著者
宮崎 さおり 松本 友希 岡田 知佳 岸田 太郎 西岡 信治 三好 規子 友岡 清秀 谷川 武 斉藤 功 丸山 広達
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.93-101, 2021 (Released:2021-04-14)
参考文献数
38
被引用文献数
1

本研究では, トランス脂肪酸摂取量を推定するための食品成分表を作成することを目的とした。さらにこの成分表を用い, 実際の摂取食品についてトランス脂肪酸量を推定し得るか, 食事記録調査結果を対象に確認を行った。23文献に報告のある280食品のトランス脂肪酸量は平均値を求め, 食品成分表記載の各食品の脂質を乗じ可食部100 g当たりに含まれるトランス脂肪酸量を算出した。文献に報告のない食品の内, 312食品は置き換え法にて対応, 計592食品のトランス脂肪酸含有量を決定した。その食品成分表を用い, 糖尿病境界型の男女35名が実施した食事記録から1日平均のトランス脂肪酸摂取量を算出した。本対象集団が摂取していた可食部100 g当たりの脂質量が1 g以上の食品延べ4,539食品の内, 4,535食品 (99.9%) のトランス脂肪酸量が算出し得, 1日当たりの平均トランス脂肪酸摂取量は0.66 g (エネルギー比率: 0.33%) であった。本成分表は, 置き換え法による食品数の占める割合が高いこと等の限界に留意する必要があるものの, 多数の食品に対して数値を求めていることから, 異なる日本人集団や食事記録以外の食事調査法での応用も可能なものと考える。
著者
青山 友子 苑 暁藝 松本 麻衣 岡田 恵美子 岡田 知佳 瀧本 秀美
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.23-020, (Released:2023-09-05)
参考文献数
31

目的 集団における肥満ややせをモニタリングするために,疫学調査ではしばしば自己申告による身体計測値が用いられる。自己申告された身長と体重からBMI (body mass index)を求めると,集団における肥満(BMI≧25 kg/m2)の割合を過小評価することが知られている一方,やせ(BMI<18.5 kg/m2)の割合がどのように評価されるのかはよく理解されていない。そこで本研究では,肥満とやせの問題が共存する日本人において,自己申告による身体計測値の正確さに関するスコーピングレビューを行うことを目的とした。方法 PubMedとCiNii Researchを用いて,2022年までに英語または日本語で出版された文献を検索し,日本国内で行われた身長・体重・BMIの自己申告値と実測値を比較した研究を採用した。各研究より,研究デザインおよびmean reported errors(平均申告誤差=申告値の平均-実測値の平均)を抽出して表に整理した。また,BMIカテゴリによる違いも考慮した。結果 全国的なコホート研究(n=4),地域住民(n=4),職場(n=3),教育機関(n=6)において実施された計17編の文献(英語11編)が本レビューに含まれた。対象者の年齢(10~91歳)およびサンプルサイズ(100人未満~3万人以上)には多様性がみられた。観測された平均申告誤差の程度は研究によって異なったものの,大半の研究で身長は過大申告,体重は過小申告,BMIは過小評価された。BMIカテゴリ別の平均申告誤差を報告した3つの研究では,身長の申告誤差の方向性はすべての体格区分で変わらないものの,体重およびBMIはやせの区分のみで過大申告(評価)された。成人を対象とした4つの研究は,自己申告身長・体重に基づいたBMIを用いると,肥満の14.2~37.6%,やせの11.1~32.3%が普通体重(18.5≦BMI<25 kg/m2)に誤分類され,普通体重の0.8~5.4%および1.2~4.1%が,それぞれやせおよび肥満に誤分類されることを示した。結論 自己申告による身長と体重に基づくBMIを用いると,日本人では集団における肥満とやせ両方の有病率を過小評価する可能性がある。自己申告による身体計測値を疫学調査に用いる際は,こうしたバイアスの存在を考慮する必要がある。
著者
越田 詠美子 岡田 知佳 岡田 恵美子 松本 麻衣 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.14-26, 2021-02-01 (Released:2021-04-05)
参考文献数
67

【目的】本研究は,今後の日本での食事摂取基準の策定における参考資料となるよう,日本と諸外国の策定状況とその活用目的を比較検討することを目的とした。【方法】食事摂取基準に関する情報は,各国の策定機関のホームページ等から収集した。調査対象国は日本,アメリカ/カナダ,イギリス,オーストラリア/ニュージーランド,European Unionとし,調査項目は,策定機関,改定の周期と対象,摂取量の指標,基準値が策定されている栄養素,活用目的とした。【結果】食事摂取基準は,各国の政府や公的機関等が主導して策定をしていた。改定の周期は,日本は全栄養素を対象に5年ごと,日本以外の国は栄養素ごとに,必要に応じて不定期に行っていた。摂取量の指標は,日本とおおよそ同様の指標が諸外国でも用いられており,さらに,イギリスでは推定平均必要量から2標準偏差を差し引いた値である下限栄養素摂取基準値も定められていた。基準値が策定されている栄養素数は,アメリカ/カナダが最多であった。活用目的は各国共通で,栄養・食事管理,栄養指導,食事ガイドライン/フードガイドの策定,栄養表示に用いられていた。その他,日本以外のすべての国で軍隊に対する活用がされていた。【結論】本研究により日本と諸外国における食事摂取基準の相違点が明らかとなり,今後の日本での策定において参考になるとともに,日本の課題も浮き彫りとなった。
著者
松本 麻衣 岡田 知佳 岡田 恵美子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.121-130, 2020-06-01 (Released:2020-07-17)
参考文献数
22

【目的】都道府県健康増進計画は健康増進法に基づき定められている。2018年に健康日本21(第二次)の中間評価が実施され,結果が公表された。しかし,都道府県の健康増進計画の目標項目及び中間評価の状況については不明である。そこで,各都道府県の健康増進計画の目標設定状況,中間評価の結果,中間評価後の目標設定状況についてまとめることとした。【方法】各都道府県の健康増進計画及びその中間評価に関する情報は,各自治体のホームページから,2019年5月31日までに公表されている情報を入手した。【結果】42都道府県において中間評価の結果が公表されていた。健康日本21(第二次)で設定されている項目の中で「食塩摂取量の減少」,「野菜と果物摂取量の増加」,「睡眠による休養を十分にとれていない者の割合の減少」,「成人の喫煙率の減少」の4項目は,全都道府県で設定されていた。また,44都道府県で独自の目標項目を設定していた。中間評価において,健康日本21(第二次)で設定されている目標項目のうち半数以上の都道府県で改善がみられた項目数は24項目であった。また,中間評価後に目標設定を変更していない都道府県が多かった。【結論】各都道府県において,現状及び実現可能性を踏まえた上で,計画を実施し取り組んでいた。今後も,都道府県ごとに課題に対する目標項目の設定及び目標値達成に向けたモニタリングが実施されることが期待される。
著者
越田 詠美子 岡田 知佳 岡田 恵美子 松本 麻衣 村井 詩子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.183-192, 2019-12-01 (Released:2020-02-06)
参考文献数
45
被引用文献数
3

【目的】国民の食品・栄養素等摂取状況を把握するため,日本で実施されている国民健康・栄養調査と,諸外国における同様の調査とを比較・検討することを目的とした。【方法】栄養調査に関する情報は,オーストラリア,ブラジル,カナダ,中国,フィンランド,ドイツ,日本,韓国,ロシア,イギリス,アメリカの11か国について,各国の調査担当機関のホームページ等から収集した。【結果】調査の実施機関の多くは,主に自国の機関であったが,他国と共同で実施している国もみられた。世帯を対象としている国と,個人を対象としている国が約半々であった。対象年齢は,子どもと成人の両方を設定している国がほとんどであった。日本では,厚生労働省が健康増進法に基づき,調査地区を管轄する自治体に調査を委託しているが,諸外国では実施機関の職員等が担当していた。食物摂取状況調査は,11か国中8か国が24時間思い出し法を用いており,5か国が単独の調査法のみではなく,複数の調査法を組み合わせて行っていた。実施頻度は,継続的,定期的(毎年から数年に一度)または不定期であり,時期・期間は,通年の場合と一時点の場合とがあった。調査データの二次利用に際しては,申請を要する国,一部データのみ申請を要する国,申請不要な国があった。【結論】諸外国の栄養調査は,実施体制や方法等が多様であり,今後の日本での調査の実施において,参考になると考えられた。