著者
相場 健一 小泉 美佐子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.75-84, 2011-11-30 (Released:2017-08-01)
参考文献数
15
被引用文献数
5

本研究の目的は,重度認知症高齢者に経皮内視鏡的胃瘻造設術(胃瘻)による経管栄養法を選択した家族の代理意思決定に伴う心理的プロセスを明らかにし,その課題と看護支援への示唆を得ることである.研究方法は,胃瘻を選択した認知症高齢者の家族13人に対して半構成的面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.そのプロセスは《摂食困難への悩み》《命をつなぐための選択と葛藤による絞り込み》《最後までみる覚悟をしての決断》《胃瘻のある生活への不安と期待》《介護生活に対する自信と不安》《満足するものの自問自答を繰り返す》の6つのカテゴリーで構成された.家族は医師への信頼と患者の命をつなぎたい思いから胃瘻を決断していた.しかし,そこには迷い,葛藤,不安,答えの出ない代理意思決定への悩みが存在した.看護師は家族に対して高齢者にとっての胃瘻の意味を考えるように促し,家族が自らの決定に意味を見いだせるようにかかわる必要性が示唆された.
著者
内田 陽子 新井 明子 小泉 美佐子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.81-87, 2006-03

本研究の目的は,老年実習における学生のヒアリハットの場面と内容を明らかにし,教育方法を検討することである。対象は協力の得られた本学6期生75人であり,実習中にヒアリハット体験を調査票に記載してもらった。結果,以下のことが明らかになった。1.関連するリスクは転倒・転落が一番多く,ついで誤嚥,外傷,利用者取り違え等であった。2.ヒアリハット体験場面は,入浴,食事,排准などの日常生活援助場面が多く占めた。3.ヒアリハットの件数に比べ教員や職員に対する報告件数は少なかった。対策として学生の確認や技術練習を重ねるとともに,事前に予測されるリスク表を手渡し,実習中に確認させる。実習中にいつでも教員や職員に相談,確認できる体制を整えることが必要と考えた。
著者
新井 明子 小泉 美佐子 齋藤 喜恵子 滝原 典子 高橋 陽子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.53-58, 2007 (Released:2007-06-13)
参考文献数
8

脳梗塞発症後, 切迫性尿失禁および機能性尿失禁を生じた患者のアセスメントとケアについて報告する. 尿失禁ケアプログラムのアセスメントとして, 3日間の排尿モニタリングを行った結果, 1日排尿回数12~20回, 平均1回排尿量76.3~87.5ml, 1日失禁回数12~18回であり, 脳梗塞後遺症による頻尿に伴う切迫性尿失禁, 機能性尿失禁と把握した. ケア介入として, 抗コリン剤による薬物療法, 看護師による行動療法, リハビリテーションスタッフによるトイレ動作訓練を行った. 日常生活動作 (ADL : activities of daily living) の全般的な回復に加え, 医師, 看護師, 理学療法士, 作業療法士によるリハビリテーションのチームアプローチにより, 排泄動作の改善がみられ, 尿失禁が消失した.
著者
川久保 悦子 内田 陽子 小泉 美佐子
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.499-508, 2011
被引用文献数
1

<B>【目 的】</B> 認知症高齢者に対して「絵画療法プラン」を作成, 実践し, (1) 絵画療法が認知症高齢者にもたらす効果, (2) 認知症高齢者の作品の特徴, (3) 肯定的反応および否定的反応を示した絵画療法の画題, (4) 絵画療法を効果的に進めるための介入方法を明らかにした. <B>【対象・方法】</B> 対象者は, 認知症をもつ年齢65歳以上の高齢者で, 認知症グループホームHを利用し, 調査協力を得た5名である. 3か月間に, 週1回, 60分程度の「絵画療法プラン」を計12回介入した. 評価は内田<sup>1</sup>の認知症ケアのアウトカム評価票, BEHAVE-ADを使用し, 各回の絵画作品の評価も行った. また対象者の反応をカテゴリー分類した. <B>【結 果】</B> 対象者5名すべて女性であり, 年齢は86±5.9歳 (平均±SD), 全員がアルツハイマー病であった. (1) 絵画療法が認知症高齢者にもたらす効果は「周辺症状」,「介護ストレス・疲労の様子」,「趣味・生きがいの実現」,「役割発揮の有無」の改善と,「制作への自主性」や「他人の作品を褒める」などの肯定的な行動や言動をもたらした. (2) 作品は色あざやかで抽象度が高く大胆な構図で, 単純化などの特徴がみられた. (3) 認知症高齢者に肯定的な反応であった画題は「色彩が原色で彩度が高く, 工程が単純, 写実ではなく自由表現をいかした画題」「昔使っていた材料を使った画題」「生活の中で役に立ち, 手芸を取り入れた画題」「色や素材を選択できる画題」であった. (4) 絵画療法には肯定的な言動の反面「できない」という, 相反する感情もあった. <B>【結 語】</B> 絵画療法は, 認知症高齢者の精神活動によい効果をもたらすが, ケア提供者が絵画療法プランを取り入れることで, 認知症高齢者のいきいきとした反応や言動を発見することができる. 介入により新たに発見したことをアセスメントし, 認知症高齢者ができることを促すようなケアを行うことが求められる. 落ち着いた環境を整え, 画題と介入方法を考慮する必要がある.
著者
内田 陽子 新井 明子 小泉 美佐子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.93-103, 2005-03
被引用文献数
3

本研究の目的は群馬大学医学部保健学科での老年看護学実習の評価を行い,学生の高齢者に対する看護実践のやる気を高める条件を明らかにすることである。対象は2004年5月から7月にかけてS介護老人保健施設で実習をした39人の本大学の学生である。調査は学生の実習終了最終日に学生に質問紙を配布し,各自記入をしてもらった。質問紙の主な調査項目は,(1)学生の高齢者看護実践のやる気の程度と,それに影響する条件として(2)学生の背景条件,(3)受け持ち高齢者の背景条件,(4)実習における学習の程度に関する項目を設定した。結果,1,学生にとって受け持ち高齢者へのアセスメントや看護実践に対しては教員が,他の高齢者に対する看護実践では看護師が有効であると認識していた。 2,学生の看護過程や技術に対しての自己評価は高かった。3,痴呆棟に実習に行った学生のほうが,高齢者から拒否された経験が生かされ関わる自信がついていた。4,学生の今後の高齢者に対する看護実践のやる気と有意な正の相関がみられた項目は,「アセスメントができた」,「実習が楽しかった」,「介護老人保健施設に就職したい」,「元来実習が好きである」,「受け持ち高齢者に拒否された経験があった」,「受け持ち高齢者に対する看護技術の実践」であった。「受け持ち高齢者の排泄が自立している」については負の相関がみられた。5,学生のやる気はグループ毎に相違があり,最も有効なやる気を高める条件は「実習が楽しかった」であった。痴呆高齢者に拒否されても,日々のケアのなかで患者と分かり合えることを促す指導を実践していくことが求められる。教員は授業としての実習を展開するなかで,学生の気持ちや表情を観察し,学生が問題解決のどの過程にあるか,満足いく実習ができているか常に確認していく必要がある。
著者
岩永 喜久子 小板橋 喜久代 神田 清子 二渡 玉枝 常盤 洋子 岡 美智代 牛久保 美津子 小泉 美佐子 前田 三枝子
出版者
群馬大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

A大学附属病院に9領域の教育-臨床連携による看護専門外来を開設し、看護のイノベーションとして看護役割拡大モデルを提示した。9領域の看護専門外来は、リラクセーションマッサージ、リラクセーション外来、リンパ浮腫外来、がん看護相談外来、乳腺看護外来、糖尿病療養相談・フットケア外来、母性看護外来、神経内科看護相談外来、母乳外来である。従来の診療体制の医学モデルに看護独自の専門性を加えて、キュアとケアを融合させた。
著者
相場 健一 小泉 美佐子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.75-84, 2011-11-30

本研究の目的は,重度認知症高齢者に経皮内視鏡的胃瘻造設術(胃瘻)による経管栄養法を選択した家族の代理意思決定に伴う心理的プロセスを明らかにし,その課題と看護支援への示唆を得ることである.研究方法は,胃瘻を選択した認知症高齢者の家族13人に対して半構成的面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.そのプロセスは《摂食困難への悩み》《命をつなぐための選択と葛藤による絞り込み》《最後までみる覚悟をしての決断》《胃瘻のある生活への不安と期待》《介護生活に対する自信と不安》《満足するものの自問自答を繰り返す》の6つのカテゴリーで構成された.家族は医師への信頼と患者の命をつなぎたい思いから胃瘻を決断していた.しかし,そこには迷い,葛藤,不安,答えの出ない代理意思決定への悩みが存在した.看護師は家族に対して高齢者にとっての胃瘻の意味を考えるように促し,家族が自らの決定に意味を見いだせるようにかかわる必要性が示唆された.