著者
岡久 雄二 岡久 佳奈 小田谷 嘉弥
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.307-315, 2019-10-25 (Released:2019-11-13)
参考文献数
39

ヤマシギScolopax rusticolaは日本国内では本州から南西諸島にかけての地域で越冬する夜行性の狩猟鳥である.生息状況に関する情報が乏しいことが個体群保護管理上の課題となっており,モニタリング手法開発が求められている.これまでに,環境省によりライトセンサスを用いた越冬期の生息状況確認手法がマニュアル化されているものの,ライトセンサスによって得られる在データのみを用いた分布や個体数推定手法は検討されていない.そこで,我々は冬期の佐渡島において夜間にライトセンサス法を行ない,ヤマシギの越冬分布を調査し,観察位置の在データをもとにMaximum Entropy Modelを用いてヤマシギの環境選択性と分布を推定した.モデルより,佐渡島の36.8(25.12–43.14)km2に79(54–92)個体が生息していると推定された.ヤマシギは水田面積が広く,気温の高い平野部に生息しており,既存の報告と異なり,耕作している水田が主な採餌環境となっていた.佐渡島ではトキNipponia nipponをシンボルとした環境保全型農業によって餌生物量が増加している事が知られるため,ヤマシギの採餌環境としても水田が高質化していることが示唆される.本研究で示したライトセンサスとMaximum Entropy Modelの組み合わせによって,全国のヤマシギの分布状況をモニタリングし,休猟区や鳥獣保護区の計画によってヤマシギの保護管理を行なうことが必要であろう.
著者
小田谷 嘉弥 山口 恭弘 熊田 那央
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.317-325, 2019-10-25 (Released:2019-11-13)
参考文献数
12

ハス田における水鳥類によるレンコンの採食被害の防止のために,防鳥ネットが日本各地で用いられている.本研究では防鳥ネットの侵入抑制効果を検証するため夜間のハス田への飛来数および在不在を指標として,防鳥ネットの効果を他の環境要因と合わせて一般化線形混合モデル(GLMMs)で検証した.2011年の2月–3月(春期)と10月–12月(秋期)にそれぞれ6回の野外調査を茨城県土浦市およびかすみがうら市の80か所のハス田において行い,飛来している水鳥類の個体数を調査した.個体数の平均値は,春期,秋期ともに防鳥ネットを張ったハス田で少ない傾向が見られたものの,水鳥類の飛来数を目的変数としたモデル解析を行ったところ,いずれの季節/種においても防鳥ネットの有無や設置方法の違いは水鳥類の飛来数に影響を及ぼさなかった.一方,ハス田に残されたくずレンコンの量は,カモ類とオオバンFulica atraの合計,カモ類の合計,ヒドリガモAnas penelopeと秋期のマガモA. platyrhynchosの個体数に正の影響を与えており,湖からの距離は春期および秋期のオオバンの個体数に負の影響を,春期のヒドリガモに正の影響を与えていた.すなわち,防鳥ネットによって水鳥類の侵入を有効に抑制できているとは言えず,ハス田における被害対策のためには,防鳥ネットの隙間を作らないような適切な設置に加え,くずレンコンの除去などハス田の環境を考慮した対策が必要であることが示唆された.
著者
福田 篤徳 小田谷 嘉弥 白川 浩一 白川 浩子 小澤 重雄 今井 光雄 深川 正夫 梅垣 佑介 山口 恭弘
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.A1-A14, 2019 (Released:2019-06-27)
参考文献数
27

シマクイナの生態は不明な点が多く,茨城県を含め全国的な生息状況はよく分かっていない.そこで,2016年1月から2018年5月にかけて,茨城県内のスゲ類などの低茎草本が優占しヨシ類などの高茎草本が混在する植生環境を含む12地域(14地点)でプレイバック法を用いて調査を行なった.種の同定は,声紋の解析や鳴き声が発せられた場所から飛び出した鳥の特徴から行なった.調査の結果,県内の7地域(9地点)において生息を確認し,その中の4地域(5地点)で複数個体の存在を確認した.そのうち1か所では,冬期3シーズンにかけて8-15羽/haという高い個体密度で安定して生息していることを確認した.また,通年調査を行なった結果,県内に11月上旬から4月中旬もしくは下旬まで生息していることが示唆された.本研究により,県内である程度の個体数が継続的に越冬していることが明らかになった.