著者
蔵治 光一郎 市栄 智明
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.95-107, 2006
被引用文献数
2

北ボルネオ(マレイシア・サバ州及びサラワク州)の10地点においてマレイシア気象サービスにより過去最長51年間にわたり観測された一般気象データを用いて,北ボルネオ一般気象の季節変動について検討した.その結果,気温,湿度,降水量,風速,風向,日射量,蒸発量などが明瞭な季節変動をすることが明らかになった.特に降水量にはかなり顕著な季節変動があることが見出された.これまでの研究では,この地域は明瞭な季節変動がない地域と認識されてきたが,それは変動の振幅が温帯や他の熱帯の振幅と比較して相対的に小さいためであると考えられる.降水量については,月降水量100mmを下回る月が3ヶ月に満たないがゆえに,季節変動がないと解釈されていたと考えられる.
著者
熊谷 朝臣 大槻 恭一 溝上 展也 市栄 智明
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

カンボジア熱帯季節林において、外来樹種は郷土樹種より光合成能力が高いが、乾季に気孔を閉じ気味になること、一方、郷土樹種は乾季も地中深くまで伸ばした根のおかげで雨季に貯えられた地下水を利用して気孔を開け気味にできること、が分かった。東南アジア熱帯雨林の主要樹種であるリュウノウジュを対象として降水遮断実験を行った。樹体内の通水分布を考慮した精密な樹液流計測により単木~個葉スケールの蒸散速度を算定することができ、蒸散と環境因子との対応関係から、乾燥条件の気孔開閉に及ぼす影響を考察した結果、リュウノウジュは乾燥に対して極端に気孔開閉による水利用の節約を行わないということがわかった。