著者
仁科 浩二郎 小林 岩夫 山根 義宏 KOBAYASHI Iwao
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

本研究の目的は, 原子炉燃料臨界安全モニターの開発にあり, 昭和57〜59年度の3年間に引き続き, Cf-252利用の3検出器雑音法を実際的方法を目指して改善, 確立することである. この方法では, Cf内蔵の検出器1個と, 中性子検出器2個を体系周辺に配置し, これらの検出器出力の相互, または自己パワースペクトルを信号処理によって得る. これらの量から作った比(スペクトル比)を確率過程論によって体系の中性子増倍率に関係付ける.本研究3年間の主な成果を以下に列記する(1)上述のスペクトル比が, 見かけ上, 如何に検出器配置に依存するか予測する理論式を導き, 実験における検出器配置に対して指針を得た.(2)この式を, 原研のTCA装置で実験的に検証することを試み, 一部のデータで理論式と一致する傾向を得た.(3)モデル化円柱体系に対するモンテカルロ法シミュレーションコードを作成し, スペクトル比の検出器位置依存性に関し, 上記(1)の理論式の妥当性を明らかにした.(4)同じモンテカルロ法コードにより, Cf中性子源強度に対する, スペクトル比の依存性を調べ, この依存性が少いという結論を得た.(5)相互干渉系(2コニツト体系)への本方法の適用を考え, 2点炉近似に基ずく理論式の導出を行った.(6)遅発中性子がスペクトル比に及ぼす効果を定量的に調べ, 10Hz以上の周波数域では, この効果は考慮する必要がないと結論できた.今後は, a.上記(2)の実験の続行, b.再処理燃料中に必ず存在するプルトニウムの核分裂が, 結果に及ぼす影響の検討, c.測定統計改善のための検出器改善, d.同じく統計改善のためのCf以外の外部中性子源使用の効用検討 などの課題がある.
著者
遠藤 知弘 岩瀬 仁紀 山根 義宏 山本 章夫
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.159, 2007

空間・エネルギー効果を考慮した3次中性子相関法の理論式を、高次検出器インポータンスを用いて、見通しの良いコンパクト表現で導出した。これに基づく未臨界度の表式は、従来の実効増倍率や未臨界反応度と異なる。その特徴を数値計算例で示す。
著者
竹田 敏一 代谷 誠治 北田 孝典 山本 敏久 山根 義宏 三澤 毅
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1)ミクロ炉物理を考慮した過渡解析の理論および計算コードの開発を行った。理論としては、燃料集合体内のピンセル構造などの非均質性を厳密に取り扱えること、さらに実効断面積作成にその厳密性が陽に反映されることを考慮して中性子流結合衝突確率法(CCCP法)による方程式を用いた。これまでのCCCP法では時間依存性が考慮されていないため、新たに時間依存を扱えるCCCP法の開発を行った。2)ミクロ炉物理的検討により、中性子束の角度分布は周囲の幾何形状や組成により大きく異なることが示唆された。そのため原子炉内での中性子束角度分布の測定方法の開発を行い、実際にKUCAのC架台に構成した炉心に対して測定を試みた。原子炉内の中性子束角度分布の測定方法として、光ファイバー検出器とCdチューブを組み合わせた手法を考案した。この手法による測定実験を行い中性子束角度分布の測定結果を得ることによりこの手法の有効性を確認した。3)過渡時の燃料棒内温度分布を考慮する効果を正確に把握するため、制御棒を含む2次元軽水炉燃料集合体体系において、核と熱を結合した計算コードを開発した。この計算コードを用いて燃料棒内の温度分布等の非均質性を考慮し、冷温停止及び高温待機状態からの制御棒落下事故を模擬した過渡解析を行った。その結果、特に高温な炉心での格子内の非均質性を直接考慮した過渡解析において燃料棒内の径方向温度分布は無視できないこと、および燃料棒内の温度分布が複雑であるため燃料棒内で均一な温度を用いる実効温度モデルでは不十分であることが分かり、過渡時のような燃料棒内の複雑な温度分布を取り扱うにはミクロ炉物理に基づく考察が必要であることが明らかとなった。