著者
岡野 雅子
出版者
群馬女子短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

今日、社会機構の分化は極めて進み金銭を媒介として必要なモノ・情報・サ-ビスなどを手に入れて我々の生活は運営されている。このような中で育つ子どもたちは、金銭について及びそれに代表される社会機構についての認識をどのように発達させていくのだろうか。それを明らかにして、消費者教育のための基礎的資料としたい。研究I・「お金」に対する感じ方・捉え方については、幼稚園年長児・小学2年生・小学5年生・中学2年生・高校2年生の計1105名を対象に質問紙調査(幼児には面接調査)を行った。その結果、『お金』や『お金持ち』の刺激語に対して「欲しい」「いいな」などの羨望を伴うプラスの情緒反応が多く、小学生及び郡部でその傾向が強い。中・高生になると、「けち」「欲張り」などのマイナスの情緒反応も示し始める。『お金で買えないもの』に対しては「いのち・人間」の回答も最も多く、中2で「友人」高2で「愛・こころ」も多い。幼児は具体的なモノの回答が多い。職業選択の理由は「もうかるから」はどの発達段階にも見られ差がないが、男子に多い。研究II・子どもの消費者意識については、小2・小5・中2・高2の計971名を対象に調査を行った。「お金を得るためには働くことが必要」「自分のやりたい仕事につきたい」「コマ-シャルで視たものを買う」「無駄使いをしてはいけない」「人が持っているものが気になる」は小学生ほど多い。研究III・学庭教育の関連については、幼児とその母親の102組及び小学3年生とその母親の122組を対象に調査を行った。概して子どもと母親の間にはかなりの認識のズレがあり、「お金は働いて得たものと話してくれる」「お母さんは『もったいない』と言う」では、母親はそうしていると思っていても子どもは必ずしも受信していないようである。それぞれの母ー子をペアにして回答の相関を見ると、ほとんど有意な相関は見い出せない。
著者
岡野 雅子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第45回日本家庭科教育学会大会
巻号頁・発行日
pp.20, 2002 (Released:2003-04-02)

【目的】中学·高校の『学習指導要領』の保育領域には乳幼児等とのふれあいや交流の機会を持つように努めることが明記され、生徒が幼稚園や保育所で保育体験学習を行う例が増えている。本研究は受け入れ園側から見た課題について検討し、体験学習をより実り多いものにするための示唆を得たい。【方法】群馬県T市とM市にある幼稚園48園および保育園(所)79園に調査質問紙を配布し、32幼稚園(公立6, 私立25, 不明1)と64保育園(公立30, 私立34)の計96園(所)より回収した(回収率75.6%)。調査時期は平成13年3月である。【結果と考察】(1)93.8%の園は受け入れ経験があり、92.7%は中学生の受け入れ経験がある。体験学習の内容は「一緒に遊ぶ」「世話をする」7-8割、「施設を見学」「一緒に給食を食べる」5割弱等が多い。(2)教育効果として「子どもを好きになる」が最多で「保育の重要性を理解する」「自分自身について考える」「子どもの発達を理解する」と続き、「親の役割を理解する」は相対的に少ない。(3)問題点として「観点やマナーを指導して」「生徒の意識や態度の変化を見て」「協力体制を整える必要」が多く、「迷惑だ」は少ない。(4)生徒は「幼児とのふれあいを楽しんでいる」、幼児は「喜んでいる」が圧倒的に多いが、その程度が強い程「子どもを好きになる」「自分自身について考える」「親の役割を理解する」も高率である。(5)したがって、生徒の幼児に対する親和性の形成は認められるものの、親準備性の獲得に向けては、なお一層の検討すべき余地があるようである。
著者
岡野 雅子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b><b>目的 </b></b> 近年、ニ-ト・フリ-タ-が増えているが、職業観の形成過程の検討は年齢をさかのぼる必要があると指摘されている。職業認知は小学生期にできるとされるが、本研究はその前段階の幼児のしごと観を探り、将来のしごとについて家族と話しているかについて明らかにした。<br><b>方法</b> 北関東T市の幼稚園・保育所の5歳児の保護者を対象に質問紙調査を行い、回答のあった保護者の子どもと面接調査を行った。親子の回答が揃った64組(男児31、女児33)を資料とした。調査時期は平成26年7月(質問紙調査)、11月(面接調査)。<br><b><b>結果と考察 (1)</b></b>子ども回答は、男児はスポ-ツ選手45.8%、警察官16.7%が多く、女児はケ-キ屋(パン屋アイス屋)41.9%、幼稚園保育所の先生19.4%が多い。男女ともキャラクタ-やアイドルもあり、未定・無回答は14.1%である。子は回答1つが85.6%、未定・無答14.1%で、親は回答1つが68.8%、複数回答25%、未定6.3%である。親子で回答の一致は64組中34組(53.1%)で、女児の親子の方が、親が若年層の方が、一致率は高い傾向にある(p<.1)<b>。<b>(2)</b></b>親子で話し合うかは「よく話す」子回答8.1%、親回答45.3%、「話したことはない」子回答21%、親回答3.1%で、親子間に認識の隔たりが認められ、複数回答の親は親子の回答一致率は高く(p<0.01)、親が若年層の方が子回答で「話し合う」率が高い(p<0.05<b>)。<b>(3)</b></b>子どもは本来未来指向性をもち大人になることは期待をもって想い描く事柄と言えるが、今日の家庭生活では「よく話す」と答える子どもは1割弱で、親回答も半数に満たない。現代の生活状況は子どもの将来像を想い描くことが難しい背景があると考えられるのではなかろうか。
著者
岡野 雅子
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.435-444, 1996-05-15
参考文献数
7
被引用文献数
1

The purpose of this study is to discuss how children perceive their families and home lives, where they were born and where they have been brought up Observations of their make-believe plays were made: 1) Mother's role was the main one while they played house in the day nursery, while father's role was supplementary. Mother in their play prepared meals, took care of baby and did shopping. In other words, the family and home life portrayed were not largely different from those conventionally portrayed in the past. 2)Children in the children's home I observed interacted less with each other, only few playing house. Each child's symbolic play portrayed the acts of eating, sleeping and taking care of baby. I heard little references to their family relations. 3) It is easy for children to recognize the acts of eating, sleeping and taking care of baby in their daily life. However, the child's view differs between those children in the day nursery and those in the children's home. The former enact family and human relations while the latter portray independent acts not related to one another. 4) Children in the children's home seem not to have developed the abstract images The family and home life are important in developing a child's abstract concepts, which, in turn, influence him/her in forming good relationships with others.