- 著者
-
岩﨑 葉子
- 出版者
- 独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
- 雑誌
- アジア経済 (ISSN:00022942)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.4, pp.2-26, 2019-12-15 (Released:2019-12-24)
- 参考文献数
- 32
イランの同業者組合制度は,行政府の側がばらばらに活動する国内の事業者を積極的に束ね,みずから組織化することを義務付けているという点で,競争法を通じて事業者団体による競争制限的な行為を禁止し,市場の公正性を担保しようとする今日の世界的趨勢においてきわめて例外的な事例である。こうした制度が敷かれている背景には,企業間関係が希薄であるがゆえに,相対的に大きな企業による寡占はおろか,事業者による集団的な競争制限行為も生まれにくいというイラン独自の産業組織のあり方が大きく関連している。この意味では同業者組合制度はむしろ,営業活動上における事業者間の非協調的傾向から生じる市場の非効率や混乱を改善する働きが期待できるものである。