著者
卯野木 健 林田 敬 河合 佑亮 對東 俊介 安藤 守秀 飯田 有輝 笠井 史人 川崎 達也 神津 玲 近藤 豊 齊藤 正和 櫻本 秀明 佐々木 信幸 佐浦 隆一 中村 謙介 大内 玲 岡本 菜子 岡村 正嗣 栗原 知己 栗山 明 松石 雄二朗 山本 憲督 吉廣 尚大 矢坂 泰介 安部 諒 飯塚 崇仁 井上 拓保 内山 侑紀 遠藤 聡 大倉 和貴 太田 浩平 大塚 貴久 岡田 大輔 小幡 賢吾 片山 雪子 金田 直樹 北山 未央 喜納 俊介 草葉 隆一 桑原 政成 笹沼 直樹 高橋 正浩 髙山 千尋 田代 尚範 立野 淳子 田村 貴彦 田本 光拡 土谷 飛鳥 堤 悠介 長門 直 成田 知大 名和 智裕 野々山 忠芳 花田 匡利 平川 功太郎 牧野 晃子 正木 宏享 松木 良介 松嶋 真哉 松田 航 宮城島 沙織 諸見里 勝 柳 尚弥 山内 康太 山下 遊平 山本 夏啓 劉 啓文 若林 侑起 渡辺 伸一 米倉 寛 中西 信人 高橋 哲也 西田 修 日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.30, no.Supplement2, pp.S905-S972, 2023 (Released:2023-12-10)

重症患者に対する標準化された質の高いリハビリテーションの提供は,取り組むべき重要課題である。日本集中治療医学会では,2017年に「集中治療における早期リハビリテーション ―根拠に基づくエキスパートコンセンサス―」を発行したが,系統的にエビデンスを評価したものではなく,あくまでも専門家のコンセンサスに基づくものであった。そこで,日本集中治療医学会では,質が高く,かつ,医療従事者が理解しやすく,その意思決定に資することを目的に,システマティックレビューおよびGRADE(grading of recommendations, assessment, development and evaluation)アプローチを用いた診療ガイドラインを作成した。 重症患者に対するリハビリテーションに特化し,かつ,GRADEアプローチを用いた診療ガイドラインとしては,世界初の試みである。本ガイドラインは日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会を核に,ワーキンググループ,システマティックレビュー班,アカデミックガイドライン推進班から構成された診療ガイドライン作成グループの合計73名からなるメンバーで作成した。リハビリテーションでは多職種連携が非常に重要であることはいうまでもない。本ガイドラインも多職種,かつ多様な専門分野を持つ医師や医療従事者,ICU患者経験者を含む多くのメンバーが作成に寄与した。 本ガイドラインでは,グループメンバーによる議論に基づいて,8領域を注目すべき臨床重要領域とした。その上で,各領域から重要な14の臨床疑問(clinical question, CQ)を作成した。 パブリックコメントの募集を計2回行い,CQに対する回答としては,10のGRADEによる推奨,4つの背景疑問の解説が示された。また,CQごとに情報を視覚的診療フローとして作成し,各CQの位置付けがわかりやすいように配慮した。多職種が関与する重症患者に対するリハビリテーションにおいて,本ガイドラインが活用されることを期待する。
著者
篠原 史都 飯田 有輝 森沢 知之 山内 康太 小幡 賢吾 神津 玲 河合 佑亮 井上 茂亮 西田 修
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.84-90, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
20

【目的】重症患者における入院関連能力障害(HAD)と退院後の介護予防の必要性との関連を調査することである.【対象と方法】2021年9月から2022年3月にICUにて48時間以上の人工呼吸管理を施行した20歳以上の患者を対象とする前向き観察研究である.HADの有無の2群で背景因子,退院3ヵ月後の転帰と生活状況等について比較した.生活状況の調査は基本チェックリストを用いて郵送にて行った.また,多重ロジスティック回帰分析を用いてHAD発生に関与する因子を抽出した.【結果】65例が解析対象者となった.HADは21例に発生した.HAD群で退院3ヵ月後の運動機能低下とフレイルの割合が有意に高かった.また,HAD発生の関連因子としてICU退室時の握力とFunctional Status Score for the ICU合計が抽出された.【結論】HAD群で退院3ヵ月後にフレイルを呈した症例が多かった.
著者
石井 瞬 辻田 みはる 川村 征大 森岡 銀平 小森 峻 小山 将史 大鑄 俊博 宮田 倫明 神津 玲 中野 治郎
出版者
一般社団法人 日本地域理学療法学会
雑誌
地域理学療法学 (ISSN:27580318)
巻号頁・発行日
pp.JJCCPT22008, (Released:2023-10-03)
参考文献数
42

【目的】本研究の目的は,がん罹患歴のある高齢女性患者のオステオサルコペニアの実態を把握し,オステオサルコペニアとフレイルとの関連性を調べることである.【方法】対象は整形外科通院中の65歳以上の女性高齢患者287名とした.対象をがん罹患歴の有無で罹患群,非罹患群に分け,骨粗鬆症,サルコペニア,オステオサルコペニアの有症率を比較した.さらに,それぞれの群の対象者を,非該当群,骨粗鬆症群,サルコペニア群,オステオサルコペニア群の4群に分け,フレイルの有症率および,その下位項目に該当する割合を比較した.【結果】がん罹患歴のない患者と比較して,がん罹患歴のある患者のサルコペニアおよびオステオサルコペニアの有症率は高値であった.さらに,がん罹患歴のある患者のうち,オステオサルコペニア群はフレイルの有症率が高値であった.がん罹患歴のない患者では,オステオサルコペニアの有無によってフレイルの有症率に差は認められなかった.【結論】がん罹患歴のある高齢女性患者のオステオサルコペニアとフレイルに対する評価・治療の必要性が示唆された.
著者
植木 純 神津 玲 大平 徹郎 桂 秀樹 黒澤 一 安藤 守秀 佐野 裕子 佐野 恵美香 石川 朗 高橋 仁美 北川 知佳 玉木 彰 関川 清一 吉川 雅則 津田 徹
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.95-114, 2018-05-01 (Released:2018-09-20)
参考文献数
115
被引用文献数
10

呼吸リハビリテーションとは,呼吸器に関連した病気を持つ患者が,可能な限り疾患の進行を予防あるいは健康状態を回復・維持するため,医療者と協働的なパートナーシップのもとに疾患を自身で管理して自立できるよう生涯にわたり継続して支援していくための個別化された包括的介入である.呼吸リハビリテーションは原則としてチーム医療であり,専門のヘルスケアプロフェッショナルすなわち,医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,臨床工学技士,管理栄養士,歯科医師,歯科衛生士,医療ソーシャルワーカー,薬剤師,保健師,公認心理師,ケアマネージャー等の参加により,あるいは必要に応じて患者を支援する家族やボランティアも参加し行われるものである.また,呼吸リハビリテーションは病態に応じて維持期(生活期)から終末期まで,急性期,回復時,周術期や術後回復期も含むシームレスな介入である.介入に際しては,評価に基づきコンディショニングを併用した運動療法を中心として,ADLトレーニングを組み入れ,セルフマネジメント教育,栄養指導,心理社会的支援等を含む包括的な個別化プログラムを作成,実践する.達成目標や行動計画を医療者と協働しながら作成し,問題解決のスキルを高め,自信をつけることにより健康を増進・維持するための行動変容をもたらすよう支援する.継続への指導は再評価に基づき行い,身体活動の向上を重視する.呼吸リハビリテーションは息切れを軽減,健康関連QOLやADL,不安・抑うつを改善させ,入院回数・日数を減少させる等の有益な治療介入であり,適応のあるすべての呼吸器に関連した病気を持つ患者に実施される必要がある.
著者
石井 瞬 夏迫 歩美 福島 卓矢 神津 玲 宮田 倫明 中野 治郎
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.181-189, 2022 (Released:2022-12-16)
参考文献数
30

【目的】本研究の目的は,入院化学療法中の造血器腫瘍患者の倦怠感に関連する要因を明らかにすることである.【方法】本研究は後方視研究である.対象は入院中に化学療法を実施した造血器腫瘍患者90名とした.総合的,身体的,精神的,認知的倦怠感をそれぞれ従属変数とし,基本情報,ADL, Performance Status,不安・抑うつ,身体症状,栄養状態を独立変数として単回帰分析を実施した.単回帰分析で有意差を認めた項目を独立変数として,重回帰分析を実施した.【結果】総合的倦怠感を従属変数とした重回帰分析では抑うつが関連する要因として抽出された.さらに,身体的倦怠感は痛みの有無と抑うつ,精神的倦怠感はmFIMと抑うつが関連する要因として抽出された.【結論】倦怠感の症状がある造血器腫瘍患者に対しては,抑うつや痛み,ADLなどの倦怠感の原因に着目して対応する必要性が示唆された.
著者
石井 瞬 辻田 みはる 川村 征大 森岡 銀平 小森 峻 小山 将史 宮田 倫明 神津 玲 中野 治郎
出版者
一般社団法人 日本地域理学療法学会
雑誌
地域理学療法学 (ISSN:27580318)
巻号頁・発行日
pp.JJCCPT22006, (Released:2023-08-01)
参考文献数
21

【目的】整形外科外来通院中の高齢者を対象に,新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)流行前後におけるフレイル有症率およびフレイルに関連する問題点の有無の変化について,年代別に明らかにすること.【方法】当院で外来リハビリテーションが処方された65歳以上の患者966名を対象とした.前期高齢者および後期高齢者に対して,基本チェックリストのフレイル,複数の項目の支障,運動器,低栄養状態,口腔機能,閉じこもり,認知機能,抑うつ気分の該当の有無をそれぞれ目的変数として二項ロジスティック解析を行った.【結果】前期高齢者においてCOVID-19流行は,基本チェックリストのフレイルおよび抑うつ気分の該当と有意に関連していたが,後期高齢者では関連が認められなかった.【結論】COVID-19流行中は,整形外科外来において,特に前期高齢者のフレイルの合併が増加しやすいことを考慮した上で,評価や治療を検討する必要があると考える.
著者
田中 康友 田中 貴子 新貝 和也 北川 知佳 陶山 和晃 城石 涼太 力富 直人 津田 徹 宇都宮 嘉明 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.195-200, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
20

【背景と目的】慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:以下COPD)患者の入院原因を調査するとともに,併存疾患による入院と健康関連生活の質との関連を検討すること.【対象と方法】安定期のCOPD患者を対象に過去1年間の入院の有無・回数・原因とCOPD assessment test(以下CAT),を評価した.【結果】解析対象者は103例で,入院回数は全原因を含めて63回であった.そのうち併存疾患による入院は28回(44%)で,内訳は心血管疾患が10回(16%)と最も多く,運動器疾患など他の疾患は5%程度であった.また,重回帰分析の結果,併存疾患による入院とCATとの関連は認められなかった(P=0.607).【結語】COPDの増悪に加えて,心血管疾患を含めた併存疾患にも配慮した全身管理やセルフマネジメント指導の必要性が示唆された.
著者
神津 玲 藤島 一郎 朝井 政治 俵 祐一 千住 秀明
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.93-96, 2007-08-31 (Released:2017-04-20)
参考文献数
7
被引用文献数
1

摂食・嚥下障害例では誤嚥,特に唾液誤嚥(不顕性誤嚥)が問題になることが少なくない.その予防のために,呼吸理学療法の一手段である体位管理が臨床的に有用であることを経験する.今回,唾液誤嚥に及ぼす体位の影響について検証を行った.重度嚥下障害例を対象に,仰臥位,後傾側臥位,前傾側臥位の各体位での唾液誤嚥の動態を喉頭内視鏡を用いて観察した.その結果,仰臥位および後傾側臥位では,唾液の著明な咽頭貯留,吸気時の喉頭侵入や呼気時の吹き出しを認めたが,前傾側臥位では咽頭貯留,喉頭侵入ともに認めなかった.唾液誤嚥の予防に前傾側臥位の有用性が示され,臨床現場における患者管理の一環として積極的に導入する価値があるものと考えた.
著者
花田 匡利 及川 真人 名倉 弘樹 竹内 里奈 石松 祐二 城戸 貴志 石本 裕士 坂本 憲穂 迎 寛 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.93-98, 2022-12-26 (Released:2022-12-26)
参考文献数
20

近年,間質性肺疾患に対する呼吸リハビリテーションに関する報告が集積され,診療ガイドラインにおいても弱いながら推奨されるレベルに位置付けられている.しかし,不均質な病態かつ,難治性疾患という本疾患の基本的特徴は呼吸リハビリテーションに様々な影響を及ぼし,COPDを対象として確立されたエビデンスの高いプログラムを適用できないことも少なくない.そのため今後,従来の呼吸リハビリテーションとは異なる疾患特異的な方法論の確立,さらには維持プログラムのあり方が重要な課題となる.
著者
瀬川 凌介 及川 真人 花田 匡利 名倉 弘樹 新貝 和也 佐藤 俊太朗 澤井 照光 永安 武 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.110-116, 2022-12-26 (Released:2022-12-26)
参考文献数
19

【目的】肺癌の外科治療では,術後に遷延する呼吸不全によって酸素療法の継続を余儀なくされる患者も存在する.本研究は,退院時に酸素療法を必要とした患者の割合と,その臨床的特徴を明らかにすることを目的とした.【対象と方法】本研究は単施設の後方視観察研究であり,2009年から2018年に長崎大学病院にて肺切除術を施行された肺癌患者を対象とした.診療録より,対象者背景,術前の呼吸機能および身体機能,手術関連項目,術後経過,退(転)院時転帰を調査した.【結果】解析対象者は1,256件で,そのうち46件(3.7%)が酸素療法継続となった.酸素療法継続に対して重要度が高い評価項目を推定するランダムフォレスト解析において,術前の肺拡散能や6分間歩行試験中の酸素飽和度低下が抽出された.【結語】肺切除術後患者において,術前の肺拡散能や6分間歩行試験中の酸素飽和度低下は,術後の酸素療法の必要性を予測する指標となる可能性が示唆された.
著者
石井 瞬 夏迫 歩美 福島 卓矢 神津 玲 宮田 倫明 中野 治郎
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.123-131, 2021 (Released:2021-04-16)
参考文献数
28
被引用文献数
1

【目的】造血器腫瘍患者に対して,運動療法を主体とした通常のリハビリテーションに行動変容アプローチを追加した介入効果を検討すること.【方法】化学療法後の造血器腫瘍患者を対象とした.リハビリテーションを実施したコントロール群12名,リハビリテーションに行動変容アプローチを追加した介入を行ったフィードバック群13名に群分けし,リハビリテーション開始時から退院時までの運動機能および身体活動量の変化を解析した.【結果】リハビリテーション開始時から退院時までの変化を比較すると,10 m歩行速度で測定時期に有意な主効果が認められた.また,週間歩数でフィードバック群の測定時期に効果を及ぼす有意な交互作用が認められた.【結論】運動機能と身体活動量のフィードバックを行う行動変容アプローチは,身体活動量を向上させる可能性が示唆された.
著者
石井 瞬 夏迫 歩美 福島 卓矢 神津 玲 宮田 倫明 中野 治郎
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.330-336, 2021 (Released:2021-06-18)
参考文献数
16

【目的】本研究の目的は,リンパ浮腫外来における圧迫下の運動療法の実施状況と,その実施が抱える問題点を把握することである。【方法】リンパ浮腫外来を実施している全国のがん診療連携拠点病院を対象に,リンパ浮腫ケアの実践内容,運動療法の実施内容,リハビリテーション(以下,リハビリ)スタッフとの連携の有無,運動療法の実施が抱える問題点についてアンケート調査を行った。【結果】リンパ浮腫外来で運動療法を実施している施設は14.2% であった。運動療法を実施できない問題点として「知識・技術のあるスタッフの不足」,「診療時間の不足」,「連携不足」などが挙げられ,運動療法を実施している施設はリハビリスタッフ数が多かった。【結論】今回の調査結果から,リンパ浮腫外来で運動療法を実施するためには専門的な知識をもったリハビリスタッフを育成,増員する必要があることが示唆された。
著者
森 大地 板木 雅俊 岩佐 恭平 大濱 慎一郎 北川 知佳 田中 貴子 池内 智之 河野 哲也 津田 徹 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.305-310, 2023-08-31 (Released:2023-08-31)
参考文献数
19

【目的】慢性呼吸器疾患患者の要介護度は過小評価される傾向にあり,患者の不満が多いと報告されている.今回,認定結果に対する不満の有無とその関連因子について検討した.【方法】通所リハビリテーションを利用する慢性呼吸器疾患患者を対象とした.認定結果への不満の有無で2群に分け,比較検討を行った.患者特性,身体機能,ADL(BI,NRADL),呼吸困難,呼吸機能,心理状態を調査・解析し,不満の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.【結果】解析対象は31例で,不満なし群(21例),不満あり群(10例)であった.ロジスティック回帰分析の結果,NRADL(オッズ比0.914,95%CI 0.852-0.980)が不満の有無と有意な関連を認めた.【結論】認定結果への不満にはNRADLが関連しており,NRADLの点数を考慮することで,要介護度の過小評価を是正できる可能性が示唆された.
著者
禹 炫在 青木 秀樹 片岡 英樹 山下 潤一郎 吉武 孝敏 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.345-351, 2023-08-31 (Released:2023-08-31)
参考文献数
31

目的:高齢市中肺炎患者における身体活動量と入院関連能力低下(hospitalization-associated disability: HAD)の発生との関係,および身体活動量のカットオフ値を検討することである.方法:市中肺炎の診断にて,入院後48時間以内に呼吸リハビリテーションが開始された高齢患者を対象に,入院後の7日間に身体活動量を計測,1日当たりの身体活動量とHAD発生との関連とカットオフ値を調査した.退院時のBarthel Index合計点数が入院前より5点以上低下した場合をHADと定義した.結果:対象者95例(82[71-91]歳)のうち,33例(35%)にHADが発生した.単変量分析の結果,HAD発生には低活動と連続臥床時間の延長が説明因子であった.受信者操作特性分析の結果,1日当たりのカットオフ値は歩行時間12分,歩数1,112歩であった.結論:高齢市中肺炎患者はHAD発生率が高く,その発生に影響する身体活動量のカットオフ値は臨床現場での目標設定の指標となる可能性が示唆された.
著者
禹 炫在 青木 秀樹 片岡 英樹 山下 潤一郎 吉武 孝敏 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
pp.21-53, (Released:2023-01-06)

目的:高齢市中肺炎患者における身体活動量と入院関連能力低下(Hospital-acquired disability:HAD)の発生との関係,および身体活動量のカットオフ値を検討することである.方法:市中肺炎の診断にて,入院後48時間以内に呼吸リハビリテーションが開始された高齢患者を対象に,入院後の7日間に身体活動量を計測,1日当たりの身体活動量とHAD発生との関連とカットオフ値を調査した.退院時のBarthel Index合計点数が入院前より5点以上低下した場合をHADと定義した.結果:対象者95例(82 [71 - 91]歳)のうち,33例(35%)にHADが発生した.単変量分析の結果,HAD発生には低活動と連続臥床時間の延長が説明因子であった.受信者操作特性分析の結果,1日当たりのカットオフ値は歩行時間12分,歩数1112歩であった.結論:高齢市中肺炎患者はHAD発生率が高く,その発生に影響する身体活動量のカットオフ値は臨床現場での目標設定の指標となる可能性が示唆された.
著者
森 大地 板木 雅俊 岩佐 恭平 大濱 慎一郎 北川 知佳 田中 貴子 池内 智之 河野 哲也 津田 徹 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
pp.22-01, (Released:2023-03-29)

【目的】慢性呼吸器疾患患者の要介護度は過小評価される傾向にあり,患者の不満が多いと報告されている.今回,認定結果に対する不満の有無とその関連因子について検討した.【方法】通所リハビリテーションを利用する慢性呼吸器疾患患者を対象とした.認定結果への不満の有無で2群に分け,比較検討を行った.患者特性,身体機能,ADL(BI,NRADL),呼吸困難,呼吸機能,心理状態を調査・解析し,不満の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.【結果】解析対象は31例で,不満なし群(21例),不満あり群(10例)であった.ロジスティック回帰分析の結果,NRADL(オッズ比0.914,95%CI 0.852 - 0.980)が不満の有無と有意な関連を認めた.【結論】認定結果への不満にはNRADLが関連しており,NRADLの点数を考慮することで,要介護度の過小評価を是正できる可能性が示唆された.
著者
朝井 政治 俵 祐一 佐々木 綾子 岡田 芳郎 夏井 一生 中野 豊 神津 玲
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D0484, 2006 (Released:2006-04-29)

【はじめに】 間質性肺炎における治療はステロイド薬を中心とした薬物療法が主体で、理学療法の適応は少ないとされてきた。しかし近年、病態の安定した本疾患患者において、運動療法により運動能、QOLが改善するという報告がみられている。今回、間質性肺炎の増悪でステロイド薬投与開始となった症例の運動機能を6分間歩行距離テスト(6MD)にて評価し、理学療法の効果を検討したので報告する。【対象】 当院呼吸器センター内科にて入院治療を行った間質性肺炎患者7名(男性4例、女性3例、平均年齢69.0歳)を対象とした。全例とも間質性肺炎の増悪にて入院となった。全例でステロイド薬が投与され、うち5名で短期間大量投与による治療(パルス療法)が行われた。【方法】 入院中に実施した6MDによる歩行距離、酸素飽和度(SpO2)の変化、呼吸困難感の変化(Borg Scale)を指標とし、ステロイド薬投与前(1回目)とパルス療法後または投与開始から2週もしくは4週間後(2回目)で比較(薬物療法効果)するとともに、2回目の結果とステロイド薬減量中に並行して一定期間運動療法を実施した後を比較(理学療法効果)し、その効果の相違を検討した。理学療法は上下肢の筋力増強、歩行・自転車エルゴメータによる運動耐容能向上を目的とした運動療法を中心に実施した。運動の負荷量は、SpO2やHRをモニタリングしながら、Borg Scaleにて3-4を目安とした。運動時間は30-40分とし、1日1回、週6日の頻度で実施した。【結果】1)薬物療法効果:1例で入院直後にパルス療法が行なわれたため、6例で検討した。1回目と2回目の比較では、2回目の6MDは全例で増加を認め、平均91.7m(25-260m)増加した。SpO2は、平均で1回目7%の低下、2回目5.6%の低下、呼吸困難感は1回目0.5-6、2回目0-3であった。2)理学療法効果:理学療法の実施期間は平均50.0日(平均実施回数30回)で、実施期間中に原疾患の悪化あるいは感染等で再増悪した症例はなかった。3回目の歩行距離は、2回目の結果からさらに平均34.3mの増加を認めた。SpO2は平均7.2%低下したが、最低値は87-92%と著明な低酸素血症は認めなかった。呼吸困難感は0-4であった。【考察】 2回目の歩行距離の著しい増加は、薬物療法による呼吸機能の改善が運動能力の向上につながったと考えられた。3回目では、さらに平均で34.3mの増加を認め,理学療法を行うことにより、薬物療法による改善に加え、さらなる運動機能の向上を期待できると思われた。 今回の結果はあくまで理学療法と薬物療法との相乗効果であるが、ステロイド長期投与の副作用による運動機能の低下予防の点からも早期からの理学療法導入により、運動機能を維持・向上していくことが重要であると思われた。
著者
宮本 直美 北川 知佳 栗田 健介 岩永 桃子 力富 直人 神津 玲 千住 秀明
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D0483, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】2005年日本呼吸器学会で発表された「特発性間質性肺炎の診断・治療ガイドライン」では、呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)は運動耐容能や呼吸困難感の改善などが期待されると示されている。また、間質性肺炎は進行性で予後不良であるため、臨床上呼吸リハが遂行困難な症例も多い。今回、間質性肺炎に対する呼吸リハの効果について検討することを目的に、当院において呼吸リハを施行した間質性肺炎患者について調査検討したので報告する。【方法】平成9年8月から平成17年7月までに、当院に入院し呼吸リハを施行した間質性肺炎患者37例、65エピソード(平均年齢68±10.8歳、男性25例、女性12例)を対象とした。呼吸リハプログラムの内容は、運動療法を中心に動作コントロール指導を併せて実施した。呼吸リハ前後での呼吸困難感(MRCスケール)、身体組成、肺機能、運動耐容能(6分間歩行テスト、シャトルウォーキングテスト)、下肢筋力、ADL(千住らのスコア)を評価し、呼吸リハ実施期間、完遂状況、ステロイド投与量を調査した。【結果】呼吸リハ完遂可能であった患者(完遂群)は34エピソード(52%)、呼吸リハが遂行困難であった患者(非完遂群)は31エピソード(48%)で基礎疾患の増悪が主な理由であった。呼吸リハの実施期間は中央値で53.5日であった。完遂群では、呼吸リハ前後での呼吸困難感、肺機能(VC、MVV)、下肢筋力(n=12)で有意な改善を認めたが、身体組成に変化はなかった。また6分間歩行距離で有意な改善を認めたが、シャトルウォーキングテスト(n=10)の歩行距離に有意差はなかった。ADLでは有意な改善を認めた。ステロイド治療は10エピソードで実施されており、実施期間中の増量はなかった。【考察】今回、呼吸リハが遂行困難であった患者は全体の48%であった。これは間質性肺炎が進行性で、病状のコントロールが困難であるという本疾患群の病態の特徴を反映した結果であると思われた。しかし、完遂群における呼吸リハ前後の比較では、呼吸困難感、6分間歩行テスト(歩行距離)、下肢筋力、ADLで改善を認めており、症状安定期にある間質性肺炎患者では、薬物療法(ステロイド治療)とともに呼吸リハが有効である可能性が示唆された。
著者
石井 瞬 夏迫 歩美 福島 卓矢 神津 玲 宮田 倫明 中野 治郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11958, (Released:2021-03-17)
参考文献数
16

【目的】本研究の目的は,リンパ浮腫外来における圧迫下の運動療法の実施状況と,その実施が抱える問題点を把握することである。【方法】リンパ浮腫外来を実施している全国のがん診療連携拠点病院を対象に,リンパ浮腫ケアの実践内容,運動療法の実施内容,リハビリテーション(以下,リハビリ)スタッフとの連携の有無,運動療法の実施が抱える問題点についてアンケート調査を行った。【結果】リンパ浮腫外来で運動療法を実施している施設は14.2% であった。運動療法を実施できない問題点として「知識・技術のあるスタッフの不足」,「診療時間の不足」,「連携不足」などが挙げられ,運動療法を実施している施設はリハビリスタッフ数が多かった。【結論】今回の調査結果から,リンパ浮腫外来で運動療法を実施するためには専門的な知識をもったリハビリスタッフを育成,増員する必要があることが示唆された。