著者
田畑 泰彦
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.34-46, 2015-01-25 (Released:2015-04-25)
参考文献数
47

再生医療とは、からだ本来のもつ自然治癒力を高める医療である。この自然治癒力の基である細胞の増殖、分化能力を高めることで、生体組織の再生修復を実現する。再生医療は再生治療と再生研究からなっている。細胞力を活用した先進治療が再生治療である。再生研究は次世代の治療を科学的に支える役割をもち、細胞能力を調べる細胞研究と能力の高い細胞を用いた創薬研究からなる。治療と研究のいずれに対しても、細胞能力を高める周辺環境を作り与えるためのバイオマテリアル技術が必要不可欠となっている。 本稿では、再生医療(再生治療と再生研究)におけるバイオマテリアル技術、特にDDS技術の重要性と必要性について述べる。
著者
山本 雅哉 田畑 泰彦
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.110-117, 2005-03-10 (Released:2008-12-09)
参考文献数
26
被引用文献数
1

現在, 生体組織の再生誘導能を介した治療(外科的再生医療)が試みられている. 一方, 内科的な難治性慢性疾患の一つである線維性疾患における細胞, 生体シグナル, および組織再生修復に関する基礎生物医学が進歩している. そこで, これらの分子メカニズムに基づいた生体組織の再生誘導能を利用した, 線維性慢性疾患の内科的再生誘導治療(再生医療)が可能となっている. たとえば, 線維性組織をドラッグデリバリーシステムを利用して, 効率よく消化分解させる. 消化分解された部位は, その周辺の健康な組織の再生誘導能力により再生修復される. 本稿では, 線維性慢性疾患に対する内科的再生医療のアイデアを具体例を示しながら説明する.
著者
田畑 泰彦 林 壽郎 筏 義人
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究の目的は、細胞の分化増殖を促す細胞増殖因子を材料とうまく組み合わせることにより、積極的に細胞を増殖させる機能を備えた生体材料を開発することである。つまり、細胞増殖因子の徐放化技術とこれまでの人工材料とを複合化することによる生体材料の創製を試みる。そのため、その第一段階としての、細胞増殖因子の徐放化の検討を行った。この徐放化技術により、増殖因子のin vivoでの安定性の向上、ならびにその作用を有効に発揮させることができる。そこで、平成6年度には、増殖因子を徐放化するための高分子ハイドロゲルの調整、ならびにハイドロゲルからのモデルタンパク質の徐放化を調べた。タンパク質はその環境の変化により容易に変性失活することから、まず、架橋ハイドロゲルを作製し、その後、タンパク質をハイドロゲル内に含浸させる方法によりタンパク質含有ハイドロゲル製剤を得た。平成7年度においてはハイドロゲル用の生体内分解吸収性の高分子としてゼラチンを取り上げ、グルタルアルデヒドにて化学架橋することによりゼラチンハイドロゲルを作製した。これらの架橋試薬ならびにゼラチンの濃度を変化させることにより、ゼラチンハイドロゲルの分解性はコントロール可能であった。ハイドロゲルからの塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)の徐放を試みたところ、ハイドロゲルの分解とともにbFGFが徐放され、その徐放パターンがハイドロゲルの含水率、つまり分解性により変化することがわかった。本年度はbFGF含浸ゼラチンハイドロゲルから徐放されるbFGFの生物活性について検討した。その一つの方法として、bFGF含浸ゲルをマウス皮下に埋入した後の血管新生効果を評価した。bFGFの水溶液投与群においては全く血管新生が認められなかったのに対して、bFGF含浸ハイドロゲルの周辺には有意な血管の新生が認められ、ハイドロゲルから徐放されたbFGFの生物活性が残存していることが確かめられた。また、微粒子状のゼラチンハイドロゲルを用いた場合にも、同様にbFGFの血管新生作用の増強が見られた。
著者
城 潤一郎 三島 史人 武田 真一 山本 雅哉 村垣 善浩 伊関 洋 佐保 典英 窪田 純 佐々木 明 西嶋 茂宏 田畑 泰彦
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.558-568, 2007 (Released:2007-12-13)
参考文献数
5
被引用文献数
7 6

次世代DDS型治療システムとは,従来のDDS治療効果をさらに向上させるために,外部エネルギーをDDS技術と融合させる新しい技術・方法論である.この新治療システムによって,体内の深部にある病気を治療できるであろう.本稿では,磁場とDDSとを組み合わせた,磁気誘導DDSによる次世代治療システムを実現させるために必要となる技術要素を概説するとともに,その治療ポテンシャルについて述べる.
著者
山田 正敏 田畑 泰彦
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.238-246, 2005 (Released:2007-01-19)
参考文献数
31
被引用文献数
1
著者
中原 貴 中村 達雄 田畑 泰彦 江藤 一洋 清水 慶彦
出版者
日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症・再生 : 日本炎症・再生医学会雑誌 = Inflammation and regeneration (ISSN:13468022)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.116-121, 2003-03-10
参考文献数
26
被引用文献数
3 2

Our strategy for tissue regeneration is to induce maximum intrinsic healing potential at the site of a tissue defect, applying the elements of tissue engineering. Regeneration of periodontal tissues occurs through the combined application of a collagen sponge scaffold and gelatin microspheres incorporating basic fibroblast growth factor (bFGF) for controlled release. This &ldquo;sandwich membrane&rdquo; with or without bFGF (100&mu;g) was applied to a three-walled alveolar bone defect (3 x 4 x 4 mm) in nine dogs. Periodontal tissues, both hard and soft, treated with bFGF were effectively regenerated four weeks after the operation with functional recovery of the periodontal ligament in parts. Next, the effect of combining cells with the treatment was evaluated. Periodontal fenestration defects (6 x 4 mm) were created bilaterally in the maxillary canines of six dogs. One of these was filled with the collagen sponge scaffold seeded with autologous periodontal ligament-derived cells (3 x 10<sup>5</sup>), and the other was left empty. After four weeks, on the cell-seeded side, regeneration of the cementum was observed uniformly on the root surfaces, indicating that the seeded cells had formed new cementum. Our findings suggest a promising new approach to periodontal regeneration that is based upon <I>in situ</I> tissue engineering.
著者
木下 靭彦 川瀬 俊夫 小園 知 田畑 泰彦 横矢 重俊 根岸 秀幸
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1.生吸収性scaffoldの作成.Collagen溶液にPGA繊維を加え、凍結乾燥と熱脱水架橋により、collagen spongeよりも強度と細胞侵入性に優れたPGA/collagen spongeを開発した.さらに、これにUV処理を加えることにより強度の高いPGA/collagen(UV)sponge)を得た.2.骨髄間葉系幹細胞(BMSC)の増殖、分化におけるDexamethasone(Dex)、bFGFの効果.ラットBMSCの単層培養で検討したころ、DexとbFGFはそれぞれALPase活性と細胞増殖を促進し、同時併用はALPase活性に相乗効果とbone noduleの活発な形成を示した.3.生体吸収性scaffoldsにおけるBMSCの増殖、分化能.ラットBMSCをPGA/collagen sponge, PGA/collagen(UV)spongeで三次元培養したところ、(1)両spongeとも培養後の収縮が軽度で、pore構造が良好に保たれ、sponge内部への細胞の侵入が認められた。(2)PGA/Collagen(UV)Spongeではcollagenがより多く残り、ポア内での細胞の接着,細胞外マトリックスの形成が良好であった。(3)細胞増殖とALPase活性はPGA/collagen(UV)sponge群で最も高生く、scaffoldとしての有用性が示唆された.4.BMSCの三次元培養骨の骨形成能.1)各種培地で培養したラットBMSCとβ-TCPの複合体を、同系ラットの背部皮下に移植したところ、Dex+βグリセロリン酸+bFGF添加培養液群で良好な骨形成がみられた。2)上記BMSC/β-TCPの複合体を成犬下顎骨区域切除部に自家移植したが、欠損部の骨連続性を回復できなかった。BMSCの培養期間及び骨形成を促進する生理活性因子の適切な局所導入法の確立が検討課題とされた。
著者
矢谷 博文 江草 宏 田畑 泰彦 田畑 泰彦
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,チタンインプラント埋入部周辺の骨組織再生を誘導するための基盤技術を確立することを目的に行われた。チタンインプラントに設けた内空に生理活性物質(b-FGF)を徐放するゼラチンスポンジ生体材料を組み込むことにより,埋入周囲における骨組織新生の誘導が可能であることが明らかとなった。また,骨組織再生を誘導する合成ペプチドおよび小分子化合物を特定し,これらの骨組織再生における役割を明らかにした。