著者
佐々木 典子 國澤 進 今中 雄一
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.166-173, 2021-05-31 (Released:2021-06-25)
参考文献数
19

目的:一般に高齢になると医療利用度は高くなるが,高齢者の医療資源利用の実態(疾患領域・治療・投薬内容等)や医療費の集中度は,超高齢社会である日本や海外の先行研究でごく一部しか明らかとなっていない.地域の個票データを用いて,高齢者の年間医療費総額の特徴や分布等の記述を行うとともに,年間医療費高額患者の診療実態を示し,医療費高額患者の医療費全体への寄与割合や今後の課題を検討する.方法:都道府県レベルの 2 地域の国民健康保険レセプトデータ・後期高齢者レセプトデータ(2014年 4 月~2015年 3 月診療分)から得られた,65歳以上の受療者を対象とした.患者属性,疾患数(ICD-10コード章別分類ごと)および地域の医療費累積総額に対する医療費総額上位者の寄与割合等について記述し,年間医療費総額の集中度についてジニ係数を用いて検討した.さらに,医療費総額上位1%患者につき医療資源利用を診療行為に応じて「入院(薬剤・リハビリ除く)」「外来(薬剤・リハビリ除く)」「薬剤(入院・外来)」「リハビリ(入院・外来)」の 4 種類に分類し,利用割合や診療内容の詳細につき検討した.また,医療費総額上位100例につき疾患や診療内容の傾向につき明らかにした.結果:65歳以上の高齢受療者(n= 879,245)の年間医療費総額は6,349億円を示した.患者属性は女性が58.1%を占め,年齢階層別では65-74歳47.5%,75-84歳36.9%,85歳以上15.6%だった.年間総医療費の分布は上位 1 %で12.4%(784億円),上位 5 %で37.9%(2,406億円),上位10%で54.2%(3,439億円)を占めた.解析対象者の78.5%は入院しておらず,患者 1 人あたり年間疾患数は全体平均で7.5,上位 5 パーセンタイルで10.6,上位 1 パーセンタイルで11.1と,上位者ほど併存疾患が多くなっていた.また,対象者全体に対し年間医療費上位 5 %,同 1 %の方が入院医療費の占める割合が高かった.さらに,年間医療費総額の格差は,全被保険者でジニ係数0.663と高値を示し,年齢階層別では階層が高いほどジニ係数は低い傾向を認めた(65-69歳:0.710,70-74歳:0.679,75歳以上:0.639).上位100例の診療内容からは,循環器疾患,血液疾患に伴う診療が高額化に寄与し,複数の手術実施や維持透析も少なからず寄与していることが判明した.結論:高齢者の年間医療費総額の多くの部分が比較的少数の患者に集中していた.医療費の高額化に寄与する診療行為,疾患領域や治療内容が判明したことで,医師レベルで治療に関する意思決定の際に参考にすべき事項や,政策レベルでより効率的な医療資源配分を検討する際の一助となる可能性が示唆された.
著者
松倉 規 小阪 真二 國澤 進 澁谷 祐一 岡林 孝弘
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.933-937, 2006-11-15 (Released:2008-11-04)
参考文献数
12

著明な好中球減少を伴う急性骨髄性白血病の治療前精査で胸部異常影を認め,手術にて肺非定型抗酸菌症と診断された症例を報告する.症例は55歳,男性.急性骨髄性白血病で血液内科入院中に左上肺野の腫瘤影を指摘された.気管支鏡検査では確定診断は得られなかった.画像上は肺癌や肺結核,肺真菌症などの感染症が疑われた.術前血液検査で白血球数1460/μl,好中球数226/μlと好中球減少が著明であった.白血病治療を早期に開始する必要があり手術を行った.術中針吸引にて肺非定型抗酸菌症と診断され左上区切除術を行った.術後G-CSFは使用せず,抗生物質はパニペネムと硫酸アミカシンの2剤を投与した.術後肺炎や創部感染などの合併症なく良好に経過した.
著者
下妻 晃二郎 能登 真一 齋藤 信也 五十嵐 中 白岩 健 福田 敬 坂巻 弘之 石田 博 後藤 玲子 児玉 聡 赤沢 学 池田 俊也 國澤 進 田倉 智之 冨田 奈穂子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

経済状況の低迷が続く多くの先進国においては、公的医療資源の適切な配分は、費用対効果などの合理的な社会的価値判断に基づいて行われている。日本では従来そのような仕組みがなかったが、2016年度から、高額な医療用製品を対象に政策への施行的導入が予定されている。本研究では費用対効果分析による効率性の向上にむけて技術的課題の解決を図り、同時に、効率性の追求だけでは疎かになりがちな公平性の確保を図るために考慮すべき、倫理社会的要素の明確化とそれを政策において考慮する仕組み作りを検討した。