著者
武内 謙治
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.68-83, 2015

近時の少年司法・矯正改革の特徴としてみられるのは,(1)非行を「社会病理」ととらえる視点の退行,(2)人間行動科学領域の専門知の退行・萎縮,そして(3)(立法の場における)(とりわけ裁判)実務家からポジティブな実務経験が語られることの乏しさ,という現象である.本稿は,非行を社会病理ととらえる視点が,保護処分の処遇上の有効性を正面から問題にする思考や,非行の問題を社会として引き受けることとつながってきたこと,特に結果重大事件における専門知の用い方が悪循環を来していること,(裁判)実務家からポジティブな経験が語られることが少なくなっていることが,「適正」という言葉の理解に反映しており,少年法適用年齢の問題もこれと無関係ではないこと,しかしながら,この傾向を推し進めることは,理念的には,個の尊重や自立的な非行の克服への信頼の軽視ないしは否定を,実際上はケースワークの退行を帰結することを指摘する.それを踏まえて,問題状況を好転させる契機が今次の少年司法・矯正改革に内在しているかを問い,その枠を超えたより抜本改革として,参審制による審判への民衆参加制度を採用する必要性と可能性について論じる.
著者
武内 謙治
出版者
日本刑法学会
雑誌
刑法雑誌 (ISSN:00220191)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.511-514, 2009-04-01 (Released:2020-11-05)
著者
土井 政和 岡田 行雄 正木 祐史 渕野 貴生 井上 宜裕 武内 謙治 金澤 真理 佐々木 光明
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、(1)社会内処遇について理論的実証的検討を行い、(2)更生保護基本法要網試案を作成することであった。目的(1)との関連では、前年度までの研究の成果として刑事立法研究会編『更生保護制度改革のゆくえ-犯罪をした人の社会復帰のために』(現代人文社・2007年5月)を公表した。いくつかの事件をきっかけに誕生した「更生保護の在り方を考える有識者会議」の提言は、傾聴すべき改善案を含む一方で、監視強化の方向性をも内包したものであった。その方向性は更生保護法にも引き継がれている。それは、指導監督と補導援護を統合し、援助とケースワークを基本に実施してきた従来の実務動向とは逆行するものと評価できよう。本書では、そこに欠けている歴史的視点や一貫した社会的援助の理念、保護観察対象者の法的地位及び国際準則等について分析検討を行った。これらの成果を生かす形で、更生保護立法に対する働きかけも継続的に行った。参議院法務委員会参考人意見陳述(6月5日):土井政和「更生保護法案についての意見」、更生保護法案審議中の参議院法務委員会等に対する「更生保護法案についての意見」提出(2007年5月4日)、「『仮釈放,仮出場及び仮退院並びに保護観察等に関する規則の一部を改正する省令案』に関する意見募集」(法務省:案件番号300110003)に対する意見書提出(2007年9月4日)、「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則の制定について(意見募集)」(法務省:案件番号300110006)に対する意見書提出(2008年3月10日)がこれである。目的(2)の達成のため、最終年度における研究会の過半を費やして、要綱試案策定に力を注いだ。その成果は、現在取りまとめ中であるが、龍谷大学矯正・保護研究センター2007年度研究年報に掲載の予定(8月刊行予定)である。
著者
武内 謙治
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、少年司法における「未決」段階の身体拘束に関する刑事政策上・国際人権法上の関心が高まるなか、現在それが果たしている機能とあるべき像を探ることを目的とした。本研究に取り組む中で公表した論文・学会報告・図書では、国際人権法上指摘されてきた日本の問題点は近時なお深まりを見せていること、それを解決するためのひとつの法策には国選付添人制度の拡充があることを示した。