著者
岩井 一郎 桑原 智祐 平尾 哲二
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.16-21, 2008
被引用文献数
3

近年, カルボニル化と呼ばれるタンパク質の変性が角層で知られるようになったが, 肌への影響は不明だった。本研究では「角層の透明度」に焦点を当て, 角層タンパク質カルボニル化の影響とその対応法について検討した。まず粘着テープで採取した角層タンパク質のカルボニル基を蛍光標識し, 画像解析により数値化する方法を開発し, 外界の影響を受けやすい露光部 (顔面) 角層, 角層表層部で角層カルボニル化レベルが高いこと, <i>in vitro</i> UV照射により角層タンパク質がカルボニル化することを示した。さらに, 頬部角層カルボニル化レベルの高い女性では, 視感判定による透明感が低いことを示した。これらより, 外界の影響による角層のカルボニル化が透明感低下の一因と考えられた。実際に角層を<i>in vitro</i>でカルボニル化処理すると角層は不透明に白濁した。さらにアミノ酸L-リジンは角層カルボニル化を抑制し, ヒト皮膚においてもカルボニル化による透明感の低下を抑制した。これらより, 外界の悪影響による角層タンパク質のカルボニル化をL-リジンによって防ぐことで, 角層透明度を保ち, 肌の透明感を向上させることができると考えられた。
著者
針谷 毅 平尾 哲二 勝山 雅子 市川 秀之 相原 道子 池澤 善郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.463-471, 2000-06-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
15
被引用文献数
4

アトピー性皮膚炎(AD)は心理的, 身体的ストレスによって皮膚症状が悪化することが臨床の場で知られている.本研究ではAD患者の皮膚症状を2週間毎の外来受診時にスコア化して記録すると共に, 皮膚生理指標や常在菌叢, 心理, 気分指標を患者毎に経時的に測定・検査し, それらの関連性について検討した.心理・気分指標としてはPOMS(profile of mood states)を用い, さらに患者には毎日VAS(visual analogue scale)を用いて疲労やストレス度合い, 主観的な肌の状態などを記録させた.同一患者で2ヶ月以上, 上記について検討可能であった患者18名を対象に各指標間の相関性を中心に解析した結果, POMSの抑うつ-落ち込みや緊張-不安の得点と皮膚症状スコア, 角層水分量, 総菌数との相関性が高い傾向にあり, VASによる患者のストレスの程度とかゆみなどの皮膚症状も相関する傾向を示した.以上の検討からAD患者では抑うつや緊張傾向が高まるなどの心理的なストレスや疲労などの身体的なストレスの有無と皮膚炎の増悪寛解とが互いに関連していることが示された.
著者
平尾 哲二
出版者
日本香粧品学会
雑誌
日本香粧品学会誌 (ISSN:18802532)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.95-100, 2013-06-30 (Released:2014-07-16)
参考文献数
23
被引用文献数
1

The skin is the largest tissue surrounding our body, and is essential for maintenance of our life. The epidermis, including stratum corneum, plays a pivotal role in barrier function, which is essential for terrestrial living organisms, as well as retaining in moisture to keep itself supple. In addition to these biological functions, the skin locates the outermost layer affecting its appearance and tactile perception. Moisturized skin is supple and beautiful. This review summarizes molecular and structural mechanisms in skin moisturization and recent advances in skin moisturization. Free amino acids are major component of natural moisturizing factors in the stratum corneum, which are derived from degradation of filaggrin protein. Recent studies have revealed that several proteases are involved in degradation of filaggrin into free amino acids. Other constituents of natural moisturizing factors include organic acids and mineral ions, which are derived, at least in part, from sweat and sebum. In addition to these low molecular natural moisturizing factors, properties of structural protein such as keratins may affect moisture retention activity in the stratum corneum. Thus, skin moisturization is composed of heterogeneous factors and its improvement can be achieved by various skincare approaches.
著者
平尾 哲二 手束 聡子 鈴木 真綾 木村 美沙季 山下 裕司
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.10, pp.15-22, 2017-02

犬吠埼温泉は銚子市の観光資源の一つである。本研究では、犬吠埼温泉の有用性について科学的データ取得を目的として、3種類の源泉について成分分析するとともに、保湿効果について検討した。各源泉に含まれる主要元素についてICP発光分光法により調べたところ、いずれもClとNaを多く含むものの、それらの濃度やその他の元素濃度に差異が認められた。また、浮遊物質濃度の挙動などの特性値についても各源泉により違いが認められた。皮膚保湿試験は、実際の入浴シーンに近い足湯への入浴試験と、前腕に温泉試料を塗布する2種類の試験を実施した。皮膚保湿試験においては、千葉科学大学倫理委員会による承認を得た上で、被験者の同意を得て試験を実施した。犬吠埼ホテル足湯入浴後の角層水分量を足甲と下腿部で経時的に測定したところ、足湯入浴後は徐々に角層水分量は低下するが、その低下は対照であるお湯に比較して緩やかで、有意な保湿効果が認められた。また、前腕に3種類の源泉あるいは水を塗布して角層水分量を経時的に測定したところ、対照である水塗布に比較して、犬吠埼ホテルおよび犬吠埼観光ホテルの源泉では角層水分量が高く維持され、保湿効果が検証されたが、太陽の里の源泉では、今回の試験条件では、保湿効果は検証できなかった。これらの挙動は、各温泉に含まれるミネラル成分の多寡と比較的よく一致していた。源泉成分の特性解析や保湿効果の作用機序については未解明であり、今後の研究発展によりさらに犬吠埼温泉の有用性に関するエビデンス蓄積が期待される。

1 0 0 0 OA 保湿 温故知新

著者
平尾 哲二
出版者
日本香粧品学会
雑誌
日本香粧品学会誌 (ISSN:18802532)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.277-281, 2017-12-31 (Released:2018-12-31)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Stratum corneum (SC) is located at the outermost of the skin and plays pivotal roles in barrier function and moisturizing function of the skin. SC is composed of piled-up dead corneocytes with 10–20 layers and their intercellular spaces are filled with lipids. Major components of corneocytes are keratin fibers providing mechanical stiffness of the SC. Natural moisturizing factors (NMF) are a group of water-soluble small molecules, including amino acids, minerals, lactate and so on, which can retain water molecules to keratin fibers. Cornified envelope is a membrane-like insoluble structure surrounding corneocytes and acts as a scaffold for organization of intercellular lipids. Intercellular lipids are consisted of ceramides, free fatty acids, and cholesterol, which form packing crystal and lamellar structure. Any of these composite components is essential for healthy SC, and their defects may result in deterioration of SC function and dry skin. Mechanisms of moisturizers are classified into two groups. Emollients, such as oil, cover the skin surface without penetration into the skin, and moisturize the SC by their occlusive properties. Humectants, such as polyols and amino acids derivatives, can penetrate into the SC, and moisturize the SC like NMF. Thus, moisturizing effect of skincare products is well-recognized. However, hyper-moisturized SC may lead to deteriorated barrier function with pros and cons. Diaper dermatitis is a typical trouble with hyper-moisturized SC. On the other hand, a defect in barrier function is helpful for penetration of certain drugs into the skin known as occlusive dressing technique. Recent study shows that slow evaporation of water from SC make SC structure tightly packed with optical transparency and barrier function. In addition, this water evaporation-induced rearrangement process of SC can reduce formation of expression-induced residual wrinkle. These new concepts provide valuable information to understand real mechanisms of moisturization and suggest future innovation of moisturizers.
著者
平尾 哲二
出版者
日本香粧品学会
雑誌
日本香粧品学会誌 (ISSN:18802532)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.26, 2018-03-31 (Released:2019-03-31)

The aim of this lecture series is to expand dermatologists interested in Japanese Cosmetic Science Society by providing basic scientific knowledge of cosmetics. Articles of this series planed for two years will include various aspects of cosmetic products and their functions, regulations, relations with troubled skin. I hope that this lecture series will be helpful, not only for dermatologists, but also for paramedicals and cosmetic scientists.
著者
山下 裕司 山崎 舞 鈴木 真綾 萩原 宏美 田上 八郎 平尾 哲二 坂本 一民
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University Bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.9, pp.67-74, 2016-02-28

古来から天然の薬として服用されてきた有機ゲルマニウムは、角層中のコーニファイドエンベロープ形成や細胞間脂質を構成するセラミド合成促進などの効果が近年見出され、皮膚への有効性が期待されている。昨年、我々は有機ゲルマニウムを配合したクリームを皮膚に塗布した際の角層水分量と経表皮水分蒸散量(TEWL)の変化について調べ、有機ゲルマニウムに角層の保湿性を向上する傾向があることを報告した。本研究では、剤型をクリームから化粧水に変更し、市販の有機ゲルマニウム含有化粧水と含有されない化粧水を用いて角層水分量、TEWL、皮膚粘弾性、および皮膚色の変化から皮膚への塗布効果を調べた。4週間の連用塗布によって、有機ゲルマニウム配合化粧水は未配合化粧水に比べて有意に角層水分量は増加したが、その他の評価項目に関しては著しい差は見られなかった。また、本研究では、この角層水分量の増加に対して表皮中のフィラグリンから産生されるピロリドンカルボン酸量との関係について調べた。化粧水中の有機ゲルマニウムの有無に関係なく皮膚の保湿能に関係するピロリドンカルボン酸量は変化しておらず、有機ゲルマニウム配合化粧水の高い保湿機能が天然保湿成分の量的変化に関与していないことが示唆された。
著者
岩井 一郎 桑原 智祐 平尾 哲二
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.16-21, 2008-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
8
被引用文献数
2 3

近年, カルボニル化と呼ばれるタンパク質の変性が角層で知られるようになったが, 肌への影響は不明だった。本研究では「角層の透明度」に焦点を当て, 角層タンパク質カルボニル化の影響とその対応法について検討した。まず粘着テープで採取した角層タンパク質のカルボニル基を蛍光標識し, 画像解析により数値化する方法を開発し, 外界の影響を受けやすい露光部 (顔面) 角層, 角層表層部で角層カルボニル化レベルが高いこと, in vitro UV照射により角層タンパク質がカルボニル化することを示した。さらに, 頬部角層カルボニル化レベルの高い女性では, 視感判定による透明感が低いことを示した。これらより, 外界の影響による角層のカルボニル化が透明感低下の一因と考えられた。実際に角層をin vitroでカルボニル化処理すると角層は不透明に白濁した。さらにアミノ酸L-リジンは角層カルボニル化を抑制し, ヒト皮膚においてもカルボニル化による透明感の低下を抑制した。これらより, 外界の悪影響による角層タンパク質のカルボニル化をL-リジンによって防ぐことで, 角層透明度を保ち, 肌の透明感を向上させることができると考えられた。