著者
渡辺 邦彦 岡本 拓夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

平成7年度〜平成9年度の3年間の研究成果の概要は下記の通りである。研究目的は、自然電位の観測でノイズとされる電車の漏洩電流を信号源と考え、電車軌道から約3kmの北陸観測所で漏洩電流波形を基準とし、それより約15km離れた池田観測室での観測波形を比較し、それによって両観測点間の歪場の変動を電磁気的に解析するものである。特に、地殻ブロック境界の観測点は、広域応力場の状況変化を強く反映すると考えられるので、時間的変動を解析することで、地殻歪の変動を測定することができる。研究成果:1.温見断層に着目し、福井県の北陸観測所坑内と池田観測室で地電位差観測を実施した。2.経年変動を解析した。北陸観測所坑内の自然電位分布は、湿潤度に依存する傾向が見られた。池田観測室では、温見断層に直交する方向と平行な方向に長基線と短基線の電極を配置した。断層に平行方向は地盤の状態により不安定であるが直交方向は安定した年周変動も測定された。地震活動との関連は今後の課題である。3.北陸観測所と池田観測室とで1秒毎サンプリングによる漏洩電流観測を実施した。池田での波形は北陸観測所の数分の1に振幅が減衰するが、波形変形はそれほどなかった。FFTによると、解析限界を超える周波数成分変化は認められなかった。今後、時間的変動と高周波成分までの解析を充実する予定である。4.特定の成分にのみ現れる漏洩電流と思われる特徴的波形を認めた。伝播方向や変電所と電車の位置関係の特定が必要である。特に池田の場合、出現する成分が断層に直交する成分のみであることから、地殻ブロックに関わる可能性が有る。
著者
岡本 拓夫 平野 憲雄 和田 博夫 西上 欽也 竹内 文朗 伊藤 潔
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報. B = Disaster Prevention Research Institute Annuals. B (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.B, pp.235-239, 2008-06-01

福井県は, 1948年に福井地震(M7.1)を被り, 近代における最初の都市直下型地震の震災を経験した県である。余震活動も顕著に認められていたが, 2003年末より直上で有感をもたらす地震の発生が, 余震域で認められなくなった。このことは, 福井地方気象台の報告書でもふれられている。同時に奥越を除く嶺北地域で, 地震の発生数の減少が指摘されている。2007年12月21日にM4.5が鯖江市東部付近に発生したが, 2004年10月5日のM4.8とは推定断層面が直交関係になっていることが確認できた。M3クラス以上は, 嶺北地域では奥越付近のみに限定され, 応力に揺らぎが発生している可能性を指摘できる。
著者
山本 博文 藤井 純子 安田 正成 岡本 拓夫 外岡 信一郎
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

若狭湾地域に位置する福井県高浜町薗部の海岸低地において,津波によって形成されたと考えられるイベント砂層が見出された.薗部地区におけるコアリングおよびトレンチ調査により,深さ1m以浅のイベント砂層は海岸から550m以上内陸まで分布し,海岸の砂と同様のよく円磨された岩片を特徴とし,ところによっては貝殻,有孔虫,ウニのトゲなどの生物遺骸を含んでいた.また砂層基底部には明瞭な浸食が認められ,砂層中にはリップアップクラストがみられた.この砂層の堆積年代としては,上下の泥炭質層の14C年代測定結果からすると,14~16 世紀頃と推定された.