著者
桑原 聡 平山 惠造 小島 重幸
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.104-112, 1993-04-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
26
被引用文献数
1

小脳・小脳脚梗塞47例において臨床症状とMRI所見を分析し, 病変部位と運動失調の予後との関係および小脳内体性局在を検討した.四肢の運動失調は41例でみられ, 発症後1年以内に消失した予後良好群は32例 (78%) で, 1年以上持続した予後不良群は9例 (22%) であった.小脳皮質または下小脳脚病変側の予後は良好であるのに対し, 歯状核+上小脳脚あるいは中小脳脚全体の病変例の予後は不良であった.小脳求心系病変 (中, 下小脳脚) と遠心系病変 (歯状核, 上小脳脚) の運動失調に差異はみられなかったが, 後者では後に企図振戦, 律動性骨格筋ミオクローヌスが出現し日常生活動作を妨げた.四肢の運動失調と小脳病変局在との関係は認められなかったが, 失調性構音障害は小脳上部病変で, 眼球測定異常は小脳下部病変で多く発現し, 小脳における体性局在を示唆するものと思われた.
著者
平山 惠造
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.824, 1985-08-01

◆患者に頬をふくらまさせて顔面筋の麻痺の有無をみることがある。顔面神経の比較的軽い場合の診察法の一つにあげられている。しかし頬をふくらまさせるのは顔面筋の麻痺をみているだけであろうか。 ◆頬をふくらませるには,口輪筋で強く口を閉じる必要がある。片側の顔面神経(口輪筋)の麻痺でも空気がもれて頬はうまくふくらまない。更に,も一つ閉ざさなくてはならないのは鼻咽頭で,これには軟口蓋が挙上してその上壁との間を閉じる必要がある。軟口蓋麻痺のある患者は頬をふくらますことができない。この場合には指で鼻をつまみ,界孔を閉じてやると頬をふくらますことができる。つまり,頬をふくらますには空気の出口を全て閉ざすために,口唇を強く閉じ,軟口蓋が鼻咽頭を塞ぐ必要がある。
著者
平山 惠造
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.949, 1997-10-01

昏睡comaは意識障害を代表して広義に用いられる場合と,狭義の重い意識障害を指す場合とがある。ここで問題とするのは後者である。昏睡では意識は消失して,外界からの侵害刺激でも覚醒することなく,覚醒・睡眠の調律はなくなり,従って知的活動や情動は全くみられない。随意運動や感覚認知の機能は消失し,外界から加えられた刺激に対する反射は一切認められない。このように人としての「生活」機能すなわち動物機能を喪失した状態が昏睡である。 これに対し「生命」維持機能すなわち植物機能は保持されており,呼吸,心拍,血圧,体温などの自律神経機能は正常に保たれている。なお排尿(便)機能をこれらと同様に扱うのは妥当でない。意識が消失すれば括約筋の随意運動制御はできなくなり,自律神経機能が正常であっても,失禁するからである。