著者
青山 友子 苑 暁藝 松本 麻衣 岡田 恵美子 岡田 知佳 瀧本 秀美
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.23-020, (Released:2023-09-05)
参考文献数
31

目的 集団における肥満ややせをモニタリングするために,疫学調査ではしばしば自己申告による身体計測値が用いられる。自己申告された身長と体重からBMI (body mass index)を求めると,集団における肥満(BMI≧25 kg/m2)の割合を過小評価することが知られている一方,やせ(BMI<18.5 kg/m2)の割合がどのように評価されるのかはよく理解されていない。そこで本研究では,肥満とやせの問題が共存する日本人において,自己申告による身体計測値の正確さに関するスコーピングレビューを行うことを目的とした。方法 PubMedとCiNii Researchを用いて,2022年までに英語または日本語で出版された文献を検索し,日本国内で行われた身長・体重・BMIの自己申告値と実測値を比較した研究を採用した。各研究より,研究デザインおよびmean reported errors(平均申告誤差=申告値の平均-実測値の平均)を抽出して表に整理した。また,BMIカテゴリによる違いも考慮した。結果 全国的なコホート研究(n=4),地域住民(n=4),職場(n=3),教育機関(n=6)において実施された計17編の文献(英語11編)が本レビューに含まれた。対象者の年齢(10~91歳)およびサンプルサイズ(100人未満~3万人以上)には多様性がみられた。観測された平均申告誤差の程度は研究によって異なったものの,大半の研究で身長は過大申告,体重は過小申告,BMIは過小評価された。BMIカテゴリ別の平均申告誤差を報告した3つの研究では,身長の申告誤差の方向性はすべての体格区分で変わらないものの,体重およびBMIはやせの区分のみで過大申告(評価)された。成人を対象とした4つの研究は,自己申告身長・体重に基づいたBMIを用いると,肥満の14.2~37.6%,やせの11.1~32.3%が普通体重(18.5≦BMI<25 kg/m2)に誤分類され,普通体重の0.8~5.4%および1.2~4.1%が,それぞれやせおよび肥満に誤分類されることを示した。結論 自己申告による身長と体重に基づくBMIを用いると,日本人では集団における肥満とやせ両方の有病率を過小評価する可能性がある。自己申告による身体計測値を疫学調査に用いる際は,こうしたバイアスの存在を考慮する必要がある。
著者
岸 知子 岡田 恵美子 佐藤 敦子 石川 雅子 鵜川 重和 中村 幸志 玉腰 暁子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.210-222, 2018 (Released:2018-05-29)
参考文献数
32

目的 北海道は面積が広く,地域により自然環境,主要産業が多様であることから社会経済状況の影響を受ける生活習慣ならびに生活習慣病による死亡率の地域差が大きい可能性がある。本研究は,北海道の地域間における健康格差縮小に取り組む際の資料を得ることを目的とし,北海道の二次医療圏を単位として,死亡率と栄養摂取状況の地域差の実態と,それらの関連を検討した。方法 本研究は生態学的研究である。死亡に関する情報の把握には,北海道保健統計年報ならびに北海道内の二次医療圏を単位として作成されている地域保健情報年報を用いた。平成17年~21年のデータから北海道全体と,各二次医療圏の標準化死亡比(SMR)の5年平均値を算出した。栄養素摂取量の把握には,平成16年度健康づくり道民調査のデータを用いた。二次医療圏の死亡率と栄養素摂取量の関連は,Spearmanの相関係数を用いて検討した。結果 死亡率は道南,道東の沿岸部で高く,道北地域の内陸部,十勝地域で低い傾向にあった。また,二次医療圏間の栄養素摂取量における最大値と最小値の差に関しては,エネルギーは400 kcal~500 kcal,たんぱく質は20 g~30 g,食塩は4 g~5 g,緑黄色野菜は60 g,淡色野菜は100 gであった。死亡率と栄養素摂取量の関連については,女性でのみ悪性新生物死亡と脂質摂取量,牛乳・乳製品摂取量の間に正の関連,悪性新生物死亡と米の摂取量の間,心疾患死亡と大豆・大豆製品摂取量の間に負の関連が認められた。結論 北海道の二次医療圏間における死亡率および栄養素摂取量の地域差の実態が明らかになった。また,女性でのみ死亡率と栄養摂取量との間に関連が認められた。今後は,地域の健康指標,生活習慣に関する情報に加え,社会経済環境に関する情報も含めて地域差の要因について検討することが課題であると考える。
著者
越田 詠美子 岡田 知佳 岡田 恵美子 松本 麻衣 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.14-26, 2021-02-01 (Released:2021-04-05)
参考文献数
67

【目的】本研究は,今後の日本での食事摂取基準の策定における参考資料となるよう,日本と諸外国の策定状況とその活用目的を比較検討することを目的とした。【方法】食事摂取基準に関する情報は,各国の策定機関のホームページ等から収集した。調査対象国は日本,アメリカ/カナダ,イギリス,オーストラリア/ニュージーランド,European Unionとし,調査項目は,策定機関,改定の周期と対象,摂取量の指標,基準値が策定されている栄養素,活用目的とした。【結果】食事摂取基準は,各国の政府や公的機関等が主導して策定をしていた。改定の周期は,日本は全栄養素を対象に5年ごと,日本以外の国は栄養素ごとに,必要に応じて不定期に行っていた。摂取量の指標は,日本とおおよそ同様の指標が諸外国でも用いられており,さらに,イギリスでは推定平均必要量から2標準偏差を差し引いた値である下限栄養素摂取基準値も定められていた。基準値が策定されている栄養素数は,アメリカ/カナダが最多であった。活用目的は各国共通で,栄養・食事管理,栄養指導,食事ガイドライン/フードガイドの策定,栄養表示に用いられていた。その他,日本以外のすべての国で軍隊に対する活用がされていた。【結論】本研究により日本と諸外国における食事摂取基準の相違点が明らかとなり,今後の日本での策定において参考になるとともに,日本の課題も浮き彫りとなった。
著者
横山 友里 吉﨑 貴大 多田 由紀 岡田 恵美子 竹林 純 瀧本 秀美 石見 佳子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.162-173, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
48

【目的】食品の栄養価を総合的に判断できるよう,特定の栄養素等の含有量で食品を区分またはランク付けする「栄養プロファイルモデル(以下,NPモデル)」が諸外国の栄養政策で活用されている。本研究では,諸外国のNPモデルを調査し,日本版NPモデル策定のための基礎資料の作成および課題整理を行うことを目的とした。【方法】第41回コーデックス委員会栄養・特殊用途食品部会の議題「NPモデル策定のための一般ガイドライン」で共有された既存のNPモデル(97件)の一覧表を用い,対象モデルを抽出した。【結果】採択条件に該当しないモデル(計75件)を除き,調査対象のモデル22件の開発国の内訳は,中南米(1件),北米(5件),欧州(5件),中東(1件),大洋州(2件),アジア(6件),国際機関(WHOの地域事務所)(2件)であった。食品の包装前面の表示(11件),ヘルスクレーム付与に対する制限(5件)を目的としたモデルは一般集団が対象であり,広告規制を目的としたモデル(6件)は子供が対象であった。モデルタイプは閾値モデルが16件,スコアリングモデルが5件,混合モデルが1件で,多くのモデルで摂取を制限すべき栄養素等として,熱量,脂質,飽和脂肪酸,トランス脂肪酸,糖類,ナトリウムを設定していた。【結論】日本版NPモデルの策定にむけた検討課題として,対象栄養素,食品のカテゴリー分類,モデルタイプの設定等が示された。
著者
岡田 恵美子
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.129-145,216, 1967
被引用文献数
1

Nizam-al-Din 'Ubaid Allah Zakani may be regarded as the most remarkable parodist and satirist produced by Persia in the fourteenth century, during which Sufism played an important role in the Persian literature.<br>'Ubaid-e-Zakani, who was born in Qazvin, lived at Shiraz in the reign of Abu Ishaq Inju.<br>His most celebrated satiric poem is &ldquo;Mush wa Gorbe&rdquo;, which means &ldquo;Rats and Cats&rdquo;, and his work should be estimated from the point of its characteristics in the Persian literature.
著者
石見 佳子 竹林 純 横山 友里 吉﨑 貴大 多田 由紀 岡田 恵美子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.79-95, 2022-04-01 (Released:2022-05-24)
参考文献数
49

【目的】人びとが健康な食生活を営むためには,適切な食品の選択が求められる。諸外国では消費者が食品の栄養価を総合的に判断できるよう,特定の栄養素等の含有量で食品をランク付けする「栄養プロファイルモデル」が活用されているが,我が国においては策定されていない。そこで本研究では,加工食品について,日本版栄養プロファイルモデル試案を作成することを目的とした。【方法】WHO Technical meeting 2010報告書,WHO健康な食生活のための食品の包装前面表示ガイドライン及び諸外国のモデルを参考とし,国民健康・栄養調査,日本人の食事摂取基準(2020年版),日本食品標準成分表2015年版(七訂),日経POSデータ等を根拠資料として用いて,加工食品の日本版栄養プロファイルモデル試案を作成し,妥当性を検討した。【結果】①日本の公衆栄養の観点から,対象を18歳以上,対象項目を脂質,飽和脂肪酸,ナトリウム(食塩相当量)及び熱量とした。②日本版栄養プロファイルモデルとしてカテゴリー特異的モデルを選択した。対象食品を調理済み加工食品を含む加工食品とし,一般加工食品は国民健康・栄養調査食品群別表の中分類を基に15カテゴリーに分類した。③対象項目の閾値基準を設定し,各食品カテゴリーについて閾値を設定した。【結論】日本の公衆栄養の状況に応じた日本版栄養プロファイルモデル試案を作成した。
著者
松本 麻衣 岡田 知佳 岡田 恵美子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.121-130, 2020-06-01 (Released:2020-07-17)
参考文献数
22

【目的】都道府県健康増進計画は健康増進法に基づき定められている。2018年に健康日本21(第二次)の中間評価が実施され,結果が公表された。しかし,都道府県の健康増進計画の目標項目及び中間評価の状況については不明である。そこで,各都道府県の健康増進計画の目標設定状況,中間評価の結果,中間評価後の目標設定状況についてまとめることとした。【方法】各都道府県の健康増進計画及びその中間評価に関する情報は,各自治体のホームページから,2019年5月31日までに公表されている情報を入手した。【結果】42都道府県において中間評価の結果が公表されていた。健康日本21(第二次)で設定されている項目の中で「食塩摂取量の減少」,「野菜と果物摂取量の増加」,「睡眠による休養を十分にとれていない者の割合の減少」,「成人の喫煙率の減少」の4項目は,全都道府県で設定されていた。また,44都道府県で独自の目標項目を設定していた。中間評価において,健康日本21(第二次)で設定されている目標項目のうち半数以上の都道府県で改善がみられた項目数は24項目であった。また,中間評価後に目標設定を変更していない都道府県が多かった。【結論】各都道府県において,現状及び実現可能性を踏まえた上で,計画を実施し取り組んでいた。今後も,都道府県ごとに課題に対する目標項目の設定及び目標値達成に向けたモニタリングが実施されることが期待される。
著者
越田 詠美子 岡田 知佳 岡田 恵美子 松本 麻衣 村井 詩子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.183-192, 2019-12-01 (Released:2020-02-06)
参考文献数
45
被引用文献数
3

【目的】国民の食品・栄養素等摂取状況を把握するため,日本で実施されている国民健康・栄養調査と,諸外国における同様の調査とを比較・検討することを目的とした。【方法】栄養調査に関する情報は,オーストラリア,ブラジル,カナダ,中国,フィンランド,ドイツ,日本,韓国,ロシア,イギリス,アメリカの11か国について,各国の調査担当機関のホームページ等から収集した。【結果】調査の実施機関の多くは,主に自国の機関であったが,他国と共同で実施している国もみられた。世帯を対象としている国と,個人を対象としている国が約半々であった。対象年齢は,子どもと成人の両方を設定している国がほとんどであった。日本では,厚生労働省が健康増進法に基づき,調査地区を管轄する自治体に調査を委託しているが,諸外国では実施機関の職員等が担当していた。食物摂取状況調査は,11か国中8か国が24時間思い出し法を用いており,5か国が単独の調査法のみではなく,複数の調査法を組み合わせて行っていた。実施頻度は,継続的,定期的(毎年から数年に一度)または不定期であり,時期・期間は,通年の場合と一時点の場合とがあった。調査データの二次利用に際しては,申請を要する国,一部データのみ申請を要する国,申請不要な国があった。【結論】諸外国の栄養調査は,実施体制や方法等が多様であり,今後の日本での調査の実施において,参考になると考えられた。
著者
岡田 恵美子
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1-2, pp.151-166,A196, 1970 (Released:2010-03-12)
参考文献数
10

The romantic epic, “Vis u Ramin” was composed by Fakhr al-din As'ad Gurgani in the eleventh Christian century. On account of the following three aspects, this epic may be ranked as one of the most valuable works in Persian literature:(1) Being the earliest romantic epic extant, the work must have influenced on Persian literature to follow after it, to a great extent.(2) It is said that Fakhr al-din As'ad Gurgani versified in Persian from the basis of the story then existed in Pahlavi (a some earlier form of Pahlavi). The process, therefore, presents important materials to the field of philology as well.(3) The story “Vis u Ramin” is considered as a work of the Arsacid dynasty.With regard to the last two aspects, it should be best a for us to examine what the author-himself describes about them in his own epic.