著者
岩見 恭子 小林 さやか 柴田 康行 山崎 剛史 尾崎 清明
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.63-69, 2015 (Released:2015-04-28)
参考文献数
19

福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性物質による鳥類の巣の汚染状況を把握するため,2011年に繁殖したツバメの巣を日本全国から採集し,巣材に含まれる放射性セシウム(Cs-134およびCs137)を測定した.全国21都道府県から集められた197巣のうち182巣について測定した結果,1都12県の巣から福島第一原子力発電所由来の放射性セシウムが検出された.福島県内のすべての巣から放射性セシウムが検出され,Cs-134とCs-137の合計の濃度が最も高いものでは90,000 Bq/kgで低いものでは33 Bq/kgであった.巣の放射性セシウム濃度は土壌中の放射性セシウム濃度が高い地域ほど高かったが,地域内で巣のセシウム濃度にはばらつきがみられた.
著者
水田 拓 尾崎 清明 澤 祐介 千田 万里子 富田 直樹 仲村 昇 森本 元 油田 照秋
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.71-102, 2022-07-02 (Released:2022-07-12)
参考文献数
154

Bird banding is a survey method of attaching uniquely marked rings on a bird’s leg. Recaptured or resighted data of marked individuals enable researchers to study the ecology of birds, such as the migration and life history. The first bird banding survey took place in Denmark in 1899, and now many researchers and organizations around the world carry out such surveys. In Japan, Ministry of Agriculture and Commerce (the Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries and the Ministry of Economy, Trade and Industry at present) started the bird banding scheme in 1924. The scheme was interrupted during and after World War II, but was resumed in 1961. During 59 years from 1961 to 2019, a total of 6,108,529 individuals (499 species) were marked and released, of which 40,607 individuals (262 species) were recovered. The numbers of marked and recovered individuals in the latest year (2019) were 126,907 individuals (282 species) and 1,254 individuals (88 species), respectively. Based on this comprehensive database, numerous findings and knowledge were obtained, including migration routes and life spans of many species, population trends of endangered species, avifaunal data of a certain region, birds’ response to climate change, contribution to the measure for avian influenza, and so on. The bird banding survey has contributed to the conservation of biodiversity, one of the most critical global issues today. We believe it is important to conduct and continue the survey with a sense of purpose and mission for greater good in mind.
著者
富田 直樹 仲村 昇 岩見 恭子 尾崎 清明
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.143-152, 2013 (Released:2013-11-21)
参考文献数
32

2011年10月から2012年3月までに日本全国14県17ヶ所において,渡り・越冬中のオオジュリンで,尾羽の形成不全(以下,尾羽異常とする)の個体が頻繁に観察された(5,541個体中767個体,13.8%).尾羽異常個体は,ほとんど幼鳥であった(97.3%).尾羽異常の形態は,以下の3型のいずれかに明確に分類された;虫食い状欠損型(45.9%,約1 mmの穴が数ヶ所開いている状態や,羽枝が途中で溶けたようになり,その先が欠損している状態),成長異常型(14.5%,伸長か不全の2種類で,正常羽と比較して,伸長で5.0±3.0 mm(平均±標準偏差)長く,不全で5.8±3.1 mm短かった),及びこれらが同時に観察される複合型(39.6%).虫食い状欠損型は尾羽中央3対に,成長異常型は中央2対に高頻度で観察された.その他ホオジロ科鳥類3種,ホオジロE. cioides(91個体中4個体,4.4%),カシラダカE. rustica(229個体中3個体,1.3%),及びアオジE. spodocephala(1,066個体中16個体,1.5%)でも同様の異常が少数例観察された.
著者
出口 智広 吉安 京子 尾崎 清明 佐藤 文男 茂田 良光 米田 重玄 仲村 昇 富田 直樹 千田 万里子 広居 忠量
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.39-51, 2015 (Released:2015-04-28)
参考文献数
81
被引用文献数
1 3

生態系サービスの持続的利用を考える上で,生物がどのようなサービスを人間に提供するかだけでなく,このサービスを提供する生物が環境変化によってどのような影響を受けているかの双方の理解が不可欠である.本研究では,東南アジアから繁殖のために日本に渡ってくる夏鳥の中から,気象庁生物季節観測(1953~2008年)および標識調査(1961~1971年,1982~2011年)で情報が多く得られているツバメ,カッコウ,オオヨシキリ,コムクドリを選び,成鳥および巣内雛の出現時期の長期変化,両時期と前冬および当春の気温との関係,および植物,昆虫の春期初認日との関係について調べた.その結果,ツバメ,オオヨシキリ,コムクドリの成鳥および巣内雛は,出現時期が早期化する傾向が見られたが,カッコウだけは出現時期が近年晩期化する傾向が見られた.ツバメ,オオヨシキリの成鳥および巣内雛の出現時期は,気温が高い年ほど早期化する傾向が見られたが,カッコウの出現時期は気温が高い年ほど晩期化する傾向が見られた.これらの長期変化の速度は,一部を除いて,欧米の先行研究の結果からの大きな逸脱は見られなかった.また,これら鳥類と植物および昆虫の出現時期とのずれは一定で推移しているとは言えなかったが,早期化あるいは晩期化する鳥類を隔てる要因や,フェノロジカルミスマッチをもたらす要因について明らかにすることはできなかった.今後フェノロジカルミスマッチに注目した研究を進める際には地域差を考慮した解析が必要である.
著者
尾崎 清明
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1-2, pp.190-196, 1978-03-31 (Released:2008-11-10)

Reported here are the systems and activities of "die Vogelwarten" in West Germany, visited by the author in May-June 1977. These ornithological institutes are in Helgoland, Wilhelmshaven, and Radolfzell.Bird-ringing began in Germany from 1903, using the rings of Vogelwarte Rossitten. Now, two kinds of rings are used in West Germany. One is for the northen regions and the other is for the southern. Annually, more than 370.000 (individuals of) birds are ringed by about 770 amateur ringers.At the Vogelwarte Helgoland, using the well-known Helgoland-traps and several other traps (for Doves, Crows and Sparrows), elaborate research is being carried out throughout the year.The Institute for Ornithology of Wilhelmshaven acts as one of the two bird-ringing centers in West Germany. At this institute are studied behavior of gulls and discriminating ability of Oystercatcher in laboratory.Also I visited to Vogelwarte Radolfzell, the other birdringing center. Near the Vogelwarte, thare is the Mettnau bird ringing station, which belongs to a long-term bird ringing and research program (Mettnau-Reit-Illmitz program). The aim of this program is to study not only migration but also many other items; population dynamics, biorhythmic, research for ecosystems and methodology.I would like to thank heartily Dr. G. Vauk, Dr. D. Moritz and Mr. E. Sohonart of Helgoland, Dr. W. Winkel and Mr. H. Rogall of Wilhelmshaven, Dr. G. Zink, Dr. P. Becker, Dr. J. Hölzinger and Mr. F. Bairlein of Radolfzell, and also all the others at the three Vogelwarten, for their very kind hospitality given to us during our stay.
著者
関島 恒夫 森口 紗千子 向井 喜果 佐藤 一海 鎌田 泰斗 佐藤 雄大 望月 翔太 尾崎 清明 仲村 昇
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.1922, (Released:2021-08-31)
参考文献数
55

オオヒシクイが集団飛来地あるいは渡りのルートとして主に利用する北海道道北地方から本州にかけての日本海沿岸域は、良好な風況が見込まれることから、現在、多数の風力発電施設の建設が進められている。大型風車の設置は、鳥が風車に衝突するだけでなく、風車群を回避することによる迂回コストの増大などにより、中継地や越冬地利用の放棄など生息地の劣化あるいは消失に繋がる可能性があり、地域個体群に対する負の影響が懸念されている。オオヒシクイなど大型水禽類の生息地を保全しつつ、再生可能エネルギーの拡大を目指して風力事業を推進するには、鳥類への影響が大きい区域を提示したセンシティビティマップに基づき、風力発電事業の計画段階で事前に衝突リスクの高いエリアを回避する手続きが有効である。本稿では、はじめに大型水禽類を対象にしたセンシティビティマップの現状と課題を説明し、続いて、オオヒシクイを対象として、全国の主要な集団飛来地における風車回転域飛行確率を考慮したセンシティビティマップと、北海道道北地方から本州日本海沿岸域にかけての主要な渡りルートにおいて渡り中の飛行高度規定要因を考慮したセンシティビティマップの 2つのマップ作成手順を紹介する。最後に、これらセンシティビティマップを用いた風力発電施設の立地に係る検討手続きを提案する。
著者
山内 健生 尾崎 清明
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.97-99, 2007
被引用文献数
2

2005年8月21-22日に沖縄島国頭村西銘岳で2雌の <i>Ornithoica exilis</i>(ハエ目:シラミバエ科)を2個体のヤンバルクイナ <i>Gallirallus okinawae</i> 幼鳥の体表から採集した。宿主のヤンバルクイナはいずれも良好な健康状態であった。今回の記録は沖縄島における <i>O. exilis</i> の初記録であり,ヤンバルクイナは <i>O. exilis</i> の新宿主記録となる。
著者
尾崎 清明 馬場 孝雄 米田 重玄 金城 道男 渡久地 豊 原戸 鉄二郎
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.136-144, 2002
被引用文献数
14

沖縄本島北部のやんばる地域において,ヤンバルクイナの分布を,音声プレイバック法を用いて調査し,結果を過去の調査結果と比較した。その結果1996~1999年は,調査した95メッシュのうち49メッシュでヤンバルクイナの生息が確認され,確認できたメッシュの割合は51.6%であった。2000~2001年にヤンバルクイナの生息が確認されたのは,調査した255メッシュのうち116メッシュでその割合は45.5%であった。生息域の南限が,1985~1986年からの15年間に約10km北上し,生息域の面積は約25%減少したものと考えられた。一方沖縄県によってマングースの駆除が実施されたが,捕獲された地域はヤンバルクイナが見られなくなった地域と一致することがわかった。このことから,ヤンバルクイナの生息域の減少には,マングースが関与していることが強く示唆された。
著者
出口 智広 広居 忠量 吉安 京子 尾崎 清明 佐藤 文男 茂田 良光 米田 重玄 仲村 昇 富田 直樹 千田 万里子
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.39-51, 2015
被引用文献数
3

生態系サービスの持続的利用を考える上で,生物がどのようなサービスを人間に提供するかだけでなく,このサービスを提供する生物が環境変化によってどのような影響を受けているかの双方の理解が不可欠である.本研究では,東南アジアから繁殖のために日本に渡ってくる夏鳥の中から,気象庁生物季節観測(1953~2008年)および標識調査(1961~1971年,1982~2011年)で情報が多く得られているツバメ,カッコウ,オオヨシキリ,コムクドリを選び,成鳥および巣内雛の出現時期の長期変化,両時期と前冬および当春の気温との関係,および植物,昆虫の春期初認日との関係について調べた.その結果,ツバメ,オオヨシキリ,コムクドリの成鳥および巣内雛は,出現時期が早期化する傾向が見られたが,カッコウだけは出現時期が近年晩期化する傾向が見られた.ツバメ,オオヨシキリの成鳥および巣内雛の出現時期は,気温が高い年ほど早期化する傾向が見られたが,カッコウの出現時期は気温が高い年ほど晩期化する傾向が見られた.これらの長期変化の速度は,一部を除いて,欧米の先行研究の結果からの大きな逸脱は見られなかった.また,これら鳥類と植物および昆虫の出現時期とのずれは一定で推移しているとは言えなかったが,早期化あるいは晩期化する鳥類を隔てる要因や,フェノロジカルミスマッチをもたらす要因について明らかにすることはできなかった.今後フェノロジカルミスマッチに注目した研究を進める際には地域差を考慮した解析が必要である.
著者
仲村 昇 千田 万里子 尾崎 清明
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.97-108, 2018-02-28 (Released:2019-02-28)
参考文献数
15

In 2017 we continued the Monitoring Avian Productivity and Survivorship (MAPS) program in Fukushima, Japan, using constant-effort mist netting and banding. Preliminary results from six years of data, including adult abundance index, productivity index, and apparent adult survival rate, were analyzed. Adult abundance of the Japanese Bush Warbler Cettia diphone in Fukushima City gradually increased from 2013 to 2017, while that in Minami-Soma City was relatively stable. In Iitate Village, adult abundance of this species fluctuated greatly, with a low in 2016. Adult abundance of the Oriental Reed Warbler Acrocephalus orientalis in Minami-Soma City was higher in 2015–2017 compared to 2012–2014, while that in Fukushima City was low in 2015 and 2016. Adult survival of the Oriental Reed Warbler from 2012–2013 to 2015–2016 in Minami-Soma City was 0.23–0.34 (Ave=0.27), while that in Fukushima City was 0.12–0.22 (Ave=0.16).
著者
中島 功 猪口 貞樹 木ノ上 高章 片山 正昭 尾崎 清明
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

位置情報と個体識別ができるS帯2.4-500kbps伝送速度の鳥装着用パケット送受信機の開発し、総務省の型式認定を申請した。山階鳥類研究所で渡り鳥に装着し、その鳥がわが国に帰還すれば、データが採取でき危機管理に役立てる。H5N1の感染地域、ロシア、モンゴルでの鳥インフルエンザ関連の生態環境、電波伝搬環境を分析し、将来の危機管理としての鳥インフルエンザ予防に役立てる統合研究をおこなった。
著者
深井 宣男 須川 恒 千葉 晃 尾崎 清明
出版者
The Japanese Bird Banding Association
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.8-36, 2010
被引用文献数
2

1998~2000年に実施された日露共同標識調査の結果から,優占種,日周変化,再捕獲記録,主な種の渡り時期について解析した.3年間で合計46種5,278羽が標識放鳥され,21種361羽が再捕獲された.優占種は,カシラダカ,コガラ,メボソムシクイ,オジロビタキ,オオジュリンであった.日本での捕獲数との比較から,オジロビタキとアカマシコはカムチャツカ半島からオホーツク海を越えて大陸沿いに南下するものと推定される.種別の日周変化では,シマゴマなどの朝型,マミチャジナイの朝夕型,オオジュリンなどの午前型,オジロビタキなどの平均型の4つに類別された.移動後回収の記録はオオジュリンで18例あり,日本での回収地および放鳥地は宮城県から宮崎県まで広範囲に及んだことから,日本各地で越冬するオオジュリンにとって,カムチャツカ半島が重要な繁殖地の一つであることが再確認された.渡りの時期には,換羽様式などさまざまな要因が関係していると考えられる.成鳥が繁殖地で完全換羽をおこなうオジロビタキ,カシラダカ,オオジュリンでは幼鳥が先に渡り,越冬地で換羽をおこなうアカマシコ,メボソムシクイでは成鳥が先に渡ることがわかった.体重や皮下脂肪量との関係では,成鳥の渡りのピークは脂肪量の増加とほぼ一致していたが,幼鳥の体重と脂肪量の増加はピークから10日ほど遅れていた.成鳥の渡り期間に比べ幼鳥の渡りの期間が長いのは,体重や脂肪量の増加が渡りのピークとずれていることが関係している可能性が考えられた.
著者
山内 健生 尾崎 清明
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.97-99, 2007-03-20 (Released:2009-03-20)
参考文献数
6
被引用文献数
2

2005年8月21-22日に沖縄島国頭村西銘岳で2雌の Ornithoica exilis(ハエ目:シラミバエ科)を2個体のヤンバルクイナ Gallirallus okinawae 幼鳥の体表から採集した。宿主のヤンバルクイナはいずれも良好な健康状態であった。今回の記録は沖縄島における O. exilis の初記録であり,ヤンバルクイナは O. exilis の新宿主記録となる。