著者
平川 毅彦
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.43-51, 2006-12

大規模化・複雑化した現代社会において、何らかの理由により生じた生活困難・生活課題を側面から支援し、個人の発達・成長を最大限まで促そうとする現代的試み。それが最も限定された意味での社会福祉である。この社会福祉という支援活動を展開するために、日常生活から引き離された「全制的施設」(“Total Institution”, Goffman,1961)ではなく、「ふつうの生活」が展開される場所としての地域社会はいかにして可能か。そして、特定少数の人々だけではなく、すべての住民にとって暮らしやすい地域社会とはどのようなものか。それが今日の「福祉のまちづくり」に求められている課題である。ところで、日本社会における「福祉のまちづくり」の源流は、高度成長期の仙台市にあるとされている。施設のみで完結する生活に不満を持つ身体障害者と学生ボランティア、そして彼らを支援するソーシャルワーカーによる最初の一滴から始まり、専門家と住民参加を旨とする当時の島野仙台市政(1958年~1984年)と結びつくことで拡がりを持ち、その活動成果はマスコミにより全国に紹介された。また、こうした活動成果が評価され1973 (昭和48)年7月には厚生省(当時)による身体障害者福祉モデル都市指定による整備が行われ、さらに同年9月には「福祉のまちづくり、車いす市民交流集会」が開催、全国から車いす利用者が仙台を訪れ、そこでの経験は日本全国へと広まり定着した。本研究では、この仙台市における「福祉のまちづくり」に関して、残された資料等をもとに、主にその源流部分を再構成する。そして、こうした作業を通じて、「福祉」と人間の成長・発達を巡って解決されなければならない課題がどのようなものであるのか明らかにしていきたい。
著者
平川 毅彦 Hirakawa Takehiko
出版者
新潟青陵学会
雑誌
新潟青陵学会誌 (ISSN:1883759X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.1-10, 2016-03

This paper undertakes a theoretical discussion of Shigeo Okamura's Chiiki fukushi-ron("Theory of Community-based Welfare," published 1974)with the aim of clarifying the challenges inherent in one ofthe theory's key concepts, namely that of the "Welfare Community." Although not so as to radically upset its claims, the conceptual definition and deployment of the Welfare Community has been accompanied by the recognition of certain "fluctuations" in its fundamental logic. Informed by a specifically social-welfare perspective and reconstructed based on subjective and individual principles, the Welfare Community concept can encompass possibilities for local communities in everyday life and the overall social context by focusing on the life challenges faced by specific individuals. In contemporary society, which is growingever more diverse, complex, and all-encompassing, the Welfare Community concept represents an intelligent tool that enables individuals to lead lives of convention amidst diversity. For anyone to be able to master the use of this tool is both the aim of the Welfare Community concept and a future challenge for local communities.本論は、岡村重夫の『地域福祉論』(1974年)をテキストとして、鍵概念となる「福祉コミュニティ」についての理論的検討を行い、その内在的課題を明らかにした。その主張を根底から覆すようなものではなかったが、福祉コミュニティの定義及び展開の中で、柱となる論理に「ゆらぎ」が認められた。社会福祉固有の視点を貫き、主体的・個別的な原則のもとに再構成された福祉コミュニティ概念は、生活課題を抱えた具体的な個人を中心として、日常生活の場である地域社会の在り方と、それをとりまく全体社会を視野におさめることができる。「福祉コミュニティ」は、多様化・複雑化、そして大規模化する現代社会にあって、一人ひとりが「多様なままで」「あたりまえの生活」を営むことを可能にするための知的ツールである。だれもがこのツールを使いこなすことができるようになること、それが「福祉コミュニティ」の目的であり、その先にある「地域社会」の課題である。
著者
平川 毅彦
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.134-151,269, 1986-09-30 (Released:2009-11-11)

地域レベルにおける政治現象の研究は、地域のあり方を検討するうえでも欠くことができない。本研究は、ハンター以降のアメリカにおけるコミュニティ権力構造研究の成果と反省とをふまえ、一九五五年から一九八三年に至る、札幌市郊外S地区における地域住民組織を中心としたリーダー層を分析し、それを規定していた諸要因を解明する。その際、地域イシューとリーダー層との関係を、対象地域の変動とのかかわりでとりあげることに主眼を置き、地位法・声価法を併用した。その結果、確かに、都市的な性格が強まるにつれてリーダー層の分化傾向や、地域住民組織の機能縮小が顕著になっていたものの、「旧中間層支配」は「土地」「ネットワーク」「情報」に支えられ、形を変えながら依然として存続していた。しかも、これらを権力基盤として成立させていた社会・経済的条件は地区のスプロールであり、生活施設整備を志向する「来住者層」と、自己の利権を維持しようとする「地元層」との間のバランス=オブ=パワーであったことが明らかにされた。
著者
平川 毅彦 土橋 敏孝 武田 誠一
出版者
新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部
雑誌
新潟青陵学会誌 (ISSN:1883759X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.11-18, 2010-03
被引用文献数
1

本研究は新潟市中央区に居住する55 歳から59 歳の男女を対象としたアンケート調査データに基づき、これから高齢者となる世代をいかにして「元気高齢者」にしていくのか、その課題を検討したものである。調査結果から以下のようなことが明らかにされた。65 歳以降の生活で、「収入」「自分の健康や病気」「家族の健康や病気」に不安を持っている。現在の生きがいは「友人との交流」「家族との団らん」「就労」が中心で、65 歳以降は「友人との交流」「家族との団らん」「趣味のサークル活動」を想定している。地域生活に関しては、近隣と「あいさつを交わす程度」であり、半数近くが地域活動に参加したことがない。65 歳を迎えたその日から「高齢者」に、そして地域に貢献する「元気高齢者」となることは不可能である。しかし準備段階世代のデータを見る限り、現時点における地域社会との関係性は強いものではない。「元気」、更には地域社会の在り方そのものに関する議論も含めた検討が必要である。
著者
平川 毅彦
出版者
日本都市社会学会
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.26, pp.5-20, 2008-09-12 (Released:2011-02-07)
参考文献数
32

The purpose of this article is to clarify possibility of the welfare in today's urbanized community.The community-based welfare theory by Shigeo Okamura examines such a problem adequately. When a senior citizen or a handicapped person receives a support of the daily life, relations with a social worker and the other supporters are important.However, it is controlled greatly whether inhabitants accept such an activity at the same time.The dual community theory brings prosperity both in urban sociology and in social welfare studies.