著者
森 大地 板木 雅俊 岩佐 恭平 大濱 慎一郎 北川 知佳 田中 貴子 池内 智之 河野 哲也 津田 徹 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.305-310, 2023-08-31 (Released:2023-08-31)
参考文献数
19

【目的】慢性呼吸器疾患患者の要介護度は過小評価される傾向にあり,患者の不満が多いと報告されている.今回,認定結果に対する不満の有無とその関連因子について検討した.【方法】通所リハビリテーションを利用する慢性呼吸器疾患患者を対象とした.認定結果への不満の有無で2群に分け,比較検討を行った.患者特性,身体機能,ADL(BI,NRADL),呼吸困難,呼吸機能,心理状態を調査・解析し,不満の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.【結果】解析対象は31例で,不満なし群(21例),不満あり群(10例)であった.ロジスティック回帰分析の結果,NRADL(オッズ比0.914,95%CI 0.852-0.980)が不満の有無と有意な関連を認めた.【結論】認定結果への不満にはNRADLが関連しており,NRADLの点数を考慮することで,要介護度の過小評価を是正できる可能性が示唆された.
著者
森 大地 板木 雅俊 岩佐 恭平 大濱 慎一郎 北川 知佳 田中 貴子 池内 智之 河野 哲也 津田 徹 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
pp.22-01, (Released:2023-03-29)

【目的】慢性呼吸器疾患患者の要介護度は過小評価される傾向にあり,患者の不満が多いと報告されている.今回,認定結果に対する不満の有無とその関連因子について検討した.【方法】通所リハビリテーションを利用する慢性呼吸器疾患患者を対象とした.認定結果への不満の有無で2群に分け,比較検討を行った.患者特性,身体機能,ADL(BI,NRADL),呼吸困難,呼吸機能,心理状態を調査・解析し,不満の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.【結果】解析対象は31例で,不満なし群(21例),不満あり群(10例)であった.ロジスティック回帰分析の結果,NRADL(オッズ比0.914,95%CI 0.852 - 0.980)が不満の有無と有意な関連を認めた.【結論】認定結果への不満にはNRADLが関連しており,NRADLの点数を考慮することで,要介護度の過小評価を是正できる可能性が示唆された.
著者
坂本 淳哉 片岡 英樹 吉田 奈央 山口 紗智 西川 正悟 村上 正寛 中川 勇樹 鵜殿 紀子 渋谷 美帆子 岩佐 恭平 濱崎 忍 三村 国秀 山下 潤一郎 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C4P1138, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】大腿骨近位部骨折(以下、近位部骨折)術後の多くの症例では、痛みは骨折部や術創部がある股関節周囲に発生し、骨癒合と術創部の治癒が進むに従い消失する。しかし、これらの治癒が進んでも痛みが残存する症例や、股関節周囲の遠隔部に痛みが発生する症例も存在し、このような症例では痛みが理学療法プログラムの進行の阻害・遅延因子となることがある。このような近位部骨折術後の痛みの実態に関しては経験的には把握しているものの、痛みの発生率や発生部位、程度などの基礎資料を提示した報告は非常に少ない。そこで、本研究では近位部骨折術後の痛みの実態把握を目的に理学療法開始時からの痛みの発生状況を調査した。【方法】対象は、2008年7月から2009年8月までに当院整形外科にて観血的治療を受け、理学療法を行った大腿骨頚部骨折23例、大腿骨転子間骨折3例、大腿骨転子部骨折22例、大腿骨転子下骨折5例、大腿骨転子部偽関節1例の計54例(男性9例、女性45例、平均年齢83.1歳)で、術式の内訳は人工骨頭置換術11例、ガンマネイル12例、compression hip screw (以下、CHS)15例、鍔つきCHS 6例、ハンソンピン7例、その他 3例である。なお、理学療法は平均して術後8.3日から開始した。調査項目は1)安静時痛(背臥位)、動作痛(起き上がり、立ち上がり、歩行)を有する対象者の割合(以下、有痛者率)、2)安静時痛、動作時痛の発生部位、3)安静時痛、動作時痛の発生部位の中で最も痛みが顕著であった部位(以下、最大疼痛部位)の痛みの程度とした。なお、痛みの発生部位については対象者がその部位を身体図に提示した結果を用い、川田らの報告(2006)に準じて腰部、鼠径部、臀部、大転子部、大腿前面、大腿外側、大腿内側、大腿後面、膝部以下の9箇所に分類した。また、痛みの程度はvisual analog scale(以下、VAS)で評価した。調査期間は理学療法開始時から12週後までとし、上記の調査項目の経時的変化を捉えるため2週毎に行った。そして、対象者を理学療法開始時の改訂長谷川式簡易知能評価スケールの得点により21点以上の非認知症群と20点以下の認知症群に分け、分析を行った。【説明と同意】本研究は、当院臨床研究倫理委員会において承認を受け、当院が定める個人情報の取り扱い指針に基づき実施した。【結果】安静時痛の有痛者率は理学療法開始時、非認知症群が約20%、認知症群が約47%であったが、4週後には非認知症群が約5%、認知症群が約11%に減少した。また、安静時痛の発生部位のうち鼡頚部、大転子部といった股関節周囲が占める割合は理学療法開始時、非認知症群が約20%、認知症群が約7%であったが、これは4週後にほぼ消失した。一方、動作時、特に歩行時痛の有痛者率は理学療法開始2週後で、非認知症群が約70%、認知症群が約83%で、6週後でも両群とも約40%までしか減少せず、それ以降も増減を繰り返した。また、理学療法開始時の動作時痛の発生部位は両群とも、大腿後面・内側・外側・前面および膝部以下で全体の約60%以上を占め、この傾向は12週後でも変化なかった。痛みの程度として、非認知症群の安静時痛のVASは理学療法開始時から12週時まで1以下であったが、認知症群は理学療法開始時から2週後まで2~3と非認知症群より高値を示した。また、動作時痛のVASは理学療法開始時、非認知症群が4.6、認知症群が6.5と認知症群が高値を示し、両群とも経時的に減少したが、12週後でも非認知症群が3.0、認知症群が4.6と認知症群が高値であった。【考察】今回の結果から、安静時痛の有痛者率は経時的に減少し、特に股関節周囲に存在する痛みが消失した。つまり、安静時痛は近位部骨折の受傷、あるいは手術侵襲といった組織損傷に伴う炎症に起因した痛みであると推測できる。一方、動作時痛、特に歩行時の有痛者率は経時的に減少するものの、残存する傾向があり、その発生部位も骨折部位から離れた大腿部や膝部以下に認められることから、炎症に起因したものとは考えにくい。次に、非認知症群と認知症群を比較すると安静時痛、ならびに動作時痛の有痛者率やその発生部位について違いは認められず、このことから痛みの発生状況に関しては認知症の影響は少ないといえる。ただ、痛みの程度に関しては認知症群が非認知症群より高いことから、情動面が影響しているのではないかと推察される。【理学療法学研究としての意義】近位部骨折術後の痛みについて、有痛者率、発生部位、ならびにその程度といった実態の一部を明らかにしたことは今後の理学療法を考える上でも貴重な基礎資料になると考えられる。