著者
杉木 竣介 田中 正二 山崎 俊明 後藤 伸介 東 利紀 黒田 一成
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.50-55, 2023 (Released:2023-02-15)
参考文献数
18

〔目的〕本研究は,人工膝関節全置換術(TKA)後の個別理学療法(個別療法)と個別集団併用型理学療法(併用型療法)を比較し,併用型療法の効果を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕個別療法を行った者を個別療法群,併用型療法を行った者を併用型療法群とした.研究形式は後ろ向きコホート研究とした.〔結果〕膝関節屈曲可動域(ROM)は,術後3週と術後4週で個別療法群よりも併用型療法群で有意に大きかった.併用型療法群は,個別療法群よりも膝伸展筋力体重比が有意に高く,杖歩行獲得日数および在院日数が有意に短かった.〔結語〕TKA後の併用型療法は,個別療法よりも膝ROMや膝伸展筋力,杖歩行獲得日数や在院日数に正の効果を与える可能性が示唆された.
著者
橋本 直之 横川 正美 山崎 俊明 中川 敬夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.AdPF1010, 2011

【目的】<BR> 高齢化の進行とともに認知症高齢者も増加し、その予防に対する取り組みが注目されている。歩行などの有酸素運動は認知機能を改善させるとの報告がある。一方、前頭前野は大脳後半部からの情報を把握、了解、統合、分析を伴う場所であり認知症と深く関係があるとされており、長期的な有酸素運動により前頭前野機能テストの改善が見られたなどの報告もされており、有酸素運動は脳機能向上に有用といえる。前頭前野が関与すると考えられている、運動および精神機能を評価する指標として、脳血流動態の測定があるが、脳血流は運動負荷により増加するとされて、運動強度の違いにより脳機能の向上に違いがある可能性がある。高齢者に対する運動療法では、軽負荷の運動プログラムの方が参加しやすく、運動強度の違いによる効果の違いを検証することは重要であると考える。そこで、本研究ではその予備的研究として若年健常者に対し、異なる運動強度で行った運動が高次脳機能にどの程度影響を及ぼすかについて比較&#8226;検討することとした。<BR>【方法】<BR>20歳代から30歳代の一般健常男性で研究内容に同意の得られた者30名(24.5±2.7 歳)を対象とした。最大運動能力測定(MVE)は自転車エルゴメーターを用い、症候限界性多段階運動負荷試験を行った。MVEは自覚症状の出現により駆動が困難となった時点、または運動の中止基準に該当する所見が出現した時点の負荷量とした。MVEの20%、40%、60%の負荷で運動を行う運動群とコントロール群の4群にランダムに振り分けた。運動群は15分間の自転車エルゴメーター駆動を行い、その前後にPaced auditory serial addition test(PASAT)およびPsychomotor Vigilance Task (PVT)を行った。コントロール群は自転車エルゴメーター上での安静座位を15分行い、その前後に運動群と同じテストを実施した。各群の前後のテスト成績の比較を二元配置分散分析で検討した後、多重比較検定を行った。有意水準は5%とした。<BR>【説明と同意】<BR>測定の趣旨&#8226;方法について口頭及び書面にて説明を行い、同意を得られた者を対象とした。本研究は所属する施設の医学倫理委員会の承認(承認番号257)を得て行った。<BR>【結果】<BR> 二元配置分散分析で交互作用を認めた項目はなかった。多重比較において、PASATでは20%、40%、60%MVEの各群で運動前と比べ運動後の方が、有意に点数が高かった(20%、40%:p<0.05、60%:P<0.01)。PASATの連続正解数では40%MVEでのみ有意な増加が見られた(p<0.05)。PVTの多重比較では、どの群においても運動前後で有意な変化を認めなかった。<BR>【考察】<BR>PASATの遂行時には前頭前野、左下頭頂小葉&#8226;左上、下側頭回が同時に、あるいはこのいずれかが関与していたと報告されており、テストにおける賦活領域は前&#8226;中大脳動脈の流域であると推察される。中大脳動脈は中等度運動時に脳血流が最大となる、あるいは低強度運動でも前頭機能の血流量が増大するという報告があり、今回の20%、40%、60%MVEの運動時にPASAT の点数が改善したことは、これらの報告と一致すると考える。今回一過性運動の効果の検証を行うため、運動の前後でテストを実施しており、慣れにより影響を受ける可能性が考えられた。コントロール群には増加傾向を認めたが、統計学的に有意な差を認めなかった。したがって、今回の結果より慣れによる点数の増加は否定できないが、運動による効果はあるものと考える。注意の要素としては(1)選択機能(2)覚醒ないし持続性注意(3)認知機能の制御があげられ、PASAT は注意の制御を評価するテストであり、PVTは注意の持続力&#8226;覚醒度を評価するテストである。今回の結果から一過性の運動は注意の制御により効果がある可能性が示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>高齢者は軽負荷での運動の方が参加しやすいとされており、どの運動強度がより認知機能に効果を及ぼすかを検証することは重要である。本研究はその予備的研究としての意義を持つと考える。
著者
橋本 直之 横川 正美 山崎 俊明 中川 敬夫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.377-381, 2013 (Released:2013-07-16)
参考文献数
23
被引用文献数
2 2

〔目的〕運動強度の違いが,脳血流と注意力に与える影響を検討すること.〔対象〕20~30歳代の健常男性30名.〔方法〕対象者を最高酸素摂取量に応じ20%群,40%群,60%群の各運動群と運動なしのコントロール群に振り分けた.近赤外分光装置にて,運動中の前頭葉領域の脳血流を測定し,運動前後にPaced Auditory Serial Addition Task(PASAT)とPsychomotor Vigilance Task(PVT)を行った.〔結果〕脳血流の変化量は,左右ともに60%群がコントロール群と20%群よりも有意に大きく,PASATの正解数は運動後に40%群と60%群で有意に増加した.〔結語〕60%群は前頭葉領域の血流を増加させるとともに注意機能を向上することが示唆された.
著者
山崎 俊明 横川 正美 立野 勝彦
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

リハビリテーション領域における重要な課題である廃用性筋萎縮の進行予防に焦点を絞り、筋萎縮進行中のストレッチ効果、および筋肥大効果が報告されているアドレナリン受容体作用薬(clenbuterol ; Cb)投与との併用効果を調べた。廃用性筋萎縮は、後肢懸垂法により作成し、2週間の実験期間を設定した。実験動物としてWistar系ラットを使い5群に分け、通常飼育群(CON)の他4群を実験群とした。実験群には後肢懸垂処置を行い、後肢懸垂群(HU)、1日1時間ストレッチ実施群(STR)、Cb投与群(Cb)およびストレッチとCb投与の併用群(STR+Cb)とした。分析は、形態評価および機能的評価を行った。タイプI線維断面積は、HU群はCON群の42%に減少したが、Cb群は81%、STR群は58%、STR+Cb群は74%であった。ストレッチ効果を認めたが、併用効果は認められなかった。筋線維タイプ構成比率は、Cb群で有意なタイプII線維比率の増加を認めたが、STR+Cb群では変化なく併用の有用性が示唆された。Cb群およびSTR+Cb群の筋収縮時間はCON群より有意に短縮し、HU群およびSTR群の収縮時間はCON群と差がないことから、Cb投与による悪影響として速筋化傾向が示唆された。単位断面積あたりの単収縮張力はSTR群がCON群と差がなく、しかもCb群より有意に大きい結果から筋伸張の効果が示唆された。実験群の筋原線維タンパク量(MP)は、CON群に比し有意に減少した。実験群間では、Cb群およびSTR+Cb群のMPがHU群およびSTR群より有意に大きく、Cb投与の効果が示唆された。以上の結果から、廃用性筋萎縮進行中のラットヒラメ筋に対する予防的介入方法として、Cb投与による断面積減少の抑制と、筋ストレッチによる伸張刺激の併用効果の有用性が示唆された。