- 著者
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平松 晃一
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
- 巻号頁・発行日
- vol.89, no.6, pp.283-302, 2016-11-01 (Released:2019-10-05)
- 参考文献数
- 57
- 被引用文献数
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1
本稿は,建造物や景観の保存によって過去を示すとされるヘリテージの創出において,保存建造物はどのように選択されるか,また過去がどのように示されるかを明らかにする.事例とする象の鼻パークは,2009年,「横浜港発祥の地」をテーマに創出されたヘリテージである.象の鼻パークは,さまざまな公的事業によって,次々と新たな役割を課せられた.このため,個々の建造物の存廃決定過程において,歴史的な価値づけは,美的,経済的な価値づけとの対立を回避するよう,柔軟に変化しながら行われた.その結果,保存建造物の選択は,ヘリテージ全体にはたらく意図にのみ従うのではなく,流動的なものになり,個々の選択との整合性を図るためにヘリテージ全体の価値づけが見直されることもあった.また,象の鼻パークで示される過去は,計画の途上いつでも,さまざまな基準で取捨選択でき,さまざまなかたちで示すことができる可鍛性の高い資源として利用された.