著者
野津 厚 山田 雅行 長尾 毅 入倉 孝次郎
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.4_209-4_228, 2012 (Released:2012-09-28)
参考文献数
40
被引用文献数
1

2011年東北地方太平洋沖地震の際、震源断層に比較的近い宮城県から茨城県にかけての多くの地点で観測された0.2-1Hzの帯域の速度波形は明瞭なパルスによって特徴付けられている。これらの強震動パルスは、構造物に対して影響を及ぼしやすい周波数帯域に現れているという点で、内陸地殻内地震による強震動パルスと共通の特徴を有していると言える。海溝型巨大地震がもたらす強震動パルスも構造物に大きな影響を及ぼす可能性があり、今後、海溝型巨大地震に対する強震動予測、特に耐震設計を目的とする強震動予測を行う場合には、強震動パルスの生成を意識した震源のモデル化を行うことが重要と考えられる。本稿においては、まず、海溝型巨大地震による強震動パルスの生成事例を示す。次に、それらの再現を目的として構築された既往の震源モデルを整理し、強震動パルスを生じたと考えられる領域(強震動パルス生成域)の諸特性と地震規模との関係を調べる。
著者
山田 雅行 伊藤 佳洋 長尾 毅 野津 厚 長坂 陽介 大岩根 尚
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_691-I_699, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
22
被引用文献数
1

比較的小さな盆地構造(カルデラ)を有する薩摩硫黄島において,臨時地震観測によってサイト増幅特性の算定を行い,一方で,常時微動観測(単点H/Vおよびアレイ観測)を行い,地盤モデルの推定を行った.硫黄島港および薩摩硫黄島飛行場において算定したサイト増幅特性と,常時微動に基づく地盤モデルに対して一次元重複反射を用いて算定した伝達関数の比較を行った.港湾および飛行場の伝達関数は,0.2~0.3Hz付近にピークは見られるものの,それほど明瞭なピークは見られず,サイト増幅特性には盆地構造による3次元的な効果や,地震波の入射方向の効果が含まれているものと考えられる.また,港湾と飛行場のサイト増幅特性の0.2~0.3Hz付近の共通の特徴から,両地点は深い構造を共有していると推察され,実際のカルデラ構造が従来の解釈より複雑である可能性が示唆された.
著者
山田 雅行 山田 真澄 羽田 浩二 藤野 義範 Jim MORI 坂上 啓 林田 拓己 深津 宗祐 西原 栄子 大内 徹 藤井 章男
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.I_216-I_224, 2017 (Released:2017-09-21)
参考文献数
9
被引用文献数
2 5

平成28年熊本地震によって被災した益城町の倒壊建物が集中している地域を対象とした悉皆調査から,狭い範囲における被害分布の急変が見られた.この説明のために,常時微動を用いた地盤調査に基づいて地表面での揺れの推定を試みた. 常時微動は極小アレイ+1点の5点を基本とし,約62.5mメッシュごとに108箇所の観測を行った.各箇所でインバージョンを行い,地盤モデルを作成した. 治水地形分布図に氾濫平野または旧河道と記された比較的被害の小さい地区は,非常に軟弱な堆積層が5m程度以上存在することがわかった.非線形地震応答解析を行った結果として,本震時の地表面の揺れにおいて,低周波数成分が卓越し,1-2Hz(周期0.5~1 秒)の応答倍率が小さかったことが,比較的被害が小さいことの一因である可能性が考えられる.
著者
伊藤 佳洋 山田 雅行 岡部 登 野津 厚 長尾 毅 高橋 宏彰 水谷 亮祐
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_401-I_407, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
30

海溝型巨大地震による強震動の波形,スペクトルなどを高精度で再現できる震源モデルとして野津らによりSPGAモデルが開発されている.このモデルで歴史地震の震度データを満足するように震源モデルの作成を行えば,歴史地震の再来を想定した被害予測などに適用することが可能となると考えられる. そこで本研究では,1703年元禄関東地震の実際の震度分布と整合するようなSPGAモデルを作成することを試みた.SPGAの位置,パラメータを,実際の震度と計算結果の震度の相関を見ながら選定した結果,概ね震度分布と整合するSPGAモデルを設定することができた.
著者
山田 真澄 羽田 浩二 山田 雅行 藤野 義範 福田 由惟
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.19, no.41, pp.357-362, 2013-02-20 (Released:2013-02-20)
参考文献数
31

We conducted a damage survey of wooden houses in Sakae village, Nagano prefecture, and Tsunan town in Niigata prefecture for the 2011 Northern Nagano earthquake. Percentages of totally-collapsed and partially-collapsed buildings in local districts are computed based on the observations. Using different criteria, local governments also conducted damage surveys for purposes of emergency response and recovery plans. We compared results from both types of surveys, and found that the damage percentages in each district were consistent. This indicates that the results of damage surveys conducted by local governments may be used as a complement to surveys carried out for research purposes.
著者
山田 真澄 山田 雅行 福田 由惟 スマイス クリスティン 藤野 義範 羽田 浩二
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1_20-1_30, 2012 (Released:2012-02-22)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

我々は、2011年長野県北部の地震(Mj6.7)の震源域で木造建物の全棟調査及び高密度の常時微動計測を行った。木造住家の全壊率は、長野県栄村の青倉地区と横倉地区で30%を超えており、観測記録の得られている森地区では10%以下であった。また、震源近傍で得られた地震観測記録と常時微動記録から青倉地区と森地区での強震時の地震動を推定した。推定された地震動は、地区の中の揺れやすさを反映することができ、その特徴的をとらえた分布を示した。推定した地震動(PGA, PGV)と木造建物被害率との相関は概ね良く、被害分布と矛盾しない地震動分布を推定できたことを示している。本研究で求められた被害率曲線では、150cm/sを境にして木造建物の倒壊率が急増し、倒壊率が半数を超える結果が得られた。
著者
山田 雅行 小田 義也
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1_59-1_76, 2018

<p>本論は日本の12の主要活断層帯を対象として,P波の減衰特性の推定と活断層の特性との関係を考察したものである.減衰特性の推定においては,活断層をまたぐ観測点ペアと遠方の地震に対して二重スペクトル比法を適用し,震源特性,活断層近傍までの伝播経路特性,そして,サイト増幅特性を除去した.推定された減衰特性は12の活断層でそれぞれ異なっていた.減衰特性の違いについて考察した結果,断層破砕帯の大きさとの相関は見られなかったが,その一方で,地震後経過率とは明瞭な正の相関を示した.このことは本論で推定した減衰特性が活断層の応力状態,すなわち地震発生の切迫度を反映している可能性が考えられる.</p>
著者
野津 厚 山田 雅行 長尾 毅
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.891-905, 2006 (Released:2006-10-20)
参考文献数
38

地下構造の情報が十分でなく,差分法等による地震動の評価が困難な地域において,周期数秒の帯域での強震動評価の精度向上を図ることは重要な課題である.本研究は,既往の研究で短周期地震動への適用性が示されている経験的サイト増幅・位相特性を考慮した強震動評価手法について,周期数秒の盆地生成表面波への適用性を検討したものである.まず,九州地方の強震観測点における経験的サイト増幅特性を評価し,これを利用して,1997年3月26日鹿児島県北西部地震に対し,同手法による強震動シミュレーションを実施した.その結果,カルデラ内で卓越する周期数秒の盆地生成表面波を良好に再現できることがわかり,周期数秒の帯域における強震動評価手法としての同手法の有用性を示すことができた.
著者
野津 厚 宮島 正悟 中西 豪 山田 雅行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.877-890, 2006 (Released:2006-10-20)
参考文献数
35

想定東海地震のような,陸地の極近傍で発生する海溝型の巨大地震による震源近傍の強震動については,強震記録が存在しないため,不明な点が多い.本研究では,経験的サイト増幅・位相特性を考慮した統計的グリーン関数法により,想定東海地震の震源近傍における強震動の評価を実施している.強震動の評価に必要なサイト増幅特性はスペクトルインバージョンにより推定し,2001年4月3日静岡県中部の地震(MJ5.3)の強震記録を利用して強震動評価手法の妥当性を検証した上で,想定東海地震に対する強震動評価を実施している.その結果,震源近傍における地震動はサイト増幅特性に大きく依存し,サイト増幅特性の特に大きい場所では,1995年兵庫県南部地震の観測波を上回る地震動も想定されることがわかった.