著者
岩坂 憂児
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.63-66, 2020

<p>〔目的〕運動観察時の身体部位の空間的一致度は運動イメージを向上させるかを調べるために本研究を実施した.〔対象と方法〕右利きの健常成人24名(男性15名,女性9名,21.3 ± 4歳)を対象とし,PCでランダムに3群(近位観察群:AON群・遠位観察群:AOF群・対照群)に振り分けた.課題は手の心的回転課題(HMRT)とし,反応時間を測定した.はじめにHMRTを行わせ,各群に対し異なった条件で運動観察を行わせた.運動観察後にHMRTを実施した.〔結果〕観察前では3群で反応時間に有意差はみられなかったが,観察後の結果ではAON群はAOF群・対照群よりも有意に反応時間が早かった.〔結語〕運動観察中の身体位置は運動イメージ能力に影響を与える可能性が考えられた.</p>
著者
岩坂 憂児
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.15-19, 2017-08-31 (Released:2017-09-15)
参考文献数
18

【目的】本研究は運動観察に用いる動画を提示するときの身体の位置が連続的運動学習に影響を与えるかどうかを調べるものである。 【方法】21名の右利き健常成人をランダムに3群(手近位での運動観察群:AON群,手遠位での運動観察群:AOF群,対照群)に分けた。運動課題は左手での連続反応時間課題とし,反応時間を評価指標とした。 プレテストを実施した後,AON群とAOF群に対して他者が課題を実施している動画の観察を,対照群にはモザイク動画を3分間タブレットで視聴させた。またAON群は左手直上,AOF群と対照群は左手から離れ た場所にタブレットを置き,視聴後ポストテストを行った。 【結果】ポストテストでは有意な主効果が認められ,AON群ではAOF群と対照群と比較して反応時間が 有意に速いことが認められた。 【結語】運動観察中の身体の位置は運動学習に影響を与えるということが示唆された。
著者
岩坂 憂児 大友 伸太郎
出版者
一般社団法人 Asian Society of Human Services
雑誌
Total Rehabilitation Research (ISSN:21881855)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.22-28, 2020 (Released:2020-06-30)
参考文献数
10

The purpose of this study was to investigate and compare the one-day stress load between the users and providers of day service. The subjects were 2 users (a man in his 50s with right hemiplegia and a man in his 70s with Parkinson's disease syndrome) and 2 providers (a physical therapist and manager, a man in his 40s and a nurse, a woman in her 40s). A salivary amylase monitor was used for measurement, which objectively measures stress based on the activity value of salivary amylase. The subjects underwent measurements of salivary amylase activity at the time of arrival at the facility (baseline) and continued to undergo measurements every 15 minutes thereafter until they returned home. In addition, there was a meal break from 12:00 to 14:00, leading to a possibility that the secretion in saliva was changed by the meal had; thus, it was excluded from the measured value. In order to confirm the stress load of users and providers, Welch’s t-test was performed with the user and target as independent variables and the values obtained by dividing each measured value by the baseline value as the dependent variables. The significance level was 5%. There was a significant difference in the salivary amylase activity between users of day service and providers (p <0.05). This study revealed that providers’ stress is higher than users’ stress, and providers’ stress increased with team meetings and patient transfers. This study suggests the importance of stress management for providers.
著者
岩坂 憂児 大友 伸太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0338, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】観察学習は他者の運動を観察することで学習が図られるものであり,学習心理学の分野で研究されてきた。近年では運動観察学習による学習の効果の神経基盤について研究が進められている。Rizzolattiら(1988)はサルのF5領域(人における補足運動野)からミラーニューロンを発見し,これが観察学習の神経基盤である可能性を示唆した。Fadigaら(1995)はポジトロン断層法(PET)を用いた研究で人にも存在することを示唆している。したがって運動観察学習では,ミラーニューロンが活動することで,脳内で観察した運動を自動的にリハーサルし,これが技術の向上に関わっていると考えられる。Erteltら(2007)はこの運動観察を脳血管障害患者に対して介入として導入し,麻痺側の上肢機能が有意に改善したこと,また運動に関する脳領域の賦活を報告し,運動観察がリハビリテーションに有効であることを述べているが,長時間・長期間の介入を実施する必要があり,より運動観察の効果を高めることが今後のリハビリテーション導入には必要であると考えられる。運動観察学習の効果を向上させるための方法として,Maedaら(2000)は観察する動画と実際の上肢の位置が同一であるほうが効果を向上させることができることを示唆している。また,運動観察によって脳内で自動的に運動のリハーサルが起こるならば,実運動と同様に難易度を徐々に高めていく方法が有用であることが考えられる。そこで本研究は,運動観察学習における提示動画の速度変化が学習に及ぼす影響を検討するために実施した。【方法】対象者は専門学校・短期大学に在籍する学生33名とした。課題は手掌でのボール回転課題とし,30秒間可能な限り早く右手で時計回しに回転するように指示した。課題は2回実施し,回転数を測定値として採用した。その後,3分30秒の動画を視聴してもらい,同じ課題を実施した。対象者を視聴する動画ごとにランダムに3群に振り分けた。視聴する動画について3種類作成(再生速度が変化しない動画:通常観察群,再生速度が徐々に上がっていく動画:介入観察群,再生速度がランダムに提示される群:ランダム観察群)し,学生をランダムに割り当てた。統計処理にはRを利用し,二元配置の分散分析を用いた。多重比較検定にはBonferroni法を採用した。有意水準は0.05以下とした。【倫理的配慮,説明と同意】被験者に対して本研究の目的及び介入における効果と身体にかかる影響を文章および口頭にて説明して同意を得た。【結果】介入前後の回転数は通常観察群は30.9±10.5回から33.1±8.4回,介入観察群は35.4±10.2回から40.9±9.6回,ランダム群は30.1±8.1回から32.5±8.6回へそれぞれ変化した。分析の結果,介入前後と群間における主効果は有意差を認めたが,相互作用には有意差は認められなかった。主効果を確認したため,多重比較検定を行なったところ,介入観察群と通常観察群,ランダム観察群の視聴後における回転数に有意差が認められた。【考察】本研究は観察する動画の速度が学習効果に影響を及ぼすかを見たものである。動作観察中の脳活動は実運動と共有している部分が多く,運動観察学習の効果も実運動と似たような傾向を示す可能性が考えられる。したがって簡単な運動の観察から徐々に難易度の高い運動の観察へ変化させたほうが学習効果を高める可能性が示唆される。過去の研究では熟練した運動を観察しているときはミラーニューロンシステムと考えられる部位の活動がより賦活かされることを示している。そのため,観察学習を実施する際に単に同じ動画を観察させるよりも速度を徐々に速めるような画像を提示したほうが学習の定着が高い可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】近年,運動観察に関する効果が検討されている。本研究は運動観察を理学療法に導入し,より高い運動学習効果を保証するための新しい視点を示していると考えられる。
著者
岩坂 憂児 津谷 宗達 佐藤 美加 伊藤 美加 坂下 咲希恵 渡辺 好孝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1709, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】臨床実習を実施するうえで重要となる要因の一つに,学生自身の学習意欲がある。この臨床実習に対する学習意欲を学内で高めることが重要である。当校では,早い段階から学習意欲を高める事を目的として1年の7月に医療法人松田会の協力のもと1日の早期見学実習を行っている。このような早期見学実習の効果をアンケート形式で報告しているものも見られるが,量的な検討では十分に把握できない部分も存在すると思われる。近年の研究で計量テキスト分析と呼ばれる手法によって,記載した文章やテキスト化した資料を用いた研究も見られ始めている。今回この手法を用いて,見学実習が学生の意識にどの程度影響を与えるかについて検討した。【方法】本学の理学療法科1年33名(男性21名,女性12名)のレポートを対象とした。見学実習の実施は,実習オリエンテーション(衣服や身だしなみの指導・見学実習についてのディスカッション),実習日,実習後のセミナーおよびディスカッション,レポート課題で構成される。実習は,学生2名に対して指導者1名が10時から15時にわたって指導するという形をとっている。実習後の課題には,見学実習後の感想レポートがあり,本研究では感想レポートを解析した。解析は,フリーソフトウェアのKH Coder(樋口ら)を使用した。解析手順は,レポート本文をテキストファイルに変換し,ソフト上で前処理の後,本文から語句を抽出した。「理学療法」,「見学実習」「PT」の実習に関わる語句を複合語として登録し抽出した。33名全員のレポートから最頻50語を抽出し,階層クラスター分析および共起ネットワークにて内容を検討した。【結果】総抽出語は4516語であった。最頻出の上位10語は「患者」「PT(理学療法)」「治療」「リハビリ」「印象」「思う」「自分」「見る」「会話」「行う」であった。抽出語の階層クラスター分析では7クラスターが得られた。クラスターの概要は,実習への感謝,理学療法士としての心構え,コミュニケーションの重要性,見学実習の内容,患者への説明,治療内容,理学療法士と患者との接し方が確認された。共起ネットワーク分析では,「患者」を中心に理学療法士の治療内容,患者とのコミュニケーション,患者への説明,自分自身の見学実習に対する内省などの関係性が明らかになった。【結論】早期からの臨床見学実習は,理学療法士の役割を直接感じるのみならず,医療専門職としての動機付け,患者とのかかわり方,コミュニケーションの重要性など,理学療法士を目指す上で情意領域の双方の教育的効果が得られたと考える。