著者
木村 学 堤 浩之 早坂 康隆 鈴木 康弘 瀬野 徹三 嶋本 利彦 渡辺 満久 榊原 正幸
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

極東ロシアから日本列島に至る地域は被害地震が多発する地域である。近年これらの地震は北米・ユーラシア両プレート間の収束運動もしくはその他のいくつかのマイクロプレートが関与したプレート境界でのもの、ととらえられるようになった。相次ぐ被害地震にもかかわらず、ネオテクトニクスに関する研究はこれまで政治的・地理的・気候的制約があって進んでいない。そこで新年度に続き、極東ロシア、特にサハリン島北部地域の総合的なネオテクトニクス調査研究を実施した。具体的に以下の研究を行った。1. 航空写真による変動地形、活断層解析。特にサハリン島、中〜南部に分布、発達する活断層について変位のセンス及び変位置について解析した。2. 変動地形活断層の現地調査。特に中部及び南部サハリン。3. 地質学的調査。航空写真によって明らかになった活断層の累積変位、変位速度を明らかにするために現地で活断層露頭や、樹木成長の記録を調査した。サハリン変動帯最北部のシュミット半島にて、中生代来のオフィオライト、及び変形した堆積岩及びスレート帯について、構造解析を実施した。その結果、第三紀後期に北東南西方向の圧縮を受けて、地質体は激しく変形していることが明らかとなった。この変形様式は現在進行中の地殻変動と調和的である。従って、サハリン北部の地殻変動は第三紀以降、右横ずれの同じセンスのもが累積していることが明らかとなった。
著者
嶋本 利彦 MITCHELL Thomas Matthew MITCELL Thomas Matthew
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は,断層帯の内部構造,力学的性質,浸透率のような水理学的性質に関する構造などを調べて,地震の発生過程および地下深部における流体移動の定量的な解析に必要な断層モデルを提示することである.南米チリのアタカマ断層では,断層帯の内部構造と断層帯に接する母岩中のダメージ分布をより詳細に解析して論文で報告した(Mitchell & Faulkner,2009)。この研究では,顕微鏡スケールの微小クラックから地質断層に至る5桁におよぶ規模で,ダメージ分布が定量的に解析された.その結果,ダメージの程度を示すクラック密度は断層コアからの距離のべき乗に比例して減少することが明らかになった.断層帯のダメージ分布がこのように詳細に調べられたのは初めてである.今後クラック密度と浸透率,弾性波速度などの関係を決めることによって,断層帯全体の浸透率・速度構造モデルを決める道が開けた.有馬-高槻構造線と米国カリフォルニアのサンアンドレアス断層では,衝撃粉砕岩の野外調査と変形組織の解析をおこなって,結果を国際会議で報告した(論文は現在執筆中).衝撃粉砕岩(pulverized rock)とは,著しく粉砕しているものの,母岩の組織(花崗岩の等粒状組織など)を残していて,通常の断層のような著しい変形をうけていない岩石のことである.最近命名されて何故そのような岩石が断層沿いに形成されるかが議論されている.本研究では,両断層とも,断層コアの両側で断層帯の幅が著しく違うこと,破砕物の粒径分布で共通性が認められることなどを見いだした.その他,蛇紋岩断層ガウジ',無水石膏とドロマイトからなる断層ガウジの高速摩擦実験を共同でおこない,断層は高速時に大きな強度低下を起こすこと,摩擦熱で層状鉱物からなる断層ガウジは脱水・脱ガス分解をして天然の組織とよく似た剪断組織が形成されることを見いだした(学会で発表).