著者
山口 二郎 マグル アンソニー ヘルド デヴィット 川崎 修 MCGREW Tony HELD David アンソニー マグル デヴィッド ヘルド アンソニー マグルー デヴィッド・ヘルド ヘルド
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

研究計画の最終年度に当たる今年は、経済のグローバル化が各国の国内政治体制に与える影響について総括的なまとめを行い、ポスト主権国家時代における民主主義体制の新たなモデルの構築を行うことが目標であった。プラザ合意およびガットからWTO(世界貿易機構)への移行と過去十年、先進国の政治システムを取り巻く国際環境は大きく変動し、各国の政策を規定する独立変数としてこれらの国際機構、非制度的な国際協力システム、さらに条約の存在がきわめて重要な意味を持つに至った。今回の比較研究の結果得られた最大の知見は、これらの国際的な政策の標準、規格が各国に浸透することによって、従来の政治的な対立軸とは違った次元で新たな政治的対抗軸が出現しつつあるという事実であった。経済政策の関する国際的標準の浸透をグローバル化と呼んでおく。グローバル化の主たる柱は、政府規制の縮小、財・サービスの貿易の自由化、企業に対する税制の下方への共通化である。一方で各国の指導者レベルでは、サミット、G7首脳会議、APECなどこれらの政策の国際的標準かを協議する機会が近年ますます増えており、指導者におけるグローバル化へのコミットメントは深まりつつある。しかし、グローバル化は各国の国内政治において強いリパ-カッションを引き起こし、それぞれの国の政党システムや政党の支持基盤を大きく揺るがすに至った。日本については山口が経済政策、財政・金融政策についてケーススタディを行った。そこでは、いわゆる55年体制の崩壊について、当時の与党の内粉など政党内の政治力学的要因によって説明できるとする一般的見解に対して、巨視的に見た場合、自民党政権による国内の各セクターに対する保護と引き替えに成立・持続してきた55年体制が、グローバル化によってその基盤を堀り崩されてきている点に注目すべきことを指摘した。もちろん、政治変動の引き金は与党内の権力抗争が引いたにせよ、グローバル化を推進することによって利益を得るセクターと政治力を使ってグローバル化を阻止することに全力を挙げるセクターとの間の矛盾の中で政党自体が意志決定不全状態に陥っている。この点は、55年体制以後の政党再編成の中でも中心的な争点となる。ヨーロッパ、アメリカについてヘルド、マグル-が事例研究をふまえた分析を加えた。ヨーロッパの場合、EUという地域レベルでのセミ・グローバル化が進み、国内政治へのショックが小幅なものになった。しかし、通貨統合については各国で国益優先主義と統合優先主義との対立が起こり、EUの統治能力が問われている。アメリカでは、NAFTAの締結によってグローバル化はさらに拍車がかかり、国内政治の基盤も変化した。農民組合、労働組合、製造業者など伝統的に影響力を持ったセクターは政治的に交代し、民生、共和を問わず新しい指導者はグローバル化によって利益を得るセクターを支持基盤に取り込もうとしている。グローバル化から落ちこぼれるセクターは第三政党の結成や、共和党内際保守派(孤立主義派)への支持に向かっている。いずれの場合でも、既存の政党はグローバル化に対して一致した対応をとることはできず、政党横断的な形でグローバル化に対する態度が分かれていることが共通している。1990年代後半に日本のみならず、ヨーロッパ、北米でそれぞれ政党政治の危機がいわれ、政党再編成の可能性が論じられる背景には、グローバル化に対して政党が共通の利益を発見できないという事実が損するという点で参加者の見解が一致した。こうした事態は、従来の政党政治や民主主義に関する古典的なモデルの限界を物語る。川崎はこうした変化を受けた民主主義、政治権力の再編成について試論を提示した。政治権力を2層に分け、古典的な資源配分にかかわる権力のシステムと、こうした各国の権力システムの存立の基盤自体を操作するハイパー・システムとしての権力を想定する必要があるというものである。
著者
川崎 修
出版者
北海道大学法学部
雑誌
北大法学論集 (ISSN:03855953)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.261-280, 1993-03-31
著者
川崎 修
出版者
政治思想学会
雑誌
政治思想研究 (ISSN:1346924X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.82-109, 2006-05-01 (Released:2012-11-20)
被引用文献数
1
著者
川崎 修
出版者
北海道大学法学部
雑誌
北大法学論集 (ISSN:03855953)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.p1535-1554,肖像巻頭1枚, 1993-03
著者
川崎 修
出版者
立教大学
雑誌
立教法学 (ISSN:04851250)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.227-234, 1999-03-31
著者
川崎 修 神長 百合子 中村 敏子 岡 克彦 町村 匡子 林田 清明
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

フェミニズムを「現代市民社会論」の一環としてとらえ直すことを通じて、女性や家族をめぐる様々な問題を検討し、同時にポスト近代における新たな政治のあり方について研究を進めた。具体的には、以下の三つの観点から共同研究およびそれらの統合を行った。<1 基礎的研究>昨年度に続き、法学・政治学・現代正義論・政治思想史・法思想史・文学の各分野において,女性がどのように位置づけられてきたかを検討した。そこでは、多くの分野において女性をめぐる様々な問題が充分に検討されずに、理論的にも死角となってきていたことが明らかになった。この死角を埋めるべく、市民論・権利論などの視角から、女性や家族をめぐる問題を法や政治に取り込むためことを目指して研究を進めた。その過程で、女性や家族をめぐる諸問題は、それ自体として検討することは言うまでもなく、国際化と多文化主義の流れのなかで他のマイノリティーがかかえる問題とも関連させた上で、理論化すべきであることが強く意識されるに至った。<2 応用的研究>女性の政治参加のあり方・社会保障制度における女性の位置・差別と女性の問題・韓国の婚姻制度における諸問題・多文化主義と国家の中立性などの観点から、具体的な問題をとりあげ、既存の制度がかかえる問題点を明らかにするとともに、現代により相応しい制度のあり方の設計をも射程に入れた研究を行った。その過程で、個別の制度の検討・評価だけではなく、国際比較や比較法的研究や、例えば社会保障制度と民事的な扶養責任の関係などこれまで別の領域と見なされてきた問題・制度の間での比較・検討など、より多角的な研究が必要であることが痛感された。<3 研究の統合>今年度は,助成額が少額であったため、札幌・東京・名古屋を相互に訪問するなどの研究交流や、研究代表者・研究分担者が一堂に会しての研究会等は行えなかった。従って、情報の交換・各自の研究の統合は専らインターネット等を介してのものとなった。
著者
川崎 修
出版者
日本法哲学会
雑誌
法哲学年報 (ISSN:03872890)
巻号頁・発行日
vol.1990, pp.71-92, 1991-10-30 (Released:2008-11-17)
参考文献数
64
著者
Hare Richard M. 川崎 修
出版者
岩波書店
雑誌
思想 (ISSN:03862755)
巻号頁・発行日
no.739, pp.p118-133, 1986-01
著者
中野 勝郎 杉田 敦 細井 保 名和田 是彦 川崎 修 山崎 望 川原 彰
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、インターナショナル・ミニマムを世界共通課題としてとらえ、普遍的な立場からこれを国際レベルの政治機構を通じて組織・制御することの妥当性を問うた。またナショナル・ミニマムを国レベルの政府によって組織・制御する具体的な制度が問われ、分節的な構成による組織・制御が展望される一方で、私たちが有する社会・政府観の再検討が提起された。全体として、国際レベルから地域レベルへといたる多元・重層的な政治を構想することができたのではないかと考える。