著者
清澤 研吉 川真田 樹人 半田 宏
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

アセトアミノフェンは副作用の少ない解熱鎮痛薬として使用されている薬剤である.しかしその作用機序は未だに不明である。そこでアセトアミノフェンの薬剤標的タンパクを網羅的に探索し作用機序解明を目指した.アセトアミノフェン合成物とHela細胞破砕液を結合反応させ,磁性分離によりタンパクを抽出しアセトアミノフェンと結合するタンパクを同定した.得られた標的タンパクは体温の恒常性に関与するGSK-3βであった.そこで発熱モデルを用いてアセトアミノフェンの解熱効果を確認した結果,アセトアミノフェンはGSK-3βを抑制することで解熱作用を発揮する可能性が示唆された.
著者
佐藤 紀 宮部 雅幸 川真田 樹人 中江 裕里 表 圭一 並木 昭義
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.15, no.9, pp.616-619, 1995-11-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
6

咽喉頭全摘出術患者10名にリドカインを用いて頸部硬膜外麻酔を施行し,反復投与による血漿リドカイン濃度の推移を検討した.笑気酸素-セボフルランを用いた全身麻酔下で,初回に20万倍エピネフリン添加2%リドカイン3mg/kgを投与し,1時間後より1時間ごとに20万倍エピネフリン添加1.5%リドカインを循環動態に応じて1~2mg/kg追加投与した.初回投与後,血漿リドカイン濃度は15分でピークに達し,追加投与直前の1時間後に最低となった.初回投与3.5時間後に2.6±0.6 (SD) μg/mlに達した後は,およそこの血漿中濃度で安定した.長時間にわたる頸部手術における頸部硬膜外麻酔併用全身麻酔では,安全なリドカイン血漿濃度を維持できることが示された.
著者
石田 高志 関口 剛美 川真田 樹人
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.53-62, 2018-06-25 (Released:2018-06-29)
参考文献数
57

変形性関節症をはじめとする関節炎は,移動時に痛みが増強するため移動機能障害を招き,患者のQOLを著しく低下させることが問題となっている.関節炎の痛みの薬物療法として消炎鎮痛薬が用いられるが,長期投与による腎臓や消化管への副作用から,関節炎による痛みのメカニズムに基づいた,有効かつ安全な新たな治療法の開発が求められている.関節炎では,滑膜線維芽細胞や軟骨細胞からのIL-1やTNF-αをはじめとする各種炎症性サイトカインの放出が起こり,軟骨の変性や骨増生が起こる.炎症は関節内のみにとどまらず,関節周囲組織にも広範囲に波及する.慢性的な炎症に末梢神経や中枢神経における可塑的変化が生じ神経障害性疼痛の側面も持つようになり,痛みのメカニズムは複合的となる.さらに関節炎患者では,関節内の炎症や骨破壊だけでなく,骨髄内病変の出現により痛みが増強することが知られている.したがって関節炎では,関節・骨・骨髄の病変が相互に作用し,複合的なメカニズムにより痛みが増強する.本稿ではまず関節炎に伴う複合的な痛みのメカニズムを概説する.次いで,痛みのメカニズムに基づいた新たな鎮痛薬・鎮痛法について解説する.