著者
岡田 尚武 西 弘嗣 沢田 健 川幡 穂高 大河内 直彦 坂本 竜彦 鈴木 徳行 北里 洋
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

岡田尚武をリーダとする研究グループは,統合深海掘削計画(IODP)の先駆的研究として,平成11〜13年度の科学研究費補助金(課題番号11691113)でフランスプロバンス地方に露出するOAE1b層を研究し,エンジンカッターを用いて大型の柱状試料を採取すると共に,RosansのOAE1b最上部層準において試験的なボーリングを実施した。このボーリング試料に関する遺伝子学的解析の結果,地層中のバクテリア群集に関する興味深い新知見を得た(Inagaki, Okada et al., 2005)。フランスに於ける第2弾の国際学術研究となる本研究では,フランスの専門業者を雇ってOAE1aとOAE1bでの本格的ボーリングを実施し,極めて良質な連続コアを採取した。開封後にコアがバラバラになるのを防ぐため樹脂を用いてコア全体を保存する技術と,1mm間隔での試料採取のためのマイクロドリル法を新たに開発し,非破壊法での成分・構造分析に加えて,各種微古生物学的,有機化学的,無機化学的手法を駆使してOAE層の堆積メカニズムと古環境復元の研究を行ってきた。OAE1b層準全体から採取した地表試料の解析から,無酸素水塊が海洋表層まで達しなかった環境下での黒色頁岩と,表層まで到達して表層生物圏に大きな影響を与えた環境下での黒色頁岩のあることが分かった。また,Paquir層を鏡面研磨した結果,強い葉理が発達する部分,要理が擾乱されて不明瞭な部分,葉理のない部分,のセットが4回繰り返していることが分かった。1cm(約250年)間隔での分析結果では,ラミナの明瞭な部分では各種プランクトン,陸源性砕屑物,有機炭素含有量や黄鉄鉱が増加する一方で,底生有孔虫は多様性と個体数が減少する。これらのデータから,陸起源の栄養塩供給増加によって一次生産が増え,その結果として底層に無酸素環境が広がるという環境が4回発生したと考えられる。