著者
馬場 康之 今本 博健 吉岡 洋 山下 隆男
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報 (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.421-430, 1999-04

本報では, ADCP(AcousticDopplerCurrentProfiler)による海浜流の鉛直分布に関する現地観測の概要とその結果について報告する。本現地観測は, 「鹿島灘での海象の共同観測」の一環として運輸省港湾技術研究所波崎海洋観測施設において行われたもので, 1998年9月13日から10月7日にかけて実施された。観測内容はADCPによる流速分布計測の他に, 超音波波高計による波浪観測も行われた。沿岸方向の流動は海上風との対応がよく・水深方向に一様な流れ場となっていた。台風5号が観測地点付近に接近した際には, 全水深にわたって強い沖向きの流れも観測された。Nearshore current, which is a coastal current in the nearshore zone, is mainly generated by breaking waves inside the surf zone and winds in the wide area of the coastal zone. In order to investigate vertical distribution of nearshore current, the field observation was performed by using high frequency ADCP (Acoustic Doppler Current Profiler) installed on the sea bottom at Hazaki Oceanographical Research Station (HORS).Longshore currents are strongly related with longshore components of the wind speed, and vertical distribution of longshore currents is almost uniform. On-offshore currents have characteristics of shear flow, and strong offshore currents were observed under the strong wind condition
著者
山下 隆男 塚本 修 大澤 輝夫 永井 晴康 間瀬 肇 小林 智尚
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,地球温暖化による気候変動に伴い巨大化する台風,ハリケーン,サイクロンを対象として,わが国の主要湾(大阪湾,伊勢湾,有明海・八代海),メキシコ湾およびベンガル湾における,高潮,高波,強風,豪雨、洪水に関する災害外力の上限値を評価することを目的とする。このため,以下の3研究課題について,各々のサブテーマを分担課題として研究を進め,災害外力の上限値解析を行った。(1)スーパー台風(ハリケーン・サイクロン)の数値モデル(2)台風と海洋との相互作用(3)スーパー台風による災害外力の上限値解析。最終年度に得られた成果をまとめると、以下のようである。1.海水温の上昇により、熱帯性低気圧がどの程度巨大化するかを、地上風速、降雨量とについて数値的に検討した。海面水温の2度の上昇は海面風速(せん断応力)降水量(陸上および海上)に極めて甚大な影響を及ぼすことを示した。2.台風と海洋の相互作用では、台風による海水混合で台風が弱体化する機構を示した。さらに、海上の降水量、河川からの出水により海洋表層の淡水成分が増加すれば、成層構造が強化され、台風による海水の混合過程が弱まれば、台風が減衰しにくくなる可能性を示した。3.災害外力の評価では、沖縄県において台風の巨大化を考慮した高潮ハザードマップを作成し公表した。4.気候変動の捉え方として、地球の平均気温のように指数関数的に増加するトレンドとしての上昇以外にも、太平洋、大西洋、インド洋等の海洋振動の影響による数十年周期の変動(ゆらぎ)を、適応策において考慮することの重要性を指摘した。