著者
服部 保 田村 和也 小舘 誓治
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.477-480, 2000-03-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
22
被引用文献数
7 1

絶滅危惧種フジバカマ保全のための基礎資料として,全国分布を調べるとともに生育環境を把握する目的で植生調査および土壌調査を行った。フジバカマは河川水辺の国勢調査の結果などによると15河川に分布していた。植物社会学的手法に基づいて実施した植生調査で得られた資料をもとに群落区分を行った結果,フジバカマは河川内のヤナギ林,オギ草原,低水路沿いの雑草群落など増水時に撹乱を受ける群落によく出現していた。また,土壌調査の結果,フジバカマの地下茎が発達する層は砂土から微砂質壌土であった。フジバカマが減少した理由として,河川改修により主要生育地である増水による撹乱を受けやすい立地が改変されたためと考えられた。
著者
服部 保 石田 弘明 小舘 誓治 南山 典子
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.609-614, 2002-03-30
参考文献数
63
被引用文献数
10 10

九州本土以北に分布する照葉樹林構成種について, 都府県単位で分布, 種数生活形, 絶滅の可能性などを各種文献を用いて調査した。都府県単位の種数をみると鹿児島県がもっとも多く, 北上するにつれて種数は少なくなった。種数と最寒月の月平均気温値には正の相関が認められた。照葉樹林構成種の生活形は地上生多年生草本植物 (地生植物) がもっとも多く, 照葉樹は約25%であった。照葉樹林の種多様性 (種の豊かさ, speciesrichness) に果たしているシダ類, ラン科の役割は大きい。照葉樹林構成種の約30%が絶滅に瀕しており, 多年生草本類, 特にラン科の絶滅の可能性が高い。
著者
石田 弘明 服部 保 小舘 誓治 黒田 有寿茂 澤田 佳宏 松村 俊和 藤木 大介
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.137-150, 2008-11-30
被引用文献数
2

シカが高密度に生息する地域の森林伐採跡地では、伐採後に再生した植生がシカの採食によって退行し、その結果伐採跡地が裸地化するという問題が発生している。一方、シカの不嗜好性植物の中には、イワヒメワラビのようにシカの強度採食下にある森林伐採跡地で大規模な群落を形成するものがある。このような不嗜好性植物群落は伐採跡地の土壌流亡や植物種多様性の減少を抑制している可能性がある。不嗜好性植物を伐採跡地の緑化に利用することができれば、シカの高密度生息地域における伐採跡地の土壌保全と種多様性保全を同時に進めることができるかもしれない。本研究では、イワヒメワラビによる緑化の有効性を評価するために、兵庫県淡路島の最南部に位置する諭鶴羽山系においてイワヒメワラビ群落の土壌保全効果と種多様性保全効果を調査した。イワヒメワラビ群落(伐採跡地および牧場跡地)、裸地群落(伐採跡地および牧場跡地)、二次林(ウバメガシ林、ヤブニッケイ林)のそれぞれに5m×5mの調査区を複数設置し(合計93区)、調査区ごとに植生調査と土壌調査を行った。その結果、イワヒメワラビ群落では二次林と同様の土壌が維持されていたが、裸地群落では明らかな土壌流亡が観察された。また、イワヒメワラビ群落では、イワヒメワラビの地下茎の作用によって表層土壌が柔らかくなる傾向がみられた。これらのことは、イワヒメワラビ群落の土壌保全効果が高いことを示している。伐採跡地のイワヒメワラビ群落では調査区あたりの森林生種数の割合が最も大きく、その種数は二次林の種数を上回っていた。また、種組成を群落間で比較したところ、伐採跡地のイワヒメワラビ群落には二次林の構成種の大半が出現していた。これらのことから、イワヒメワラビ群落の種多様性保全効果、特に森林生種の多様性を保全する効果は高いと考えられる。従って、イワヒメワラビを用いた伐採跡地の緑化は有効であるといえる。ただし、場合によっては柵工や枠工などの緑化補助工を併用する必要がある。また、伐採跡地の森林再生を図るためにはシカの個体数管理や防鹿柵の設置が必要である。