著者
村上 恭通 大村 幸弘 安間 拓巳 槙林 啓介 新田 栄治 笹田 朋孝
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

この研究は、製鉄の起源地である中近東から東方へ伝わる技術の足跡と変化の画期を考古学的に明らかにすることを目的としました。ヒッタイトに代表される青銅器時代の鉄は、紀元前12世紀頃にコーカサス地方を経て、中央アジアに伝わることを発掘により明らかにしました。これを技術伝播の第1波とすれば、黒海・カスピ海北岸地域のスキタイで育まれた技術の東方伝播が第2波といえます。東アジアは第1波の技術を基礎に発展させ、第2波を受容していないことも判明しました。ユーラシア北部における製鉄技術の伝播が鉱山を求めて移動する遊牧民族の生活様式に起因することが想定できるようになりました。
著者
大村 幸弘 松村 公仁 大村 正子 山下 守 吉田 大輔 中井 泉 赤沼 英男 増淵 麻里耶 大森 貴之 熊谷 和博
出版者
公益財団法人 中近東文化センター
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2010-04-01

当該研究の主目的「文化編年の構築」は、IV~VIII区で中間期のIVa層、前期青銅器時代のIVb層を中心に行なった。特にIVa層は、出土した炭化物の分析から2135calBC-1958calBC、2063calBC-1948calBCということが判明した。2014年はIVa層直下の火災を受けた建築遺構の発掘を行なったが、出土する土器には轆轤製がほとんど認められず手捏ねの粗製土器が中心であることなど、それまでの製作技法とは大きな差異が認められた。また建築遺構の形態も脆弱であった。先史時代の土器の形式編年等は未解明部分が多く、層序を中心とした研究によって先史時代の編年に大きく貢献できたと考える。
著者
安田 喜憲 BOTTEMA S. VAN Zeist W. 大村 幸弘 ZEIST W. Van
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

1988年から1990年の3カ年のオランダ・グロ-ニンゲン大学との共同研究の結果は、以下のような特筆すべきいくつかの研究成果をえることがてきた。1)巨大な氷河時代の多雨湖の発見:トルコ最大の塩湖トゥ-ズ湖の湖岸から1989年に採取したボ-リングコアのCー14年代測定値は、地表下460ー500cmが23440±270年前、940ー970cmが32300+600ー550年前、1570ー1600cmが35850+1150ー1000年前であった。花粉と珪藻分析の結果,20000年前以前のトゥ-ズ湖周辺はアカザ科やヨモギ属の広大な草原であり、当時の湖は淡水でかつ水位も現在より数メト-ル高位にあったことがわかった。これまで湖岸段丘の分布から氷河時代にはアナトリア高原に巨大な多雨湖が存在したという地形学者らの推定を立証した。2)5000年前の都市文明を誕生させた気候変動の発見:ギリシアのホトウサ湿原、コロネ湿原、カトウナ湿原のCー14年代測定、花粉分析の結果から、、都市文明誕生期の5000年前が気候変動期に相当していることを解明した。5000年前以降の気候の寒冷化にともない、ギリシアやアナトリア高原は湿潤化した。これに反して、メソポタミア低地やナイル川低地は乾燥化した。この乾燥化が人々を大河沿いに集中させ、都市文明誕生の契機を作った。またアナトリア高原の湿潤化はユ-フラテス川下流域に大洪水をもたらした可能性が指摘できた。3)アレキサンダ-大王の侵略を容易にした気候変動の発見:カマンカレホユック遺跡の北西井戸より採取した泥土のCー14年代測定結果と花粉分析の結果はCー14年代2160±50年前の層準を境として、周辺の環境が著しく乾燥化することを明かにした。ミダス王墓がつくられたフリギア時代のアナトリア高原は現在よりも湿った湿潤な気候が支配していた。ところが約2200年前のヘレニズム時代以降、アナトリアは乾燥化した。同じ傾向はシリアやエジプトでもみられた。アレキサンダ-大王がなぜかくも短期間にかつ広大な面積を征服できたかは、人類史の一つの謎であるが、この気候の乾燥化がトルコや小アジアの人々の生活を困窮させアレキサンダ-大王が侵略する以前にすでに小アジアからインダス地域の人々は疲弊していた可能性がたかい。それゆえに征服も容易であったのではないかと言う点が指摘できた。4)消えた森林の発見:アナトリア高原やギリシアには、かってナラ類やマツ類を中心とする立派な森が存在したことが、ギリシア・トルコの花粉分析の結果明白となった。またシリアのエルル-ジュ湿原の花粉分析結果はレバノンスギの森が3000年前まで存在したことを解明した。これらの森は全て人間の森林破壊の結果消滅した。5)研究成果の報告会:1991年2月22ー24日、中近東文化センタ-カマンカレホユック遺跡の調査成果報告会を実施した。公開報告会には200名を超える一般参加者があり、大村はカマンカレホユック遺跡の考古学的発掘成果について、安田はアナトリア高原の古環境復元の試みについて発表した。1991年2月27日には国際日本文化研究センタ-での「Environment and Civilizations in the Middle East」と題した公開シンポジウムを実施した。シンポジウムには北海道から九州まで52名の研究者の参加があり、ZEISTは“Origin and development of plant cultivation in the Near East",BOTTEMAは“Vegetation and environmentin the prehistoricーearly historic period in the Eastern Mediterranean"の発表をおこない安田が総括した。6)単行本の刊行:研究成果をいくつかの論文に発表するとともに、研究成果を広く一般に普及するため単行本を刊行した。安田は5冊、大村,ZEIST,BOTTEMAはそれぞれ各一冊刊行した。なを公開シンポジウムの報告はJapan Reviewに特集として英文で報告の予定である。
著者
中井 泉 真道 洋子 大村 幸弘 吉村 作治 川床 睦夫
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ガラスの古代の東西交易を明らかにするためにポータブルX線分析装置を開発し、美術館や中国、インド、エジプト、シリア、トルコ、クロアチアの現地で出土遺物を分析した。日本の古墳出土ガラスは、インド、タイ、中国などのアジアの国々から伝来したものであることを実証した。また、平等院出土ガラスの分析では、奈良時代の鉛ガラスの製法が平安時代も継続し、新たにカリ鉛ガラスの製法が中国から伝来したことを示した。地中海沿岸諸国における東西交流についても実証的データを得た。