著者
川井 充
出版者
経営史学会
雑誌
経営史学 (ISSN:03869113)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.51-78,101, 2005-09-25 (Released:2009-11-06)

Muto Sanji (武藤山治) (1867-1934) was one of the greatest Japanese business leaders in the early 20th century. He succeeded in managing the Kanegafuti Spinning Company (鐘淵紡績株式会社), which developed significantly under his prominent leadership. He was well-known for his paternalism in the company and distinguished for his dignified stance to the shareholders. This paper attempts to find how he could get the shareholders' support for his welfare works which cost much money.Muto knew that he must give the employees good working environments and conditions to induce them to work hard. He made all the possible improvements for the employees and he himself worked hard with them. On the other hand, he rejected any unreasonable request for dividend-increase and refused almost all the proposals from the shareholders to increase capital because they were often schemed just to get capital gain.The company grew better-off owing to his good management and came to able to pay a high dividend to the shareholders. Then Muto began to pay a higher dividend than those of other companies in return for the shareholders' cooperation for his policy to avoid unreasonable capital increase, and he could build the complete welfare facilities with their consents.This paper will give some hints to the Japanese managers struggling to create a new business model today.
著者
鈴木 幹也 川井 充
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.482-485, 2005-09-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
8

進行性核上性麻痺は, 核上性眼球運動障害, 左右差のないパーキンソニズム, 高次機能障害などを呈する変性疾患である. 特徴的症状や, 頭部MRIで, 第3脳室の拡大, 中脳・橋被蓋の萎縮があれば診断に苦慮しないが, 発症早期では目立たない例があり, 他のパーキンソニズムを来たす疾患との鑑別が問題になる. パーキンソン病は, 一側優位の静止時振戦・筋強剛で発症し, 進行すると無動・易転倒性がみられる. MIBG心筋シンチの後期相での取り込みの低下が診断に有用である. 多系統萎縮症は, パーキンソニズム, 小脳失調, 自律神経症状が特徴的だが, パーキンソニズムが主体の線条体黒質変性症は, 自律神経症状が目立たないと診断が困難なことがある. 頭部MRI T2強調画像での被殻外縁のスリット状高信号領域が特徴である. 大脳皮質基底核変性症は, 失行などの皮質症状をともなう. どの疾患も特徴的な症状・画像変化を示さない例では診断に苦慮することがある.
著者
南澤 甫 川井 充 今野 義孝
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.199-203, 2010-09

目的 本研究は,筋萎縮性側索硬化症および多系統萎縮症の発症から診断確定までの間に患者が経験する心理的体験を捉え,診断未確定期における患者の心理状態を明らかにして,医療供給体制や難病患者支援体制のより良いあり方を考える資料を提供することを目的とする.方法 国立病院機構東埼玉病院(以下,当院という)を受診中で,研究参加に同意を得られた患者に対して診療録調査と半構造化面接を行う.半構造化面接では,1)初めて症状に気づいたときの気持ち,2)医療機関を受診したときの説明とそれについてどのように感じたか,3)最終診断の告知をどのように受けたか,4)現在の療養生活をどのように捉えているか,5)人生に対する考え方,等を自由に語ってもらう.結果 診療録調査から,確定診断に至るまでの年月として,最低でも二年,長ければ十年以上を要するということが明らかとなった.半構造化面接については,初めて症状に気づいたときの気持ちとして,「こんな重大な病気だとは思わなかった」といった語りが得られた.医療機関を受診したときの説明とそれについてどのように感じ,受け止めたかについては,「わかりにくい部分があった」といった語りが得られた.最終診断の告知をどのように受けたか,またそれについてどのように感じたかについては,「これで人生終わりだと思った」といった語りが得られた.現在の療養生活をどのように捉えているかについては,「自分の今後が知りたい」といった語りが得られた.人生に対する考え方については,「人に迷惑をかけない」といった語りが得られた.結論 診療録調査から,初期段階において神経難病の可能性を推測することは,患者はもちろんであるが医師にも著しく困難であると考えられた.つまり,診断未確定期における患者は,症状を自覚してはいるが,それを神経難病と結び付けることはほとんどないと考えられる.それは,医師も同様である可能性が示唆された.一度の受診で正確な診断が下されることはなく,患者は進行する症状となかなかはっきりしない病名に不安やいらだちを覚えていることがうかがわれた.また,医師による説明に患者は満足していないことが明らかになった.個人差という言葉や,専門用語に隠されて自身の病気の実態が見えないという患者の訴えが聞かれた.患者の求める情報と,医師による説明とが一致しないことへの不満も聞かれた.一方,同じ内容を伝えるとしても,患者に分かりやすいように伝えようとする医師の姿勢は患者に伝わるのであり,そこに患者は信頼を寄せるということが考えられた.