著者
早瀬 環 山本 淑子 山本 啓一
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第32回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.121, 2005 (Released:2005-06-08)

我々はこれまで、濫用薬物であるコカイン(COC)やメタンフェタミン(MA)の不安惹起作用について、マウスにおける高架式十字迷路法などの方法によって調べてきた。COCやMAによる不安症状は、他の原因による不安症状同様、ベンゾジアゼピン受容体やセロトニン受容体などの受容体と関係があるといわれ、様々な抗不安薬による抑制効果が検討されてきたが、最近カンナビノイド(CB)受容体との関係が示唆されている。特にanandamide(AEA)など内因性CB受容体作用薬(内因性CB)は抗不安作用など様々な治療効果を示すことが証明されている。本研究ではCOC及びMAによる不安症状に対する内因性CBの影響を調べ、他の抗不安薬との比較を試みた。【方法】雄ICRマウスでCOC及びMAの不安惹起作用に対するベンゾジアゼピン受容体(diazepamなど)、セロトニン受容体(ketanserin、ondansetronなど)などに関係のある抗不安薬、及び内因性CBであるAEA、2-arachidonylglycerol、N-arachidonyldopamine(NADA)、noladin ether、virodhamine(VD)の影響を高架式十字迷路法(壁のあるenclosed armへの嗜好性の変化)によって調べた。【結果と考察】高架式十字迷路法では、COC 30mg/kg又はMA 4mg/kgの急性投与群(腹腔内投与)、及びCOC 15 mg/kg又はMA 2mg/kgの慢性投与群(7日間の投与)の両方で、3日間以上の不安症状(壁のないopen armへの移動回数の減少、壁のあるclosed armへの移動回数の増加、open armでの滞在時間の減少、open armに最初に移動するまでの時間の延長、すくみ緊張姿勢の増加など)の継続が認められたが、(最終)投与40分後では、急性投与群のみで著明な不安症状が認められた。抗不安薬については、投与40分後では、diazepam(5mg/kg)、chlormethiazole(10mg/kg)、ketanserin(5mg/kg)、ondansetron(0.01mg/kg)、及びCB受容体に対して部分antagonistとしても作用するVD以外の内因性CBの抗不安作用(上記の評価値の回復)が急性投与群で認められたが、投与3日後では、内因性CBのみに急性投与群と慢性投与群の両群での抗不安作用が認められ、作用の継続性とCOCやMAの退薬症状に対する効果の可能性が示唆された。また内因性CBなどの効果がCOC群とMA群の両群で認められることが示された。
著者
山本 啓一 三村 徹郎 矢島 浩彦
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

車軸藻内では非常に早い原形質流動が起こっている。この流動は、きんにくと同じミオシン・アクチン系によることが示唆されてきたが、そのミオシンの形態や運動能力については良く判っていなかった。そこで、我々は、オオシャジクモChara corallinaのミオシン抗体を用いて車軸藻cDNAライブラリーをスクリーニングし、このミオシンをコードする遺伝子をクローニングした。読みとった塩基数は8384で、その中に翻訳領域6471塩基対(2157アミノ酸)が含まれていた。計算によって求められた分子量は245532で、生化学的に得られたシャジクモ・ミオシンをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳道にかけることよって決められた値と良く一致していた。得られたアミノ酸配列から二次構造予測を行ったところ、N末端にATP加水分解部位やアクチン結合部位を含む球状構造、それに続いて軽鎖結合部位と考えられるIQモチーフ、コイルドコイルを作る領域、そして尾部末端の球状領域からなることが示唆された。この構造は、我々が以前に電子顕微鏡で観察したものと非常に良く一致していた。さらに、遺伝子の一部を大腸菌内で発現させ、それに対する抗体を作ったところ、この抗体は性化学的に得られたシャジクモミオシンと反応した。以上の結果から、我々がクローニングした遺伝子は、間違いなくシャジクモミオシンのものであると考えている。
著者
上野 陽里 青木 達 栗原 紀夫 山本 啓一
出版者
京都大学
雑誌
核融合特別研究
巻号頁・発行日
1987

核融合研究が発展し試験炉が運転を始めると大量のトリチウムが環境に放出される恐れがある. 環境中のトリチウムが増加すると種々の経路を通じて体内に侵入したトリチウムにより放射線被爆の可能性が増加する. したがって現在の日本人体内のトリチウム量を測定し, 基準値となるバックグラウンド値を明らかにしておくことは今後の増加を知り, 環境のリスク評価を行う上で重要である. 日本人の体内自由水トリチウムについては現在まで今年度の9例を加えて29例の測定を行っており, 組織結合型トリチウムについても測定を始め数例の結果を得た. 材料は法医解剖をうけた生前は健康と思われた遺体から得た. 各組織は真空凍結乾燥法により72時間かけて捕集した. 捕集して得た自由水は従来からのアロカ製低バックグラウンド液体シンチレーション計数値LSCーLB1と, 今回本科学研究費で入手したパッカード製液体シニチレーションアナライザTRIーCARB1550を用いて測定を行った. 組織結合水については, 燃焼後の水を捕集して測定した. 全試料数は86個でその平均は105pCi/lであった. 個体間のばらつきは52pCi/lから210pCi/lの間にあった. 各組織の平均は脳で71pCi/l, 肺で88pCi/l, 肝で87pCi/l, 腎で162pCi/l, 筋で69pCi/l, 脾で102pCi/lであった. 組織結合水では肝で750pCi/l, 筋で600pCi/l, 蒸溜水で320pCi/lと大きい値を示した. この理由は不明であるが, 恐らくスペクトルがトリチウムに類似した有機物質の疑計数であろうと思われる. 今後この分析を行うと共に例数も増加させていく予定である. 試料は目下蓄積中である.