乗法の学習終了後に,6回の朝学習の時間を 利用して,学級ごとに,それぞれ一つの教材を用いて学習した.朝学習前,6回の朝学習の 終了直後に調査を実施し,3学級の習熟状況を比較した.その結果,次の示唆を得た. ・ゲーム教材は,学習直後には正しく答えられない九九がわずかな児童には適しているが, 正しく答えられない九九が多い児童には適していない ・ドリル教材は,習熟度の高い子どもには効果が少なく,習熟度の低い児童は逆に習熟度を 低下させる可能性をもつ ・パズル教材は,習熟が不十分な児童には習熟度の向上に有効であるが,記憶を確実にする ことには適していない 以上のように,3つの教材の持つ特性が明らかになり,習熟状況や目的に応じた教材を選 択する上での示唆を得ることができた.
著者
小池 守 別府 桂 高津戸 秀
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.21-28, 2009-07-10

水の蒸発の理解を目指した指導法を考案し,公立中学校1年生を対象に授業実践を行った。事前に蒸発について学習した実験群と事前学習を行わない統制群に,素焼きの茶碗とガラスのビーカーに入れた水の温度を測定する実験,及びその結果についての話し合いから成る検証学習を行った。両群の生徒に対し,質問紙を用いて授業前後の蒸発現象に対する興味関心及び自己申告による理解度の変容を,さらに,ワークシートを用いて蒸発に関する理解状況を調査し,事前学習を用いた指導法の有効性を検討した。その結果,実験群は統制群と比べ,蒸発現象について図や文字を使って説明できる生徒の割合が高いばかりでなく,蒸発に対する興味関心及び理解も高かった。以上のことから,事前学習を取り入れた指導法は生徒の蒸発の理解に有効であることが示唆された。