著者
森野 佐芳梨 堀田 孝之 大橋 渉 有馬 恵 山下 守 山田 実 青山 朋樹 石原 美香 西口 周 福谷 直人 加山 博規 谷川 貴則 行武 大毅 足達 大樹 田代 雄斗
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】妊娠により,女性の身体には様々な解剖学的および生理学的変化が生じ,腰痛に代表される多様な不快症状が発生する。これらの症状は医学的に母児への影響が少ないとされ,マイナートラブルと定義されている。しかし,この症状により妊婦のQOLが損なわれ,妊娠経過に悪影響を与えることから,対処を行う必要があるが,妊娠経過とマイナートラブルに関する調査は十分ではない。また妊娠前には,ホルモンバランスを整え,順調な妊娠経過を送るために,適正なbody mass index(BMI)を維持することが重要である。しかし,これは主に妊娠高血圧や妊娠糖尿病などとの関連において重要視されており,マイナートラブルとの関連についての十分な検討はなされていない。そこで本研究の目的は,妊娠中の女性に発生するマイナートラブルと妊娠前BMIとの関連を縦断的に検討することとする。【方法】対象は名古屋市内のXクリニックグループにおけるマタニティフィットネスに参加していた妊婦355名(31.1±4.1歳)とした。調査項目は2009年から実施されたメディカルチェックシート,および電子カルテから得られる身体情報(年齢,身長,妊娠前体重)である。メディカルチェックシートは,日本マタニティフィットネス協会が発案したものであり,睡眠,便秘,手指のこわばり,むくみ,足のつり,腰背痛,足のつけ根の痛み,肩こり・頭痛,肋骨下の痛み,食欲・むねやけの10項目について,妊婦が即時的に症状のある項目をチェックする自己記入式質問紙である。これをもとに,マイナートラブル有病率を算出し,記述統計的に検討を行った。また,妊娠前のBMI値からBMI低値群(BMI:18kg/m<sup>2</sup>未満),BMI標準群(BMI:18~22 kg/m<sup>2</sup>),BMI高値群(BMI:22kg/m<sup>2</sup>以上)の3群に群分けを行い,妊娠中期,妊娠後期のマイナートラブルの発症との関連を検討した。統計解析は,それぞれの時期において,従属変数を各マイナートラブルの有無,独立変数にBMI標準群をリファレンスとして低値群および高値群を投入し,年齢で調整した二項ロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】当該施設の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】BMI各群の人数は低値群47名(30.4±4.2歳,BMI:17.4±0.6kg/m<sup>2</sup>),標準群236名(31.2±4.0歳,BMI:19.8±1.0 kg/m<sup>2</sup>),高値群72名(31.2±4.2歳,BMI:23.5±1.8 kg/m<sup>2</sup>)であった。対象者全体での各種マイナートラブル有病率の推移は,妊娠経過が進むにつれて大部分の項目は増加傾向を示したが,便秘,肩こり・頭痛については減少傾向を示した。回帰分析の結果,BMI高値群において妊娠中期では足のつけ根の痛みの有病率が有意に高く(OR:2.38,95%CI:0.41-3.94),妊娠後期では睡眠障害(OR:2.00,95%CI:1.08-4.82),手指のこわばり(OR:3.00,95%CI:0.51-5.09),足のつり(OR:2.29,95%CI:0.50-2.40),腰背痛(OR:2.20,95%CI:0.99-3.98),足のつけ根の痛み(OR:2.14,95%CI:0.94-4.03),肩こり・頭痛(OR:2.01,95%CI:0.69-3.86)の有病率が有意に高かった(p<0.05)。一方,BMI低値群において妊娠中期では肩こり・頭痛の有病率が有意に高く(OR:2.84,95%CI:1.35-5.96),妊娠後期では便秘の有病率が有意に高かった(OR:2.28,95%CI:1.08-4.82)(p<0.05)。【考察】本研究の結果,マイナートラブルの中には,妊娠経過とともに有病率が増加するだけでなく,減少傾向を示す項目もあることが明らかとなった。また,妊娠前BMIとマイナートラブル有病率が関連することが示された。BMI低値群においてはBMI標準群と比較して,妊娠期のホルモン変化の影響を受けるとされる便秘や頭痛などの項目に関して強い関連がみられた。一方,BMI高値群においては腰背痛や足のつりなどの筋骨格系および循環系のトラブルの項目に関して強い関連がみられた。これまで妊娠準備のために適切なBMIを保つことが重要であることは指摘されていたが,マイナートラブルの発症を防止するうえでも重要であることが示された。マイナートラブルに関しては,妊娠中という治療法が限られる状況を考えると,妊娠前からの予防が重要である。今後は,BMI以外の要因も考慮に入れ,より詳細なリスク予測の指標を作成していく必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】近年,理学療法学の分野において,ウィメンズヘルス分野への参加が重要視されている。本研究結果より,妊娠期に問題とされる各種マイナートラブルについて,それぞれの発症が母体の妊娠前のBMIと関連する結果が示されたことから,理学療法士として妊娠前の女性の体型にアプローチする事で各種トラブルに対する予防・対処の方法を提案する一助となると考える。
著者
大村 幸弘 松村 公仁 大村 正子 山下 守 吉田 大輔 中井 泉 赤沼 英男 増淵 麻里耶 大森 貴之 熊谷 和博
出版者
公益財団法人 中近東文化センター
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2010-04-01

当該研究の主目的「文化編年の構築」は、IV~VIII区で中間期のIVa層、前期青銅器時代のIVb層を中心に行なった。特にIVa層は、出土した炭化物の分析から2135calBC-1958calBC、2063calBC-1948calBCということが判明した。2014年はIVa層直下の火災を受けた建築遺構の発掘を行なったが、出土する土器には轆轤製がほとんど認められず手捏ねの粗製土器が中心であることなど、それまでの製作技法とは大きな差異が認められた。また建築遺構の形態も脆弱であった。先史時代の土器の形式編年等は未解明部分が多く、層序を中心とした研究によって先史時代の編年に大きく貢献できたと考える。