著者
廣嶋 清志
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.163-183, 2001-10-31 (Released:2016-09-30)
参考文献数
18

近年の合計出生率低下について,夫婦出生率低下が寄与していないという有力な見解が普及しているが,本研究はこの見解を生み出した年齢別有配偶出生率AMFRを用いた要因分解法を批判した。 コーホートの年齢別初婚率と結婚期間別夫婦出生率によって年齢別有配偶出生率AMRFを計算するモデルを基にして,コーホートの年齢別初婚率と結婚期間別夫婦出生率の水準と分布がそれぞれ変化する4つのシミュレーションによって,年次別合計出生率低下を年齢別有配偶率と年齢別有配偶出生率による要因分解の結果を観察した。その結果,初婚率分布の変化(晩婚化または早婚化)が生じていない場合のみ,その要因分解は適切な結果をもたらすが,初婚率分布が遅れると夫婦出生率に変化はないのにもかかわらず,年齢別有配偶率のみが低下をもたらし,年齢別有配偶出生率AMFRは上昇の効果をもつという結果となり,誤った解釈を生むことを明らかにした。 この問題はより一般的に,第1の行動を前提として第2の行動が生じる場合に,第1の行動経験者について第2の行動を年齢によって分析を行う際の注意点として一般化される。
著者
廣嶋 清志
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
no.26, pp.1-20, 2000-06-01
被引用文献数
2

1970年代半ばからの合計出生率低下の人口学的要因について多くの研究が行われてきたが,一般的に,年齢別有配偶出生率を用いた要因分解の結果に基づき,夫婦出生率が低下に寄与していないと認識されている。本稿は,コーホートの初婚率,出生率を人口動態統計と国勢調査結果に基づきあらためてより厳密に計測し,これを用いて年次別出生率を再現するモデルによってシミュレーションを行うことにより,1970年代半ばからの合計出生率低下に対する結婚と結婚出生率の寄与の大きさを明らかにした。これに必要なコーホートの初婚率と出生率は年次別年齢別の初婚率と出生率から導かれたが,後者は,1947年から1998年まで52年間の人口動態統計による女子の年齢別初婚数と出生数に基づき,今回改めて計算しなおした。コーホートの初婚水準(生涯既婚率),初婚期(平均初婚年齢),既婚出生水準(生涯既婚出生率),既婚出生期(平均初婚出生間年数)の4変数について,それぞれ1933-34年コーホート以後,その値が一定かあるいは現実どおりに変化したかの2種を設定し,16通りのシミュレーションを行った。その結果,1970-2000年の全期間についてみると,合計出生率低下(2.138→1.386)0.748の過半56.7%はコーホートの初婚水準低下(非婚化)によるものであり,13.5%が初婚期の遅れ(晩婚化)による。また,24.5%は既婚出生率水準低下(生涯既婚出生率低下)により,5.3%が既婚出生期の遅れによるものである。したがって,結婚の要因と夫婦出生率の要因の寄与量の比率は7:3である。したがって,少子化対策においては,晩婚化・非婚化に対する対策だけでなく,夫婦の出生率に直接関わる条件についての政策の重要性が改めて明らかにされた。この結果は,Ryderの量指標とテンポ指標による結果ともよく合っており,また,コーホート出生率のテンポの遅れがもたらす年次別合計出生率の低下量についての定量的関係も確認された。
著者
廣嶋 清志
出版者
島根大学
雑誌
山陰研究 (ISSN:1883468X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-36, 2010-12-31

幕末における出生率上昇,人口増加は,低階層ほど多い(就業に伴う)移動が減少することによりその出生率と家の再生産率が上昇することによってもたらされたとの予想のもとに,幕末石見銀山領における階層別の移動率を観察し,その高さが,10石以上層を別として,階層の高さに反比例することを示すことができた。同時に,家族を残した就業に関わる移動と考えられる出職という記載が宗門改帳にわずかに発見されたが,この記載は,幕末の緊迫した情勢によって一部の村で例外的に行われたものと考えられ,出職の多くは,一度,転出(出人)と記載されたあと,村内の宗門改帳から除外されたと考えられる。この宗門改帳上不在の家成員は,1年に何度か帰宅することがあったとしても,出職が結婚している者の結婚生活にとってさまたげになり,あるいは未婚者の結婚年齢を遅くし,その結果,家の再生産率を低下させ,その階層差を生み出す重要な原因と考えられる。同時に,宗門改帳による在村人口のみによって計算した結婚率や出生率は出職者を多く含む階層では見かけ上やや高くなるものといえる。このことから,1石未満層に比べ無高層の家再生産率は低いにもかかわらず,結婚率と出生率は高くなったものと考えられる。13;