著者
山下 孝之
出版者
一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
家族性腫瘍 (ISSN:13461052)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.25-28, 2004 (Released:2018-11-29)
参考文献数
10

Fanconi 貧血(FA)は染色体不安定性を特徴とする常染色体劣性の稀な遺伝性骨髄不全疾患である.急性骨髄性白血病などの造血腫瘍に加えて種々の上皮性悪性腫瘍を合併する.これまでに,遺伝的に異なる10 種類以上の群に分類され,対応する8 遺伝子が同定されている.これらの産物蛋白は共通の分子経路を形成し,下流で働くFANCD2 はBRCA1 と相互作用して,DNA 損傷反応を制御する.また,FANCD1 遺伝子がBRCA2 そのものであることが判明し,FA/BRCA pathway という概念に注目が集まっている.FANCD2 はATM やNBS1 と相互作用し,細胞周期制御にも関与する.Fancd2 ノックアウトマウスでは種々の上皮性悪性腫瘍の発生率が高まる.また,FA 遺伝子の後天的な不活性化が,腫瘍の発症・進行や抗癌剤への感受性に関与する可能性が明らかになりつつある.
著者
小田 司 山下 孝之
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

1)分子シャペロンHSP90が、突然変異に関わるY一ファミリーDNAポリメラーゼREV1の細胞内安定性やDNA損傷部位への集積を制御していることを明らかにした。2)熱ショック応答転写因子HsF1をRNAiで抑制すると、DNA損傷応答の活性化が誘起されずに細胞老化が誘導されることを見いだした。この過程において、p53の安定化とp21の発現誘導が必要であることを明らかにした。