著者
中里見 敬 太田 一昭 波多野 真矢 田村 容子 松浦 恒雄 藤野 真子 森平 崇文 長嶺 亮子 平林 宣和 三須 祐介 加藤 徹 西村 正男
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1.昨年決定した戯単の解説執筆の分担に基づき、戯単解説の執筆を進めた。原稿の完成した6点の解説は、中里見敬・潘世聖編『「『春水』手稿と日中の文学交流――周作人、冰心、濱一衛」国際シンポジウム論文集』(第3冊資料編)に収録し、あわせて中国語訳も掲載した。2.濱文庫所蔵のレコードについて、基礎的なデータの採録をほぼ終えた。レコードの音声をデジタル化する作業については、音質その他の技術的な問題があり、作業が中断している。早期に開始できるよう対策を講じたい。3.濱文庫に所蔵される冰心の詩集『春水』(1923)が、作者自筆の手稿本だと判明した。さらにこの手稿が周作人から日本人留学生・濱一衛に贈られた経緯も明らかになり、『中国現代文学研究叢刊』2017年第6期(総第215期)に中里見敬「冰心手稿藏身日本九州大学:《春水》手稿、周作人、濱一衛及其他」として発表した。その後、周家・濱家双方の尽力により、書簡15通が発見された。さらに周作人から濱一衛に贈られた書4点(周作人、銭玄同各1点、兪平伯2点)も見つかり、九州大学附属図書館に寄贈されることとなった。このように、周作人と濱一衛の交流に関する研究は短期間のうちに大きな進展を見せた。4.研究会・シンポジウムを2回開催した。(1)研究集会「演劇アーカイブの最前線:イギリスと中国」平成29年6月17日(九州大学伊都キャンパス)発表者:三須祐介、松浦恆雄、太田一昭。(2)「『春水』手稿と日中の文学交流――周作人、冰心、濱一衛」 国際シンポジウム、平成30年2月6日(九州大学新中央図書館)基調講演:周吉宜、趙京華、小川利康、李莉薇。学術シンポジウム:顧偉良、平石淑子、佐藤普美子、濱田麻矢、松岡純子、牧野格子、岩﨑菜子、宮本めぐみ、虞萍。あわせてシンポジウム論文集(全3冊、554頁、28名執筆)を刊行し、戯単をはじめとする濱文庫資料の展示を行った。
著者
平林 宣和 劉 文兵
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究においては、「文革期のプロパガンダ演劇における社会主義的近代性」に着目し、身体、ジェンダー、プロパガンダといった観点から、文革時代の中国のプロパガンダ演劇を考察することにより、そこに内包された社会主義的近代性の独自性を明らかにした。その成果として、劉文兵が2006年6月の日本舞踊学会、および同年8月開催の「早稲田大學演劇博物館21世紀COE研究発表会」において研究発表をおこなった。また同時に、映画メディアと文革の関係に注目、文革時代から文革終焉直後にいたるまでの映画表象の歴史的変遷を、2006年8月に上梓された『中国10億人の日本映画熱愛史』(集英社新書)、そして表象学会の学会誌掲載予定の論文「忘却への欲望トラウマの回帰--中国映画における文革の表象」において検証した。さらに、文革期から文革終焉直後にかけての中国の映画製作を概観する「政治と表象」という構想のもと、単著の書籍を執筆している(すでに作品社の2007年度刊行の学術書としてラインナップされている)。一方、早稲田大学演劇博物館「21世紀COE演劇の総合的研究と演劇の確立」のプログラムの一環としてアーカイブの作成に従事し、1960年代初頭から70年代後半までの『人民日報』『文匯報』のデータベースを構築した。そのほか、中国映画の巨匠である張芸謀監督、謝晋監督、賈樟柯監督にたいするインタビューをも重点的におこない、それに基づいた学術論文やインタビュー記事をも執筆している。