著者
門脇 敬 阿部 浩明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.74-82, 2019 (Released:2019-10-07)
参考文献数
24
被引用文献数
3

【目的】 発症後 2 ヶ 月経過した時点で歩行が全介助であった両片麻痺を呈したSusac症候群の一例に対して足部可動性を持つ長下肢装具(Knee-Ankle-Foot-Orthosis:KAFO)を用いて積極的な歩行練習を実施したところ,屋内監視歩行を獲得したため報告する。【対象】 両片麻痺を呈し,急性期病院にて合併症により離床が進まず発症から 2 ヶ 月が経過したものの歩行に全介助を要する50歳代の女性である。【方法】 当院転院後,備品の KAFO を用いて歩行練習を中心とした理学療法を実施した。【結果】 両下肢の筋力が改善し,173病日に四脚杖と短下肢装具を使用して屋内監視歩行が可能となり,自宅復帰を果たした。【結語】 機能障害の重複によって下肢支持性が低下し,歩行に全介助が必用な症例の歩行再建を目指した場合,症例の能力に合わせて課題難易度を調節できる KAFO の使用は有益であると思われ,それを用いて反復的な歩行練習を実施することを一考すべきである。
著者
大鹿糠 徹 阿部 浩明 関 崇志 大橋 信義 辻本 直秀 神 将文
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.20-27, 2017-08-31 (Released:2017-09-15)
参考文献数
12
被引用文献数
13

【目的】脳卒中重度片麻痺者に対し,背屈遊動とした長下肢装具(KAFO)を用いた無杖での二動作前型歩行(以下,背屈遊動前型無杖歩行)を実施した際と,杖と背屈制限を設けたKAFOを用いた三動作揃え 型歩行(以下,背屈制限揃え型杖歩行)を実施した際の歩行中の麻痺側下肢筋活動の差異を明らかにする事を目的とした。 【対象および方法】対象は当院へ入院した脳卒中重度片麻痺者のうち,歩行練習実施に際してKAFOを必要とした患者15名である。測定条件は背屈遊動前型無杖歩行と背屈制限揃え型杖歩行の2条件とし,麻痺側 下肢筋活動の評価には表面筋電図を用いた。測定筋は麻痺側の大殿筋,大腿筋膜張筋,大腿直筋,半腱様筋,前脛骨筋,腓腹筋内側頭とし,麻痺側立脚期中の筋電図積分値を算出し,2条件で比較した。 【結果】背屈遊動前型無杖歩行時には背屈制限揃え型杖歩行時よりも麻痺側下肢筋活動が有意に増加した。 【考察】脳卒中重度片麻痺者の歩行練習において,背屈遊動前型無杖歩行は背屈制限揃え型杖歩行よりも麻痺側下肢筋活動を増加させることが期待できるものと思われる。
著者
阿部 玄治 千葉 駿太 玉山 優奈 平野 詩織 向山 和枝 黒後 裕彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.69-72, 2017-08-31 (Released:2017-09-15)
参考文献数
10

【目的】 靴踵部の補強であるヒールカウンター(HC)が,前後方向の立位バランス制御に与える影響を検討する こと。 【方法】 健常若年者27名を対象とした。HCなし,またはHCを入れた上靴を履いた条件間で,直立肢位に対しつま先側あるいは踵側へ最大に重心移動した際の足圧中心(COP)の前後方向の移動距離を上靴のサイズで正 規化し比較した。 【結果】 前方へのCOP移動距離は,HCなし条件が26.10±0.91%(平均±標準偏差),HCあり条件が23.9±0.94% であった。後方へのCOP移動距離は,HCなし条件が15.88±1.36%,HCあり条件が17.34±1.38%であった。 バランス制御方向とHCの有無との交互作用を認め,後方へのCOP移動距離はHCあり条件がHCなし条件よりも長い傾向を認めた(p=0.062)。 【考察】 HCあり条件における後方へのCOP移動距離の増大は,HCが壁の役割を担い踵部の安定性が向上したた めと考えられる。 【結語】 若年健常者では,HCは後方への立位バランス制御に貢献することが示唆された。
著者
海藤 夏稀 鈴木 克彦 金子 絵梨花
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.22-27, 2020 (Released:2020-12-16)
参考文献数
11

〔目的〕腹部引き込み運動(Draw-in)の継続によって,腹横筋の筋厚および筋硬度がどのように変化するのか,また脊柱に及ぼす効果について検討する。〔方法〕健常成人女性11名を対象に,Draw-inを自主トレーニングとして4週間行った。実施前後に超音波診断装置,Real-time Tissue Elastographyを用いて側腹筋群の筋厚および筋硬度を測定し,スパイナルマウスを用いて脊柱アライメントを測定した。〔結果〕トレーニング前後で,安静呼気時の筋厚は背臥位における外腹斜筋の筋厚のみ有意に減少した。 安静呼気時の筋硬度は,背臥位では外腹斜筋および腹横筋で増加し,立位では側腹筋群すべてで有意に増加した。脊柱アライメントは,トレーニング後に仙骨傾斜角の有意な減少を認めた。〔結語〕Draw-inの継続により,立位での腹横筋の硬さが増加したことから腹腔内圧の上昇に作用したと考えられる。仙骨傾斜角の減少が認められ,腹横筋の収縮により仙腸関節を圧迫させ効果的に安定化できる報告を裏付ける結果であった。
著者
木元 裕介 佐竹 將宏 菊谷 明弘 皆方 伸 中澤 明紀 岩澤 里美 佐藤 峰善 若狭 正彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.51-57, 2015 (Released:2015-07-31)
参考文献数
32

【目的】大腿四頭筋へのダイナミックストレッチングとスタティックストレッチングを実施した後の、膝屈曲可動域および膝伸展筋力の変化を検討した。【方法】健常成人男女18名を対象に、ダイナミックストレッチングを行う介入、スタティックストレッチングを行う介入、ストレッチングを行わず安静を保つ介入(安静)を行った。ダイナミックストレッチングは、つかまり立位をとり1回6秒(10回/分)のゆっくりとした速度で12回行う方法とした。【結果】ダイナミックストレッチングおよびスタティックストレッチングは、同様に膝屈曲可動域が有意に増加した。しかし、スタティックストレッチングにおいてのみ膝伸展筋力が有意に低下した。安静は全てにおいて有意な変化がなかった。【考察】1回6秒を12回行うダイナミックストレッチングは、理学療法場面において有益な方法となり得る可能性があった。
著者
中江 秀幸 相馬 正之 坂上 尚穗
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.7-14, 2017-08-31 (Released:2017-09-15)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究では,通所介護(デイサービス)と通所リハ(デイケア)の事業所を対象に在宅パーキンソン病 (Parkinsonʼs Disease; PD)患者の利用状況について現状を調査した。B市内の通所事業所を対象に郵送法・ 無記名式で,定員数やリハ担当職種,利用目的,リハ内容,利用者からの要望,事業所側の問題などを調査 した。その結果,PD患者の利用率は78.2%,Hoehn&Yahr重症度ではstageⅢの利用者が最も多かった。 リハ担当職種は介護職と看護職が多く,理学・作業療法士は全事業所の22.5%の担当率であった。本調査結 果から,デイサービスとデイケアに共通した利用目的は「外出の機会確保」「日常生活動作の維持」であり, 利用目的が「筋力の維持」「PDに対するリハ」であればデイケアを利用している割合が高く,利用目的に応じた選択・利用がなされていた。事業者側は,「独りで実施できない」「リハ時間が短い」といったPD患者の要望を把握しているものの,PDという慢性進行性疾患と薬物依存度が高い疾患特性から医学的情報や知 識や技術の不足などの問題を抱えていることが明らかとなった。
著者
吉田 高幸 藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.14-21, 2020 (Released:2020-12-16)
参考文献数
24

[目的]ケイデンスを規定した平地上での膝歩きの運動学的特徴を明らかにすること。[対象]健常男性20名。[方法] メトロノーム音によってケイデンスを40, 60, 80, 100, 120[steps/min]に設定した。各ケイデンスにおける歩幅,歩行速度,立脚・遊脚期の所要時間,体重心移動量,各体節角度を三次元動作解析装置にて測定した。[結果] ケイデンス増加に比例して歩行速度は増加傾向を示したが,歩幅には直線的な増加傾向が認められなかった。歩幅に関与する股関節屈曲角は増加傾向を示したが,骨盤回旋角は減少傾向を示した。一方,体重心側方移動量,体幹側屈角,骨盤挙上角,大腿骨外側傾斜角は明らかな減少傾向を示した。また,立脚時間は減少傾向であったのに対し,遊脚時間は増加傾向を示した。[結語] ケイデンス増加に伴う歩幅の制御は歩行と異なるものであり,エネルギー損失を抑制するためと考えられた。一方,左右への身体運動量を減少させることは,速度増加に適した制御であった。
著者
柏木 智一 横山 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.33-41, 2017-08-31 (Released:2017-09-15)
参考文献数
18

腰部脊柱管狭窄症の術前と術後3カ月の間欠性跛行とQOLの関連性について調査した。当院において手術を施行したLSS患者20例(男性7例,女性13例,平均年齢72.1±6.7歳)を対象とした。評価項目は,連続歩行テスト(歩行距離と歩行時VAS)とQOL評価としてMOS Short-Form 36-Item Health Survey日本語版ver.2(以下:SF-36)と日本整形外科学会腰痛評価質問票(以下:JOABPEQ)とした。評価は術前と 術後3カ月に実施した。手術内容は全例部分腰椎椎弓切除術であった。術後の理学療法は3,4週間の入院 期間中のみ実施した。術前では連続歩行距離とJOABPEQの歩行機能において,術後3カ月では連続歩行距離とSF-36のPF,BP,GH,SF,JOABPEQの疼痛関連,歩行機能,心理機能において有意な相関が認め られた。術後3カ月において連続歩行距離の重要性が示唆された。
著者
佐藤 弘樹 関 公輔
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.89-99, 2019 (Released:2019-10-07)
参考文献数
11

【目的】 脊髄損傷完全対麻痺(L1)から,左長下肢装具と右短下肢装具を装着して歩行が自立し,集合住宅の 2 階に退院した症例を以下に報告する。【症例紹介】 20代女性。転落で受傷し A 病院に搬送。42病日に当センター転院。翌日より理学療法を開始した。当院入院時の ASIA Impairment Scale(以下,AIS)はA,Neurological Level of Injury(以下,NLI)はL1,ASIAの下肢運動スコア(以下,LEMS)はRt./Lt. = 8/0であった。この段階の予後予測において実用歩行獲得は困難と判断されたが,集合住宅への退院に必要な実用歩行,階段昇降が可能となるよう,標準的な理学療法と応用動作である四つ這い・膝立ちを重点的に行った。【結果】 両側のクラッチと右短下肢装具,左長下肢装具を用いて歩行及び階段昇降が自立し,191病日に退院。AISはA,NLIはL1,LEMSは10/3。【考察】 実用歩行獲得が困難とされたL1対麻痺患者でも,四つ這い・膝立ちを重点的に行うことで,クラッチと装具を使用して実用歩行が獲得できる可能性がある。
著者
星 真行 難波 樹央 高橋 寿和 板垣 光子 佐々木 恵子 江森 由香 渡部 美聡 長橋 育恵 宮坂 美和子 相澤 裕矢
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.66-73, 2019 (Released:2019-10-07)
参考文献数
26

【目的】 二次予防対象者に介護予防事業を取り組み,介入前後での身体の痛みの軽減,および痛みの有無による影響について検討することである。【方法】 対象は二次予防対象者164名であり,脱落者及び最終評価を実施できなかった者を除外した148名(男性32名,女性116名)を解析対象とした。週 2 回(全21回)のプログラム介入を行い,介入前後で身体機能評価を実施した。痛みの評価は,Numerical Rating Scale(以下,NRS)を用い,終了時にアンケート調査を実施した。【結果】 NRS得点による介入前後の比較では,痛みの軽減が認められた(p <0.01)。疼痛部位は,膝47%,腰26%の順に多かった。また,介入前後における身体機能の改善が示唆され,痛みによる群間比較において, ファンクショナルリーチ,長座位体前屈では交互作用も認められた。【結論】 介護予防事業に理学療法士が関わることにより,身体の痛みの軽減を図ることが可能であり,痛みの程度によって身体機能の改善にも影響がみられた。
著者
川口 陽亮 尾田 敦 石川 大瑛 鹿内 和也 吉田 深咲
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.106-111, 2017-08-31 (Released:2017-09-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1

【目的】筋疲労に伴う位置覚低下に対するキネシオテープ(Kinesio Tape, KT)の効果を,伸張率を変えて検討することである。【方法】対象を健常大学生29名53脚とし,KTを貼付する高伸張群と低伸張群,KTを貼付しないコントロール群に無作為に振り分けた上で疲労課題の前後で膝関節の位置覚測定を行った。測定方法は,開始肢位を端座位とし,膝関節を設定した角度まで他動伸展させた後,自動伸展により再現させ,誤差を求めた。疲労課題はBIODEXを使用し,120deg/sec,膝屈曲90~15°の範囲で等速性膝伸展運動を50回行わせた。統計はKTを貼付しないコントロール群,低伸張群,高伸張群で 30°・60°についての疲労前と疲労後の再現角度誤差を,Tukey-Kramer法にて比較した。【結果】膝屈曲 60°では全群で疲労後の再現角度誤差が有意に大きくなった(p<0.05)。各群間では再現角度誤差に有意差は認められなかった。【結論】位置覚が筋疲労により低下することが示唆された。また,本研究ではKT貼付の有無や,KTの伸張率の違いによる位置覚への影響は貼付直後でも運動後でも認められなかった。
著者
阿部 玄治 千葉 駿太 玉山 優奈 平野 詩織 向山 和枝 黒後 裕彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.69-72, 2017

<p>【目的】 靴踵部の補強であるヒールカウンター(HC)が,前後方向の立位バランス制御に与える影響を検討する こと。</p><p> 【方法】 健常若年者27名を対象とした。HCなし,またはHCを入れた上靴を履いた条件間で,直立肢位に対しつま先側あるいは踵側へ最大に重心移動した際の足圧中心(COP)の前後方向の移動距離を上靴のサイズで正 規化し比較した。</p><p> 【結果】 前方へのCOP移動距離は,HCなし条件が26.10±0.91%(平均±標準偏差),HCあり条件が23.9±0.94% であった。後方へのCOP移動距離は,HCなし条件が15.88±1.36%,HCあり条件が17.34±1.38%であった。 バランス制御方向とHCの有無との交互作用を認め,後方へのCOP移動距離はHCあり条件がHCなし条件よりも長い傾向を認めた(<i>p</i>=0.062)。 </p><p>【考察】 HCあり条件における後方へのCOP移動距離の増大は,HCが壁の役割を担い踵部の安定性が向上したた めと考えられる。 </p><p>【結語】 若年健常者では,HCは後方への立位バランス制御に貢献することが示唆された。</p>
著者
福田 守 樋口 朝美 冨澤 義志 鈴木 博人 川上 真吾 鈴木 誠 藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.46-54, 2016-08-30 (Released:2016-09-07)
参考文献数
6
被引用文献数
2

【目的】端坐位での振り向き動作における眼球運動,頭頸部,胸腰椎および骨盤の回旋の運動協調性について,目標物までの距離,角度,方向による差異を明らかすることとした。【対象】健常若年者20名を対象とした。【方法】目標物はLED光とし正面を0°として同心円上に30°刻みに150°までの計5箇所に設置した。また,目標物の距離は1mおよび2mとし,動作の方向は左右とした。これらの条件を変えた際の振り向き動作を行い,3次元動作解析装置を用いて,頭頸部,胸腰椎,骨盤の回旋角度を算出した。【結果】全ての体節の回旋到達角度において,目標物までの角度の主効果が有意であった。目標物30°の場合は眼球運動と頭頸部回旋角度に相関を認め,60°~150°では頭頸部と胸腰椎に相関を認めた。また,どの体節も動作開始直後から動きがみられ,頭頸部,胸腰椎,骨盤の順で動きが大きくなっていた。【結語】目標物30°では眼球運動と頭頸部回旋が,目標物60°~150°では頭頸部と胸腰椎回旋が相補し合うことが明らかとなった。
著者
齊藤 恵子 皆方 伸 佐藤 雄一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.35-39, 2015 (Released:2015-07-31)
参考文献数
12

本研究の目的は,当センター回復期リハビリテーション病棟(回リハ病棟)における脳卒中患者の血清アルブミン(Alb)を指標に栄養状態とバランス機能,ADLの関係を調査することである。対象は,当センター回リハ病棟に入棟した初発脳卒中患者58名とした。検討項目は,診療録より後方視的に,入棟時のAlb,入棟時・退院時の体幹・下肢運動年齢検査(MAT),入棟時・退院時の機能的自立度評価(FIM)運動項目合計点,FIM利得,入棟時の年齢,発症から入棟までの日数(入棟日数),在棟日数を抽出した。入棟時のAlb3.5g/dlを基準として対象群を2群に分類し,基準値以上の正常Alb群と基準値未満の低Alb群で各検討項目を比較した。結果,低Alb群は有意に高齢で,入棟日数が有意に長く,入棟時・退院時ともにMAT,FIM運動項目合計点が有意に低値を示した。このことから,回リハ病棟入棟時の低Albは高齢者に多く,低Albではバランス機能やADLが低いレベルに留まる可能性が示唆され,急性期からの栄養管理が重要と考えられた。
著者
岩坂 憂児
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.15-19, 2017-08-31 (Released:2017-09-15)
参考文献数
18

【目的】本研究は運動観察に用いる動画を提示するときの身体の位置が連続的運動学習に影響を与えるかどうかを調べるものである。 【方法】21名の右利き健常成人をランダムに3群(手近位での運動観察群:AON群,手遠位での運動観察群:AOF群,対照群)に分けた。運動課題は左手での連続反応時間課題とし,反応時間を評価指標とした。 プレテストを実施した後,AON群とAOF群に対して他者が課題を実施している動画の観察を,対照群にはモザイク動画を3分間タブレットで視聴させた。またAON群は左手直上,AOF群と対照群は左手から離れ た場所にタブレットを置き,視聴後ポストテストを行った。 【結果】ポストテストでは有意な主効果が認められ,AON群ではAOF群と対照群と比較して反応時間が 有意に速いことが認められた。 【結語】運動観察中の身体の位置は運動学習に影響を与えるということが示唆された。
著者
菊地 明宏 鈴木 博人 本間 秀文 田中 直樹 川上 真吾 藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.97-102, 2016-08-30 (Released:2016-09-07)
参考文献数
9

【目的】端坐位での前下方へのリーチ動作における指先の運動軌道および,胸椎,腰椎,骨盤の角度変化と,各セグメントの寄与を明らかにすることとした。【対象】課題動作に影響を与える腰部と下肢に既往のない,健常若年男性20名とした。【方法】規定した開始姿勢から,足関節リーチと足尖リーチを実施させた。骨指標の3次元座標から,胸椎,腰椎,骨盤の屈曲・前傾角度と指先軌道を算出した。寄与について,4セグメントモデルを作成し,指先軌道の変化量に対して,それぞれの寄与率を算出した。【結果・結語】指先の運動軌道において,足関節リーチは下方へ曲線を描いていたが,足尖リーチでは後半に直線に近い軌道をとった。角度変化は,前半に胸椎および腰椎の運動が,後半に骨盤の運動が大きくなり,滑らかな指先軌道が形成されていることが明らかとなった。寄与について,前半に上肢が,後半に胸椎の寄与が大きい結果となった
著者
佐藤 弘樹 山下 浩樹 関 公輔 佐藤 英雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.84-90, 2016-08-30 (Released:2016-09-07)
参考文献数
15

【目的】側臥位における下側肩甲骨の位置について,端座位と比較し,検証することである。【対象】身体に整形外科的疾患がない健常男性9名(年齢:23.7±1.4歳,身長:172.0±2.2㎝,体重:66.7±7.6㎏)とした。【方法】吉田らの方法を参考に,肩甲骨の位置を測定した。測定肢位は,①端座位上肢下垂位,②端座位左肩関節45°屈曲位,③端座位左肩関節90°屈曲位,④左側臥位左肩関節45°屈曲位,⑤左側臥位左肩関節90°屈曲位の5条件とした。統計処理は,5条件における4距離の平均値についてTukey-Kramerの多重比較検定を用いて比較した(有意水準は5%未満)。【結果】側臥位では端座位と比較して(②と④,③と⑤),肩甲骨が挙上,外転,上方回旋することが示された。【結語】側臥位における下側肩甲骨位置の特性から,ポジショニングの方法に応用が可能と考える。
著者
古川 勉寛 佐々木 広人 藤原 孝之 小沼 亮
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.46-49, 2017-08-31 (Released:2017-09-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

聴覚刺激強度の変化が下肢骨格筋支配の脊髄興奮準位に及ぼす影響を明らかにするために,Hoffman波(以下,H波)を測定した。【方法】:健常成人男性6名(21歳)を対象とした。聴覚刺激は,周波数250Hzの音源を使用して10dBから80dBまで10dB間隔でランダムに刺激した。H波の測定は,右膝窩部から脛骨神経を電気刺激し,同側のヒラメ筋筋腹中央部から導出した。【結果】:H波変化率(%)は,70dBで125%,80dBで142%であった。多重比較検定の結果,10dBと80dB間に有意差が認められた(p<0.05)。
著者
渡邊 慎吾 須賀 康平 小野 修 江川 廉 茂木 崇宏 櫻井 佳宏 小関 忠樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.66-73, 2018-09-01 (Released:2018-09-14)
参考文献数
27

脳卒中後の痙縮は,運動機能の回復を阻害する可能性を有することから,早期に痙縮発症の要因を同定することが重要であると考えられる。そこで,本レビューは脳卒中後早期の痙縮発症の予測因子を調査することを目的とし,論文レビューを実施した。データベースはPubMedを用いた。論文検索は,“spasticity”,“post stroke spasticity”の2つの用語に“stroke”,“cerebrovascular accident”,“CVA”,“predictors”,“risk factors”を組み合わせて実施した。すべての検索は2017年5月22日までに終了した。最終的に15編の論文が採用された。痙縮発症の予測因子は,運動機能に関する報告が最も多かった。その他に,感覚機能,疼痛,年齢等の患者属性,臨床経過および脳の損傷部位が挙げられた。痙縮発症の要因を早期に同定し,リハビリテーションおよび薬物治療を実施することは,さらなる運動機能の回復や介護負担の軽減および治療コスト削減をもたらす可能性がある。
著者
川口 陽亮 尾田 敦 石川 大瑛 横山 寛子 前田 健太郎 伊藤 亮太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.59-65, 2019 (Released:2019-10-07)
参考文献数
22

【目的】 疲労課題後の大腿直筋の筋力低下に対するキネシオテープ(以下,KT)の貼付による影響はテー プ幅の違いによりどのように変化するかを検討することである。【方法】 対象を健常大学生30名とし,対象肢は利き脚とした。コントロール,50mmKT貼付条件(以下, KT50),75mmKT貼付条件(以下,KT75)の3 条件をランダムとし,同一被検者に対する各条件での評価測定は間隔を空けて別日に行った。大腿直筋直上の皮膚にKTを貼付した後,BIODEX®system 4 を用い,膝伸展等尺性運動のピークトルク(PT)測定を行った。その後,ERGOMETER を用いた疲労課題を行い,再度PTの測定を行った。疲労課題の際には平均パワー,ピークパワー,ピーク回転数,ピーク到達時間を測定した。統計解析は,疲労課題の前後それぞれのPT体重比(PTW)とその変化量,疲労課題中の各データを 3 条件間で比較した。3 条件内では疲労前後のPTWを比較した。【結果】 全条件にて疲労後のPTWが疲労前よりも有意に低下していた(p<0.05)。条件間での疲労前後のPTW,変化量,疲労課題中の測定データに有意差はみられなかった。【結論】 本研究の結果から KT の貼付はテープ幅の違いに関わらず疲労による筋力低下,即時的な筋力増 強には影響しないことが示唆された。