著者
川瀬 俊夫
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.347-352, 2001-12-28
被引用文献数
3 1

歯周病治療の多くは,歯周組織再生を目指し,再生医工学を応用している。GTR膜を用いた歯周組織再生法は早い時期から臨床の現場で行われている。生体材料学的見地からGTR膜を評価し,非吸収性の膜から吸収性の膜への開発がなされてきた。その中でも,異種動物由来の成分を材料にしているものから,人工合成による材料に移行している,あるいはその気配が感じられる。一例をあげればポリ-L-乳酸に期待がもたれている。これと平行して,GTRの一つであるエナメル基質タンパク質(エムドゲイン^<[O!R]>)による再生療法が開発され,臨床的には良好な成績を収めている。術式は異なるものの,歯根膜の組織性幹細胞の動態が鍵を握っている点では共通している。すなわち,この組繊性幹細胞がどのように歯周組織の線維芽細胞,骨芽細胞そしてセメント芽細胞に分化するのかを,ニッチェの概念を導入し,その実態に迫る必要がある。エナメル基質タンパク質が作用するには,第一に,歯根膜の細胞の存在が必須である。それは歯根膜の細胞自ら,多くの組織再生因子を産生しているので,エナメル基質タンパク質はこれらの因子を介して骨髄由来の間葉系幹細胞に働き,歯根膜の組織性幹細胞を骨系の細胞に分化誘導するものと思われる。
著者
木下 靭彦 川瀬 俊夫 小園 知 田畑 泰彦 横矢 重俊 根岸 秀幸
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1.生吸収性scaffoldの作成.Collagen溶液にPGA繊維を加え、凍結乾燥と熱脱水架橋により、collagen spongeよりも強度と細胞侵入性に優れたPGA/collagen spongeを開発した.さらに、これにUV処理を加えることにより強度の高いPGA/collagen(UV)sponge)を得た.2.骨髄間葉系幹細胞(BMSC)の増殖、分化におけるDexamethasone(Dex)、bFGFの効果.ラットBMSCの単層培養で検討したころ、DexとbFGFはそれぞれALPase活性と細胞増殖を促進し、同時併用はALPase活性に相乗効果とbone noduleの活発な形成を示した.3.生体吸収性scaffoldsにおけるBMSCの増殖、分化能.ラットBMSCをPGA/collagen sponge, PGA/collagen(UV)spongeで三次元培養したところ、(1)両spongeとも培養後の収縮が軽度で、pore構造が良好に保たれ、sponge内部への細胞の侵入が認められた。(2)PGA/Collagen(UV)Spongeではcollagenがより多く残り、ポア内での細胞の接着,細胞外マトリックスの形成が良好であった。(3)細胞増殖とALPase活性はPGA/collagen(UV)sponge群で最も高生く、scaffoldとしての有用性が示唆された.4.BMSCの三次元培養骨の骨形成能.1)各種培地で培養したラットBMSCとβ-TCPの複合体を、同系ラットの背部皮下に移植したところ、Dex+βグリセロリン酸+bFGF添加培養液群で良好な骨形成がみられた。2)上記BMSC/β-TCPの複合体を成犬下顎骨区域切除部に自家移植したが、欠損部の骨連続性を回復できなかった。BMSCの培養期間及び骨形成を促進する生理活性因子の適切な局所導入法の確立が検討課題とされた。