著者
平林 由希子 山田 果林 山崎 大 石川 悠生 新井 茉莉 犬塚 俊之 久松 力人 小川田 大吉
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.175-191, 2022-05-05 (Released:2022-05-06)
参考文献数
23
被引用文献数
2

アジアやアフリカの途上国などの洪水リスク情報の整備が不十分な地域で企業が事業展開する際は,グローバル洪水モデル(GFM)で作成した広域洪水ハザードマップが活用される.本報では企業実務で活用されている既存の広域洪水ハザードマップを比較し,それぞれ浸水域や浸水深の差異の要因をモデル構造や入力データに着目して分析した.その結果,低平地の浸水パターンは標高データの精度に左右されること,洪水防御情報の反映方法がGFM 間で大きく異なることが判明した.また,大きな湖に接する河川区間では背水効果,デルタ域では河道分岐の考慮が,それぞれ現実的な浸水域分布を得るのに必要なことが示唆された.これらの特徴を踏まえてハザードマップ選択のフローを用途ごとに整理した.全ての業種や目的に共通して利用を推奨できるマップは存在しない一方で,各マップの長所短所を一覧にすることで,ある程度客観的に使用すべきマップの優先順位を決められることが分かった.この知見は有償プロダクトを含む他リスクマップ使用を検討する場合にも拡張可能であり,企業実務において説明性の高い適切な浸水リスク評価を実施する上での基礎的な情報となりうる.
著者
山田 利紀 藤田 凌 田上 雅浩 山崎 大 平林 由希子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.I_27-I_32, 2021 (Released:2021-12-23)
参考文献数
15
被引用文献数
2

近年, 気候変動に伴う洪水リスクの将来予測が様々な研究において行われているが, それらには不確実性が存在する. 既往研究では気候モデルやシナリオの違いによる洪水リスクのばらつきが指摘されているが, その他にモデルによる不確実性の評価も必要である. 本研究では河川モデルCaMa-Floodの感度実験を行い, 近年の衛星観測や数値計算法の発展による全球河川氾濫モデルの更新や標高データの改善が世界の洪水予測や全球の洪水リスクの推定にどの程度影響するか調査した. その結果, 衛星観測の誤差に起因する標高データの違いが浸水分布に大きく影響することが判明した. また, モデルの物理過程では, 洪水流が河川高水敷を一時的に流れる過程が最も浸水面積の違いに影響を与え, 多いところでは約5.5%の違いを示した. また, 全球の洪水に暴露される人口は, モデルの物理過程や入力データの違いで最大14%異なることも判明した.
著者
木村 雄貴 平林 由希子 木下 陽平
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2015

全球平均気温は2000年代に昇温傾向が止まり、いわゆる温暖化ハイエイタスの時期になっているといわれているが,陸上気温の高温極値は上昇し続けている.一方, 地球温暖化が進行すると世界の多くの地域で河川洪水の頻度が上昇することがいくつかの研究で指摘されており, 陸上の気温と洪水頻度には強い正の相関があることも指摘されているため, 温暖化ハイエイタスといわれる2000年以降についても世界の洪水の頻度が増加している可能性がある.そこで本研究では,流量観測データや全球河川氾濫モデルによる河川流量再解析データを用いて, 温暖化ハイエイタス期の洪水頻度について解析を行った. その結果,既往の研究で指摘されている通り,陸上の、年最大日平均気温に関しては上昇していることがわかった.また,GRDCの流量観測データと河川流量再解析データによる洪水頻度指標の双方において,20世紀から21世紀に洪水頻度指標が上昇しており, 2000年以降もその上昇傾向が続いていることが判明した.全球平均気温は2000年代に昇温傾向が止まり、いわゆる温暖化ハイエイタスの時期になっているといわれているが,陸上気温の高温極値は上昇し続けている.一方, 地球温暖化が進行すると世界の多くの地域で河川洪水の頻度が上昇することがいくつかの研究で指摘されており, 陸上の気温と洪水頻度には強い正の相関があることも指摘されているため, 温暖化ハイエイタスといわれる2000年以降についても世界の洪水の頻度が増加している可能性がある.そこで本研究では,流量観測データや全球河川氾濫モデルによる河川流量再解析データを用いて, 温暖化ハイエイタス期の洪水頻度について解析を行った. その結果,既往の研究で指摘されている通り,陸上の、年最大日平均気温に関しては上昇していることがわかった.また,GRDCの流量観測データと河川流量再解析データによる洪水頻度指標の双方において,20世紀から21世紀に洪水頻度指標が上昇しており, 2000年以降もその上昇傾向が続いていることが判明した.