著者
工藤 明 猪早 敬二 竹下 淳
出版者
東京工業大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2000

我々は、細胞間接着分子カドヘリンに骨芽細胞分化制御機能があることを報告する。各種間葉系細胞株におけるカドヘリンの発現を調べた結果、各細胞株はそれぞれが独特なカドヘリンの発現様式を持っており、骨芽細胞系譜では、OBカドヘリン(カドヘリン-11)およびNカドヘリンを発現していることがわかった。同一細胞において複数種のカドヘリンが発現することの意味を調べるために、頭頂骨骨芽細胞と同程度にOBおよびNカドヘリンを発現させたL細胞(L-OB/N)ならびに、それぞれ単独で発現させたL細胞(L-OB,L-N,L-MOCK)を作製した。細胞染色の結果、OBとNカドヘリンは、それぞれが独立してアドヘレンスジャンクションに局在し、共に細胞接着に寄与していると考えられた。また、L-OB/Nにおいては骨芽細胞分化マーカーであるALP,Osteocalcinの発現誘導および骨芽細胞分化のマスター遺伝子であるCbfalの発現上昇が確認された。L-OBでは微弱ながらALPの発現が確認でき、L-N,L-MOCKでは全くそれら発現は確認されなかった。以上のことよりOBカドヘリンは骨芽細胞分化を方向付けし、Nカドヘリンはその作用を増強すると考えられた。NIH3T3においても同様の実験を試みたところALP,Osteocalcinの発現誘導は確認出来なかったが、FGFR2の発現が上昇し、L-OB/Nにおいても同様に発現上昇が確認された。FGFR2は、突然変異が骨格系に多くの異常を示し、Osteopontin発現上昇以前の骨芽細胞前駆細胞において発現することから、骨芽細胞初期分化に重要であると考えられている。これらのことより、OBとNカドヘリンは、未分化な骨芽細胞前駆細胞の細胞分化運命を決定していると考えられる。今回の結果は、複雑な細胞間相互作用が複数種のカドヘリンのよる細胞間認識の結果であると共に、細胞間認識による細胞分化決定機構の存在を示唆するものである。
著者
武田 洋幸 工藤 明
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

2006年までに、メダカドラフトゲノム(2007)、および詳細なSNP地図、BACライブラリー等の情報が充実し、メダカ突然変異体から原因遺伝子同定の労力と時間は飛躍的に減少した。2005から2009年の間に、武田研究室および工藤研究室において、それぞれ9系統(肝臓、体軸形成、原腸形成、左右軸変異体、内耳形成)と15系統(心臓、血球、血管、椎骨、頭蓋・ヒレ骨形成、ヒレ形成変異体、ヒレ再生)の原因遺伝子を特定し、目標を達成した。
著者
中村 由美子 杉本 晃子 赤羽 衣里子 澁谷 泰秀 下山 裕子 米谷 真紀子 小山 真貴子 工藤 明美
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.45-52, 2006-06-30
被引用文献数
1

子育て期の家族は子どもの成長・発達に伴い、様々な変化に対応しなければならない。家族のライフサイクルからみた思春期の子どもをもつ家族は、家族の発達段階における「教育期」にあたり、現代の思春期の子どもが抱える社会問題も踏まえて、家族がこの時期の発達段階を移行するためには危機的な状況も多く、社会的なサポートが必要であると考えられる。そこで、本研究では、独自に開発した尺度を用いて、思春期の子どもをもつ家族の家族機能を評価してその特徴を明らかにし、社会的サポートを含めた家族への看護に関する示唆を得ることを目的とした。A町に住む中学生の子どもをもつ463名の父母を対象に『家族機能』、『自己効力感』、『QOL』について測定した結果、家族機能においては「絆」という情緒的機能が高く、また「役割分担」の機能が低いことが明らかとなった。『自己効力感』では、この時期の父母ともに「能力の社会的位置づけ」が低く、思春期の子どもをもつ家族の発達課題である職業生活や夫婦生活の見直しからの影響が推測されるなど家族のライフサイクルの特徴がうかがえる結果であった。父母間の比較においては、『自己効力感』、『家族機能』ともに母親が低値であり、小さな子どもをもつ養育期と同様に母親の負担が大きいことが推測された。『QOL』では、母親の「友人関係」が重要であり、友人を作る場の確保など思春期にある家族の家族機能の特徴をふまえて地域保健活動や家族看護実践を行っていく必要性が示唆された。