著者
浅野 紘臣 寺澤 輝雄 広瀬 昌平
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.88-92, 1980

窒素施肥量 (10a当たり0, 10, 50および100kg)がメヒシバおよびスベリヒユの生育と種子生産構造に及ぼす影響を調べた。<br>1) 窒素レベルの増加につれて2草種の生長量は一般に増大するが, 栄養生長期の調査で, スベリヒユは茎長, 葉数, 全乾物重およびがい果数がN-50区で最高値を示し, メヒシバでは稈長および全乾物重だけがN-50区で最高値を示した。<br>2) 一方, 成熟期の調査で, スベリヒユは千粒重を除いたすべての形質がN-50区で最高値を示したが, メヒシバでは穂当たりの種子粒数, 種子重および千粒重がN-10区で最高値を示し, 個体当たり穂数はN-50区に最高値がみられた。<br>3) 多数の形質について表現型可変性変異を調べたが, メヒシバはスベリヒユに比べて一般に大きく, 特に個体当たり穂数および種子粒数で顕著であった。そして, 両草種の千粒重はいずれも低い変異を示した。<br>4) 再生産効率については, 2草種とも窒素レベルの増加に伴い増加する傾向にあるが, メヒシバではN-50区, スベリヒユではN-100区で最高となり, その値は25.3%と28.2%であった。<br>5) 処理区内の個体変動を求めたが, メヒシバではN-0区, スベリヒユではN-0, N-100区で個体変動が増加した。すなわち, 一般の圃場条件とは異なる無窒素と窒素過多の条件下で個体間の反応に差が生じ, 生育が不均一になることが観察された。<br>6) 以上の結果をもとにして, 雑草の環境適応上の問題を考察した。
著者
寺澤 輝雄 浅野 紘臣 広瀬 昌平
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.10-16, 1980

雑草の環境適応のメカニズムを明らかにする一環として, 本実験ではメヒシバ, スベリヒユを供試し, 密度条件の差異がこれら2草種の生育と種子生産構造に及ぼす影響を調べた。密度条件はa/2,000ワグネルポットにメヒシバで5, 20, 50および100個体, スベリヒユで5, 20, 45および65個体のそれぞれ4条件とした。<br>1) 密度の増加によってスベリヒユは栄養生長期, 成熟期を通して, 10%前後の枯死個体が認められたが, メヒシバでは全く認められなかった。<br>2) 2草種とも, 個体当たりの生長量は密度の増加に伴って減少し, 最高・最低密度間の差異は栄養生長期より成熟期で増大した。<br>3) 種子生産量およびその構成要素のうち個体当たりの穂数 (メヒシバ) あるいははがい果数 (スベリヒユ), 種子重, 種子粒数は密度の増加に伴って減少したが, 1穂あるいは1がい果当たりの種子粒数, 種子重はメヒシバでは20個体区, スベリヒユは5個体区に最高値があった。<br>4) 各形質の表現型可変性の変異を密度に対する回帰係数によって比較したが, スベリヒユがメヒシバに比較して表現型可変性が大であった。<br>5) 2草種の再生産効率を求めたが, メヒシバがスベリヒユに比較して高く, スベリヒユで密度の増加によって減少する傾向が認められた。<br>6) 2草種の生長量について各密度区内の個体変動を調査したが, 密度の増加に従い個体変動は増大する傾向が認められた。<br>7) メヒシバは密度の増加に対し, 区内の個体変動は少なく, 平均的な個体と個体数を確保し, 一方, スベリヒユは個体間の競合によって生き残った個体の再生産力によって, それぞれ単位面積当たりほぼ一定の生産を維持しているのが認められた。
著者
寺澤 輝雄 浅野 紘臣 広瀬 昌平
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.14-18, 1981
被引用文献数
1

メヒシバ, スベリヒユを土壌の最大容水量に対して12, 25, 50, 100%の4条件下で全生育期間を通してa/2,000ポットで栽培し, 土壌水分の差異が両草種の生育と種子生産構造に及ぼす影響を調査した。<br>1) 栄養生長期, 成熟期を通して, 過湿と過乾に対する両草種の反応は異なっており, メヒシバは過乾条件で, スベリヒユは過湿条件で生長がより大きく抑制された。<br>2) 栄養生長期の地上部乾物重で最大生長を示す最適水分条件はメヒシバでは50%区であり, スベリヒユでは25%区であった。<br>3) 両草種の穂あるいはがい果当たりの稔実種子生産量は4処理条件下で, ほぼ一定であり, 土壌水分の変化による個体当たりの種子生産量の差異は個体当たり, 穂数あるいはがい果数の増減によるものであった。<br>4) 土壌水分の差異によるCREの変化は, メヒシバで3~4%の範囲にあり, 一方, スベリヒユでは15~20%であって, スベリヒユはメヒシバに比べCREが高かった。<br>5) 両草種の形質の土壌水分に対する表現型可変性は生長量の形質に関しては, スベリヒユの分枝数を除いて, 一般にメヒシバがスベリヒユに比べて高く, 成熟期の種子生産形質については, メヒシバの穂数を除いて, 一般に, スベリヒユがメヒシバに比べて高かった。<br>6) 最適水分条件下でメヒシバは穂数, スベリヒユはがい果の増加によって個体当たり種子数の拡大生産を確保し, 不適当な条件下でも, 両種は得られた穂あるいはがい果に稔実した種子を確実に着生し, 最低限の生存を確保していることが明らかにされた。
著者
広瀬 昌平 ブシドウ B. H.
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.135-144, 1976

インドネシア東部ジャワ州ではべと病とSeedling flyによる被害がとうもろこしの栽植本数の減少或は株立本数の不均一性をもたらす大きな要因となっているが, この報告ではべと病およびSeedling flyの罹病および被害消長の調査結果と, 更に人為的に得られた株立本数の不均一性が収量にどのような影響をおよぼすかを調査した結果を報告した.<BR>1. べと病によるとうもろこしの罹病は雨期開始後大凡2~3週間目に播種した区で最高を示し, この期のHarapan種で約90%, Kretek種でも年により約50%の罹病率を示した.しかし罹病率はその後減少し, 2或は3月播種区でまた若干増加傾向を示す.一方Seedling flyの被害はべと病と異なりべと病の罹病が最低を示す時期に最高を示し, 明らかにその被害時期のピークにずれが見られる.<BR>2. 1株本数の異なる均一株および不均一株区をもうけ, 子実重, 不稔個体率および株当100粒重について比較した.<BR>3. 単位面積当り収量の比較では, 1株2本均一区で最高を示し, 1株3本均一区は若干2本区に比して低いが, その差異は明らかでなかった.一方不均一区では1株1, 3本交互区と1, 2, 3本交互区は単位面積当り栽植本数は同一になるが, 共に均一2本区より低い収量を示した.<BR>4. 不均一区の収量が均一区の収量に比して (平均株当り2本区) 低いのは株相互間で補償作用が働かず, その要因として開花時前後における, 一時的ではあるが, 極度の乾ばつが関与したものと考えられる.<BR>5. 株別に見た場合, 不稔個体率は2本株で, それに隣接する株本数が増加する程不稔個体が増加したが, 1, 3本株では隣接株の影響は認められなかった.<BR>6. 1, 2本株当り子実重は隣接株の本数が増加する程減少し, 一方3, 2本株当る子実重は隣接株の本数が減少する程増加した.この傾向は100粒重についても認められた.<BR>7. 株別個体子実重の変異は3本株が他株より大きく, このことは株内個体間での相互補償が働き, それによって株当りの子実重を確保しているものと考えられる.
著者
寺澤 輝雄 浅野 紘臣 広瀬 昌平
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.14-18, 1981-07-26
被引用文献数
1

メヒシバ,スベリヒユを土壌の最大容水量に対して12,25,50,100%の4条件下で全生育期間を通してa/2,000ポットで栽培し,土壌水分の差異が両草種の生育と種子生産構造に及ぼす影響を調査した。1)栄養生長期,成熟期を通して,過湿と過乾に対する両草種の反応は異なっており,メヒシバは過乾条件で,スベリヒユは過湿条件で生長がより大きく抑制された。2)栄養生長期の地上部乾物重で最大生長を示す最適水分条件はメヒシバでは50%区であり,スベリヒユでは25%区であった。3)両草種の種あるいはがい果当たりの稔実種子生産量は4処理条件下で,ほぼ一定であり,土壌水分の変化による個体当たりの種子生産量の差異は個体当たり,穂数あるいはがい果数の増減によるものであった。4)土壌水分の差異によるCREの変化は,メヒシバで3〜4%の範囲にあり,一方,スベリヒユでは15〜20%であって,スベリヒユはメヒシバに比べCREが高かった。5)両草種の形質の土壌水分に対する表現型可変性は生長量の形質に関しては,スベリヒユの分枝数を除いて,一般にメヒシバがスベリヒユに比べて高く,成熟期の種子生産形質については,メヒシバの穂数を除いて,一般に,スベリヒユがメヒシバに比べて高かった。6)最適水分条件下でメヒシバは穂数,スベリヒユはがい果の増加によって個体当たり種子数の拡大生産を確保し,不適当な条件下でも,両種は得られた種あるいはがい果に稔実した種子を確実に着生し,最低限の生存を確保していることが明らかにされた。
著者
若月 利之 石田 英子 増田 美砂 林 幸博 広瀬 昌平 TRAORE S.K.B ALLURI K. OTOO E. OLANIYAN G.O IGBOANUGO A. FAGBAMI A. 小池 浩一郎 宮川 修一 鹿野 一厚 中条 広義 福井 捷朗
出版者
島根大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

ナイジェリア中部ニジェール洲、ビダ市付近のエミクパタ川集水域のヌペ人の村落から農民の参加意欲と土と水条件より5ケ村のベンチマーク村落を選んだ。アジア的な水田稲作とヌペの伝統的低地稲作システムを融合させながら展開するための実証試験をニジェール洲農業開発公社の普及研究員と国立作物研究所の研究員の協力を得ながら、農民参加により実施した。又、多目的樹種を中心にした育苗畑の整備と管理法及び成熟苗を利用したアップランドにおけるアグロフォレストリーの実証試験も実施した。東北タイより収集した品種特性の異なるタマリンドの種より育苗した。次年度には移植する予定。ガーナのクマシ付近のドインヤマ川小低地集水域でも、同様の水田農業とアグロフォレストリーを農民参加により実施することにより、劣化集水域を再生するための実証試験を実施するに当たって必要な土と水と気象条件、在来の農林業システム、村落の社会経済的条件等、各種の基礎的調査を実施した。一部では水田造成と稲作、村落育苗畑等の小規模実証試験を行った。ニジェールのドッソ付近のマタンカリ村付近のサヘル帯の小低地集水域でも同様の基礎調査を実施した。タイとインドネシアでは西アフリカに応用可能な農林業システムの文献資科や、上述のように樹木のタネ等を収集した。アジアと西アフリカの研究者と意見交換し、農林業システム融合の条件を検討した。又、タイで採取した樹木種子はナイジェリアの苗畑で発芽生育させ、生育は順調なので移植を準備中である。フィリピンでは世界の稲作システムに関する既存の資料を収集した。