著者
卞 哲浩 三澤 毅 宇根崎 博信 代谷 誠治
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)において実施された加速器駆動未臨界炉(ADSR)の基礎実験から以下のような結論を得ることができた。1.ポリエチレン反射体領域に中性子ガイド(中性子遮蔽体およびビームダクトから成る)を導入し炉心内に設置した放射化箔の照射実験を行うことで、中性子ガイドの効果と妥当性を実験的に確認することができた。2.炉心中心およびターゲット領域において放射化箔法による中性子スペクトル測定を行った結果、放射化反応率およびアンフォールディング法によって中性子スペクトル情報を取得し、14MeV程度の中性子のスペクトルを把握するために最適な放射化箔を実験から選定することができた。また、放射化反応率をモンテカルロ計算コードMCNPによって求めることによって計算精度の確認を行うことができた。3.FFAG加速器から発生する100MeV程度のプロトンビームに照射したタングステンターゲットの放射化反応率測定から、100MeV付近の高エネルギー中性子のスペクトル情報に関する実験手法を確立することができた。同時に、FFAG加速器を角いたMCNPXによる解析では、アンフォールディング法によってスペクトル情報に関する解析が可能であることがわかった。今後の課題として、1.FFAG加速器の導入に伴い、プロトンのエネルギーが20〜150MeVでの反応度および反応率分布の静特性解析に加えて動特性解析をMCNPXを用いて行い、ADSR炉心の最適化設計を行う予定である。2.FFAG加速器の導入において、ターゲット付近での中性子の発生を従来よりも精度良く正確に把握するための測定手法の確立とモンテカルロ計算による計算精度の向上を検討する必要があると考えられる。
著者
高橋 佳之 八木 貴宏 三澤 毅 卞 哲浩 代谷 誠治 吉川 潔
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.91, 2007

D-D中性子源とBGO-NaI複合検出器3系統による地雷探知システムのプロトタイプを製作した。このプロトタイプと実際の爆薬を用いて、爆薬中の窒素・水素原子と中性子との核反応によって得られる捕獲γ線(窒素10.83MeV・5.27MeV、水素2.22MeV)を計測し、地雷の有無の判別を行った。また、爆薬量、地雷埋設深さ、土壌水分量などが異なった様々な条件下における地雷探知システムの性能を評価した。
著者
名内 泰志 亀山 高範 宇根崎 博信 三澤 毅 佐野 忠史 八木 貴宏
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集 2011年春の年会
巻号頁・発行日
pp.170, 2011 (Released:2011-04-18)

KUCA C架台で軽水減速未臨界炉心を作成し、炉外の熱中性子捕獲反応で発生する2.223MeV ガンマ線を測定した。炉外で熱中性子束分布を計測し、それをもとに2.223MeV ガンマ線検出効率を炉心組成情報を用いずに求め、炉外での捕獲反応率を導出した。同反応率は、炉心組成をもとに中性子輸送計算で求めた中性子漏洩数と合致した。
著者
竹田 敏一 代谷 誠治 北田 孝典 山本 敏久 山根 義宏 三澤 毅
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1)ミクロ炉物理を考慮した過渡解析の理論および計算コードの開発を行った。理論としては、燃料集合体内のピンセル構造などの非均質性を厳密に取り扱えること、さらに実効断面積作成にその厳密性が陽に反映されることを考慮して中性子流結合衝突確率法(CCCP法)による方程式を用いた。これまでのCCCP法では時間依存性が考慮されていないため、新たに時間依存を扱えるCCCP法の開発を行った。2)ミクロ炉物理的検討により、中性子束の角度分布は周囲の幾何形状や組成により大きく異なることが示唆された。そのため原子炉内での中性子束角度分布の測定方法の開発を行い、実際にKUCAのC架台に構成した炉心に対して測定を試みた。原子炉内の中性子束角度分布の測定方法として、光ファイバー検出器とCdチューブを組み合わせた手法を考案した。この手法による測定実験を行い中性子束角度分布の測定結果を得ることによりこの手法の有効性を確認した。3)過渡時の燃料棒内温度分布を考慮する効果を正確に把握するため、制御棒を含む2次元軽水炉燃料集合体体系において、核と熱を結合した計算コードを開発した。この計算コードを用いて燃料棒内の温度分布等の非均質性を考慮し、冷温停止及び高温待機状態からの制御棒落下事故を模擬した過渡解析を行った。その結果、特に高温な炉心での格子内の非均質性を直接考慮した過渡解析において燃料棒内の径方向温度分布は無視できないこと、および燃料棒内の温度分布が複雑であるため燃料棒内で均一な温度を用いる実効温度モデルでは不十分であることが分かり、過渡時のような燃料棒内の複雑な温度分布を取り扱うにはミクロ炉物理に基づく考察が必要であることが明らかとなった。
著者
三澤 毅
出版者
名古屋大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

近年、原子炉の大型化や高燃焼度化に伴い原子炉の安定性に関する議論が盛んになってきている。本研究ではこの原子炉の安定性、すなわち原子炉に加えられた外乱に対する原子炉の振る舞いに関する研究を行うために、新たな高次摂動理論(Modified Explicit Higher Order Perturbation Method、MHP法)を導出した。このMHP法は、原子炉内での中性子の拡散方程式を固有値方程式として解き、その結果得られる高次モード固有関数を用いて摂動が加わった後の中性子束を関数展開する手法により、摂動後の中性子束分布および反応度の変化を求めるという理論である。MHP法の特徴は、これまで困難とされてきた中性子エネルギーを多群化した場合での高次摂動理論の解析を可能にすることであり、これにより初めて高次摂動理論を実際の原子炉の解析へ適用できるようになったといえる。引き続きこのMHP法を検証するために、エネルギー多群での多次元拡散方程式に基づく高次モード固有関数解析コード(NEUMAC-3)、およびMHP法解析コード(TWOPERT)を開発し、最も簡単な2次元の1領域体系に摂動が加わった際の中性子束分布および反応度の変化を、MHP法により求める計算を行い、厳密計算との比較を行なった。その結果、MHP法を用いることにより、摂動に対する中性子束分布及び摂動反応度の変化をこれまでの1/100程度の非常に短時間で、しかも精度良く求めることができることが分かった。さらにMHP法を実機の大型発電用原子炉(PWR)に適用し、制御棒挿入の摂動に対する中性子束分布等の変化の解析を行った結果、予め高次モード固有関数を求めておくことにより、MHP法用いて実機のPWRでの様々な摂動に対する振る舞いを短時間で精度良く求めることができることが分かり、MHP法を実機の原子炉の安定性解析に用いることができる見通しがついた。