著者
島田 和則 勝木 俊雄 大中 みちる 岩本 宏二郎
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.11-21, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
35

人工林の広葉樹林化により植物の多様性がどのように変化したかについて,検証を行うことを目的に以下の研究を行った。暖温帯域の針葉樹人工林が気象害を受けてから広葉樹二次林として自然再生していった林分について,再生0年目から30年目までの植物種数や種構成の長期経年変化について検討した。全体の種数は,気象害を受けた直後の3年間は急増したが,以降は減少し続けた。次に,種構成の経年変化を出現種の生態的特徴から分析するために,出現種を生育環境区分によってタイプ分けし分析した。照葉樹林タイプの種数は,調査期間を通じて増加した。一方,草原タイプなど非森林生の種数は再生初期に増加し,その後減少した。この結果,人工林跡から成立した広葉樹二次林は,攪乱後再生初期では非森林生の種の一時的な増加によって全体の種数が多くなるが,その後は減少していくことが示された。人工林跡から成立した広葉樹二次林の多様性が,攪乱によって増加した非森林生の種に大きく影響されることは,多様性保全を目的とした森林管理で考慮する必要があると考えられた。
著者
島田 和則 勝木 俊雄 岩本 宏二郎 大中 みちる
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.71-84, 2014

1.都市近郊林における植物相の現状や変遷を明らかにするために,多摩森林科学園(旧浅川実験林)において,過去に公表されたフロラリスト(草下・小林1953,林ほか1965),と現在のフロラリスト(勝木ほか2010)を比較し,50年間の変遷について分析した.<BR>2.その結果,過去にのみ記録された分類群は164,現在のみは141,両方で記録された分類群は626と,2割弱の分類群は入れ替わったが総出現分類群数は大きくは変わらなかった.<BR>3.過去にのみ記録された種は現在にのみ記録された種より希少種の割合が高く,現在のみの種は過去のみの種より外来種の割合が高く,質的に変化したことがわかった.生活型からみると,高木の増加,多年草の減少,散布型からみると,被食散布型の増加,水散布型の減少が特徴的であった.
著者
島田 和則
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.293-304, 1994-12-15
被引用文献数
18 1

Patterns of topographical distribution of five pioneer tree species (Idesia polycarpa, Cornus controversa, Zanthoxylum ailanthoides, Euptelea polyandra, Mallotus japonicus) and their tree forms were studied in natural forests on Mt. Takao, Tokyo Metropolitan county, central Japan. The study area was divided into six landform types, four of which were free from human activities (upper side slopes, dells, lower side slopes and foot slopes). Patterns of topographical distribution of each species were explainable by their tree form properties (trunk angle, trunk number and maximum tree height). Such a relationship between the form properties and distribution of trees was due to differences in the disturbance regime (mainly by landslides) of each landform type. Species with higher ability to grow when the trunk is inclined and to develop sprouts were more tolerant of higher disturbance pressure. When taller stands suffered lower disturbance pressure, species with a larger maximum tree height and higher ability to grow below the canopy were at an advantage.
著者
阿部 和時 黒川 潮 浅野 志穂 岡本 隆 松山 康治 落合 博貴 寺嶋 智巳 島田 和則 野口 宏典 大丸 裕武 宮縁 育夫 小川 泰浩
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.91-96, 2002-08-31
被引用文献数
6 4

2000年6月から始まった三宅島の火山活動による多量の降灰で雄山山腹の植生は壊滅的被害を受けた。この影響で泥流災害が島全域で発生し,現在も危険性は非常に高い状態にあると考えられる。本研究では,このような火山降灰地帯が形成された直後の激しい土壌侵食の実態を実証的に明らかにすることを目的とした土壌侵食の発生状況は降灰による森林被害の程度と相関性があると推察されるので,空中写真による森林被害区分を行い,それぞれの区分において現地水路侵食実験で侵食特性を検討した。その結果,降灰が堆積し形成された地表面は流速が20〜35cm/secと早く,浸透性が低いこと,しかし流出土砂量は降灰層中に枝葉が混入した地区よりも少ないこと等が示された。このデータをもとに汎用土壌侵食式(USLE)によって相対的な面状侵食の危険度を,火口を中心とした14.5km^2の範囲について示した。
著者
島田 和則
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.159-167, 1999
参考文献数
31
被引用文献数
1

&nbsp;&nbsp;1.1992年9月に神津島天上山の低木林で発生した林野火災跡地において,5年間の群落動態を継続調査し,その特性,特に地表攪乱の影響について考察した. <BR>&nbsp;&nbsp;2.被災地域の植被率は5年を経過しても平均40%ほどで,平均90%を超える無被害地と比べて低い状態にとどまっていた.被災後萌芽再生した木本個体は,その後の枯死率は低く5年間順調に生育を続けていた.萌芽再生した前生個体の間には十分裸地空間があったが,実生や地下部からの徒長による木本の新規加入は少なく,毎年少数の個体が侵入・定着するにとどまった. <BR>&nbsp;&nbsp;3.天上山の地表は,多孔質流紋岩が厚く一様に風化した砂状の表層基質に被われており,植被を失った被災地において,この砂状の表土の侵食が顕著であることが観察された.侵食による表土の移動は,実生の定着に影響していると予想されたので,実生を想定した2種類のサイズの木製ピンを設置して2年間追跡調査を行った.その結果,叢生株・露岩等の有無,ピンのサイズの大小により被害に差が認められた.これらより,実生の定着初期段階で,表土の移動による攪乱圧が強く働いていることが予測され,上方に何かシェルターになるものがあるか,または個体サイズが大きければ表土の移動による死亡率が低いことが示唆された. <BR>&nbsp;&nbsp;4.もともと表土が侵食を受けやすく,しかも台風の常襲地帯である本調査地においては,一度植被を失うと表土の安定を失い植生の回復が困難になると思われる.被災により裸地化した空間への木本種の定着は細々と進行するにとどまり,回復には長期間を要すると考えられる.