著者
鬼塚 俊明 中村 一太 平野 昭吾 平野 羊嗣
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.73-78, 2019 (Released:2019-12-28)
参考文献数
5

幻聴が起こるメカニズムは単純なものではないが,症状と関連のある脳構造・脳機能研究を行うことは重要と思われる。本稿では我々が行った研究で,幻聴の重症度と関連のあった脳部位・脳機能研究での結果を紹介する。脳構造研究では,外側側頭葉の亜区域を手書き法にて測定し,体積を測定した。幻聴のある患者群で左の上側頭回は著明に小さく,左中側頭回,左下側頭回でも有意に小さいという結果が得られた。すなわち,幻聴のある患者群は幻覚のない患者群に比べ,左半球優位(特に上側頭回)に体積減少があることが示唆された。 声に対するP50mの研究では,左半球の抑制度と幻聴のスコアに有意な正の相関を認めた(ρ=0.44,p=0.04)。つまり,人の声に対するフィルタリング機構の障害が強い統合失調症者ほど,幻聴の程度が重度であるということが示唆された。さらに,聴覚定常状態反応の研究では,80 Hzのクリックに対する左半球のASSRパワー値と幻聴の重症度に有意な負の相関を認めた(ρ=‐0.50,p=0.04)。つまり,左半球の80 Hz‐ASSRの障害が強い統合失調症者ほど幻聴の程度が重度であるということが示唆された。 今後,脳構造・脳生理学的研究は統合失調症の病態解明のアプローチとして一層重要になっていくと思われる。
著者
小岩 信治 平野 昭 コイワ シンジ ヒラノ アキラ Shinji Koiwa Akira HIRANO
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
no.7, pp.135-147, 2007-03-31

静岡文化芸術大学の室内楽演奏会1は、二〇〇六年二月二六日にアクトシティ浜松音楽工房ホール、三月一四日に東京・第一生命ホールで行われた。浜松公演は満席となり、盛況となった東京公演は後日NHK-BSで放送された。本学と浜松市楽器博物館、NPOトリトン・アーツ・ネットワーク/第一生命ホール、そして小倉貴久子ら国際的に評価された演奏家による、ユニークなプロジェクトであった。この演奏会は、一九世紀のピアノ付き合奏音楽を主要研究領域とする筆者たちの研究成果を示していた。一八三〇年代にショパンのピアノ協奏曲は、オーケストラ音楽としてだけでなくピアノ六重奏曲としても出版されていた(本学紀要、二〇〇四年)。今回の主要演目である彼の《ピアノ協奏曲第一番》ホ短調作品一-ドイツ初版(一八三三)に基づく五重奏伴奏付き-は、プレイエルが一八三〇年に製作したフォルテピアノで嶋り響いたとき、強い印象を人々に与えた。この編成でのピアノ協奏曲の、オーケストラ版とは異なる魅力が証明されたと言える。