著者
鈴木 徳行
出版者
The Sedimentological Society of Japan
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.44, pp.75-78, 1997-01-20 (Released:2010-05-27)
参考文献数
9
著者
田崎 和江 沢田 順弘 鈴木 徳行 飯泉 滋 高須 晃 石賀 裕明
出版者
島根大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1989

ODPの伊豆・小笠原弧の深海底掘削が行なわれた後,昨年度は,船上での成果を“Proceedings of the Ocean Drilling Program(Vol.126)"にまとめ公表した。それに次いで,今年度は,各研究者が専門的な立場で,より詳細な陸上での成果を“Scientific Volume"にまとめた。さらに,日本人の研究成果は,地学雑誌,月刊「海洋」,月刊「地球」に特集号を組み,日本語でも成果を発表した。研究代表者の田崎は,これらの報告書,雑誌にすべて論文を投稿し,当補助金により購入した電子顕微鏡をフルに活用し,3年間で40編の成果を得ることができた。伊豆・小笠原弧の深海底堆積物のうち,特に,火山砂,軽石に注目しXRD,SEM,TEM,FTーIR,マイクロESCA等の機器類により,鉱物組成を検討した。その結果,火山性堆積物の中に,有機物の存在を認めた。スメクタイト,沸石などの熱水変質鉱物の中に,グロ-コナイトやセラドナイトが共存し,その化学組成は,CH,CO,CーCCooHの化学結合を持つことが明らかとなった。今まで,グロ-コナイトの生因の一つに有機物が関与するという説があったが,今回の研究結果で,それが証明された。さらに特筆することは,この火山性堆積物の中に,多量のバクテリア化石を,電子顕微鏡で明らかにしたことである。200℃前後の熱水の循環があり,火山ガラスや造岩鉱物が変質する中にバクテリアが存在し,化石化して保存されていた事実は,深海底にブラックスモ-カ-が存在していたことを示唆している。さらに,グロ-コナイトの生成に,バクテリアが関与していることも暗示している。深海底における物質循環において,有機と無機の境界は不明りょうであり,両者の相互作用により有機炭素からグラファイトが生成される過程も,電子顕微鏡により追跡することができた。これらの研究成果は,国際誌chemical Greologyに投稿した。
著者
古野 毅 鈴木 徳行 渡辺 暉夫
出版者
島根大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

化石木の珪化過程と形成について組織構造的に研究を行い, 以下の研究成果を得た.1.珪化過程 有機物分析, SEM観察, EPMA分析, X線回析, 光学・偏光顕微鏡観察から化石木の珪化過程と形成を次のように考察できた.(1)細胞内膣中のシリカ鉱物の種類 まずオパールAが材木中に浸透して, オパールCTが沈澱する. その後地質条件により石英に移転する.(2)細胞壁へのシリカ鉱物の侵入と置換 シリカ鉱物の沈積は初めは細胞内膣のみであり, ある時期に壁にも侵入し, 壁物質として置換する. 最終的には壁物質のほとんど大部分がシリカと置換される.(3)細胞壁に残存する有機炭素 細胞壁の有機炭素の残存には有機物の保存性がよい場合と, 早い段階で壁のシリカ置換が進行し, 有機物が見られない場合がある. 前者でも時間の経過などにより次第に有機炭素は消失する.(4)細胞形態 壁のシリカ置換の進行, 有機炭素の減少とともに細胞の形態は徐々に失われていくが, 細胞の形状は痕跡として残る.(5)樹脂様物質の炭素残存 樹脂細胞・放射柔細胞に存在している樹脂様物質の炭素残存が非常によく, 炭素含有の高い物質として化石化している.2.珪化作用における樹脂様物質の役割 樹脂様物質かコハクと同様にC-C鎖式構造を基幹とした物質であり, 付随しているカルボキシル基とフェノール性OH基が周囲のpHを低下させ, 木材中に侵入したシリカ鉱物はその周辺で沈澱しやすくなり, 周囲の壁のシリカ置換を促進させる効果があることや, 豊富なアルキル構造の疎水性により保存性がよいことがわかった.3.珪化木の人工合成 ヒノキー珪酸溶液の反応系に数ヶ月浸漬すると, 仮道管や放射柔細胞の木材細胞中に長い角柱状あるいは円柱状のシリカ鉱物が形成された.
著者
岡田 尚武 西 弘嗣 沢田 健 川幡 穂高 大河内 直彦 坂本 竜彦 鈴木 徳行 北里 洋
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

岡田尚武をリーダとする研究グループは,統合深海掘削計画(IODP)の先駆的研究として,平成11〜13年度の科学研究費補助金(課題番号11691113)でフランスプロバンス地方に露出するOAE1b層を研究し,エンジンカッターを用いて大型の柱状試料を採取すると共に,RosansのOAE1b最上部層準において試験的なボーリングを実施した。このボーリング試料に関する遺伝子学的解析の結果,地層中のバクテリア群集に関する興味深い新知見を得た(Inagaki, Okada et al., 2005)。フランスに於ける第2弾の国際学術研究となる本研究では,フランスの専門業者を雇ってOAE1aとOAE1bでの本格的ボーリングを実施し,極めて良質な連続コアを採取した。開封後にコアがバラバラになるのを防ぐため樹脂を用いてコア全体を保存する技術と,1mm間隔での試料採取のためのマイクロドリル法を新たに開発し,非破壊法での成分・構造分析に加えて,各種微古生物学的,有機化学的,無機化学的手法を駆使してOAE層の堆積メカニズムと古環境復元の研究を行ってきた。OAE1b層準全体から採取した地表試料の解析から,無酸素水塊が海洋表層まで達しなかった環境下での黒色頁岩と,表層まで到達して表層生物圏に大きな影響を与えた環境下での黒色頁岩のあることが分かった。また,Paquir層を鏡面研磨した結果,強い葉理が発達する部分,要理が擾乱されて不明瞭な部分,葉理のない部分,のセットが4回繰り返していることが分かった。1cm(約250年)間隔での分析結果では,ラミナの明瞭な部分では各種プランクトン,陸源性砕屑物,有機炭素含有量や黄鉄鉱が増加する一方で,底生有孔虫は多様性と個体数が減少する。これらのデータから,陸起源の栄養塩供給増加によって一次生産が増え,その結果として底層に無酸素環境が広がるという環境が4回発生したと考えられる。