著者
山口 迪夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.606-609, 1989-12-20 (Released:2017-07-13)

従来, 食品学や栄養学の領域でいう「食べ物の酸性・アルカリ性」は, 食品自体が酸性であるか, アルカリ性であるかというより, 食べ物が体内で代謝された後, 生体に対して酸性に働くか, アルカリ性に働くかを意味する場合が多かった。これがいわゆる「酸性食品・アルカリ性食品」の理論といわれてきたものである。この理論に従えば, 食品自体が酸性であってもアルカリ性食品になる場合がある。そして, 酸性食品かアルカリ性食品かを決めるのは, その食品のミネラル組成, すなわち陽性元素と陰性元素の各合計量(当量)でどちらが多いかである。しかし, 近年になりその理論の栄養学あるいは生理学的意義は次第に科学的根拠を失い, 現在の教科書や専門書からは「酸性食品・アルカリ性食品」の言葉が完全に消え去ろうとしている。
著者
池上 幸江 大澤 佐江子 石井 恵子 本田 節子 永山 スミ子 山口 迪夫
出版者
Japanese Association for Dietary Fiber Research
雑誌
日本食物繊維研究会誌 (ISSN:13431994)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.67-74, 1998-12-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
21

本研究では,とうもろこし水溶性食物繊維(CSD)の血圧に対する影響を中高年男女と高血圧自然発症ラット(SHR)について検討した。用いたCSDは食物繊維含量が83.6%であった。 人に対するCSDの影響は,平均年齢60歳の18人の対象者に4週間,毎食59のCSDを湯又は茶に溶いて摂取させた。対象者は,収縮期血圧140mmHg以上と以下の2群に分けた。6名の軽度高血圧群では,CSDの摂取によって,収縮期血圧と拡張期血圧ともに有意に低下した。正常群では,収縮期,拡張期の血圧に対する影響は明確ではなかった。対象者の血漿脂質とインスリン値には有意な影響は見られなかった。また,軽度高血圧,正常両群ともに,血糖値は正常であった。 SHRラットには,5%CSD溶液を飲料水として投与し,コントロール群は蒸留水を投与し,固形飼料を投与して10週間飼育した。その結果,飼育開始1週目より,水投与群より5%CSD群の血圧の上昇は有意に抑制された。体重,肝臓などの臓器重量は両群に差はなかったが,消化管重量は有意に重く,脂肪組織は有意に小さかった。血清脂質,血糖値,インスリンには有意な影響はなかった。 これらの結果より,とうもろこしより精製した水溶性食物繊維には高血圧状態の改善の可能性が示されたが,臨床的な有効性については,その作用機構も含めてさらに検討が必要である。