著者
廣嶋 清志
出版者
日本健康学会
雑誌
日本健康学会誌 (ISSN:24326712)
巻号頁・発行日
vol.86, no.5, pp.231-241, 2020-09-30 (Released:2020-11-02)
参考文献数
43

The population policies in post-war Japan are argued dividing the period into four. The first period from 1945 to 1959 was the period of so-called over-population when the policies were implemented based on the legislation of Eugenic Protection Law where abortions were legally permitted and favored over contraception to protect the mothers’ health and eugenics, which is based on the idea of counter-selection. The second period from 1960 to 1971 was the period in which the policy of population quality was implemented when the birth rate was thought to be low enough. The third period was the one from 1972 to 1976 when the over-population was argued again and the movement to restrict population growth was promoted while the IUD was officially permitted. The fourth period is from 1977 to the present when the pronatalist policy has been advocated according to the decline of fertility under the replacement level. The development of the implementation of the policy can be articulated into three steps; first: the recognition of the main cause of the fertility decline as the decline of marriage rate, second: the recognition of the cause of the decline of marriage rate as the unfavorable economic situation of younger generation, third: the implementation of policies to attenuate the economic situation of the generation. These steps were gradually taken though the third step has just begun in the 21st century and yet to be virtually effective.
著者
廣嶋 清志
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.31-40, 1984-05-21 (Released:2017-09-12)

Since the middle of the 1970's, the major part of reproductive populatoin has been the generation born during the period of rapid fertility decline after the War. Author examined microscopically this trend through the observation of the effects of sibling number on marriage, birth etc., using survey data of 2,034 couples with at least one child younger than 6.25 years old. The main findings are as follows. (1) The effect of sibling number on school career has been robust and negative for both husband and wife and been strengthened for newer cohorts. (2) Residential relation which expresses whether a couple lives with or near their parents is negatively and strongly affected by the number of siblings. The number of siblings of spouse reversely affects it. (3) As for age at marriage, the indirect effects of sibling number is stronger through school career and co-residence with parents than direct effects. Nevertheless if wife is only child, which is assumed to be unadvantageous by the necessity to co-reside with her parents, wife's age at marriage is higher. But this effect has been being attenuated. Co-residence with parents or parent-in-laws has a positive effect on age at marriage for both husband and wife. Psychological cost accompanied by co-residence with parents may raise age at marriage. (4) School career of husband has positive effect on fertility. Indirect effect of sibling number through this can be inferred as negative. Effects through age at marriage are negative for wife and positive for husband. Direct effect of husband's sibling number on fertility is small but positive. These effects of sibling number allow us to speculate that the decrease in number of siblings has been one of the factors affecting the expansion in educational enrollment rate and also one of factors raising age at marriage through school career and co-residence with parents. The decrease in number of siblings is to continue for around 1965 birth cohort. Therefore changes in demographic behavior through the change of sibling number will last until the beginning of the 1990's.
著者
廣嶋 清志
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-20, 2000-06-01 (Released:2017-09-12)

1970年代半ばからの合計出生率低下の人口学的要因について多くの研究が行われてきたが,一般的に,年齢別有配偶出生率を用いた要因分解の結果に基づき,夫婦出生率が低下に寄与していないと認識されている。本稿は,コーホートの初婚率,出生率を人口動態統計と国勢調査結果に基づきあらためてより厳密に計測し,これを用いて年次別出生率を再現するモデルによってシミュレーションを行うことにより,1970年代半ばからの合計出生率低下に対する結婚と結婚出生率の寄与の大きさを明らかにした。これに必要なコーホートの初婚率と出生率は年次別年齢別の初婚率と出生率から導かれたが,後者は,1947年から1998年まで52年間の人口動態統計による女子の年齢別初婚数と出生数に基づき,今回改めて計算しなおした。コーホートの初婚水準(生涯既婚率),初婚期(平均初婚年齢),既婚出生水準(生涯既婚出生率),既婚出生期(平均初婚出生間年数)の4変数について,それぞれ1933-34年コーホート以後,その値が一定かあるいは現実どおりに変化したかの2種を設定し,16通りのシミュレーションを行った。その結果,1970-2000年の全期間についてみると,合計出生率低下(2.138→1.386)0.748の過半56.7%はコーホートの初婚水準低下(非婚化)によるものであり,13.5%が初婚期の遅れ(晩婚化)による。また,24.5%は既婚出生率水準低下(生涯既婚出生率低下)により,5.3%が既婚出生期の遅れによるものである。したがって,結婚の要因と夫婦出生率の要因の寄与量の比率は7:3である。したがって,少子化対策においては,晩婚化・非婚化に対する対策だけでなく,夫婦の出生率に直接関わる条件についての政策の重要性が改めて明らかにされた。この結果は,Ryderの量指標とテンポ指標による結果ともよく合っており,また,コーホート出生率のテンポの遅れがもたらす年次別合計出生率の低下量についての定量的関係も確認された。
著者
廣嶋 清志
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.163-183, 2001-10-31 (Released:2016-09-30)
参考文献数
18

近年の合計出生率低下について,夫婦出生率低下が寄与していないという有力な見解が普及しているが,本研究はこの見解を生み出した年齢別有配偶出生率AMFRを用いた要因分解法を批判した。 コーホートの年齢別初婚率と結婚期間別夫婦出生率によって年齢別有配偶出生率AMRFを計算するモデルを基にして,コーホートの年齢別初婚率と結婚期間別夫婦出生率の水準と分布がそれぞれ変化する4つのシミュレーションによって,年次別合計出生率低下を年齢別有配偶率と年齢別有配偶出生率による要因分解の結果を観察した。その結果,初婚率分布の変化(晩婚化または早婚化)が生じていない場合のみ,その要因分解は適切な結果をもたらすが,初婚率分布が遅れると夫婦出生率に変化はないのにもかかわらず,年齢別有配偶率のみが低下をもたらし,年齢別有配偶出生率AMFRは上昇の効果をもつという結果となり,誤った解釈を生むことを明らかにした。 この問題はより一般的に,第1の行動を前提として第2の行動が生じる場合に,第1の行動経験者について第2の行動を年齢によって分析を行う際の注意点として一般化される。
著者
廣嶋 清志
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.41-60, 2023 (Released:2023-11-02)
参考文献数
29

山陰の一農村,今浦の宗門改帳を用い結婚率と出生率の年次別観察によって,天明・天保飢饉およびそれ以前の2つの推定された飢饉について(1)飢饉時に低結婚率・低出生率,(2)飢饉直後に高結婚率・高出生率が生じたこと,(3)さらにそれぞれの約30年後に,適齢期(26-30歳)の女の人口割合の減少および増加が現れることを確認した((3)は天保飢饉を除く)。また,この適齢期人口割合の減少・増加は結婚数と出生数の減少・増加(粗結婚率と粗出生率の低下・上昇)を2次的に引き起こしたことを示した。この因果関係は相関分析と整合的であることから,その存在が推定される。ただし,この2次的な粗結婚率・粗出生率の変動の発現は1815-19年を除いてそのときの新たな飢饉の発生や余波により加速・相殺などの変形を受けた。適齢期人口の増減は直接に結婚件数を単純に増減させるだけではなく,誘導的な年齢別結婚率の上昇・低下を引き起こすことにより結婚数を増減することが明らかになった。このような適齢期人口規模の増減による誘導的な年齢別結婚率の増減現象は従来ほとんど検証されたことがないが,現代人口のような晩婚化,未婚化などの強い長期的趨勢の存在しなかった江戸期農村人口においては観察が可能になったと考えられる。1810年代後半に起こった結婚率と出生率の低下は,天明飢饉時の出生率低下の影響が30年後に顕在化したものであるが,この村の人口増加率は年0.33%の増加基調であるためこの2次的な人口減少が顕在化したものと考えられる。この一時的な人口減少の最大の要因は出生減であるが,社会減の増大も影響しており,他村において同じような状況が起こることによって他村からの婚入の減少を中心とする社会の不活発な状況も影響したといえる。この人口減少を起因とする経済社会の異変が生じていたことは同時代の人に感じられていたかもしれないが,人口減少はおそらく原因不明であっただろう。
著者
廣嶋 清志
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
no.26, pp.1-20, 2000-06-01
被引用文献数
2

1970年代半ばからの合計出生率低下の人口学的要因について多くの研究が行われてきたが,一般的に,年齢別有配偶出生率を用いた要因分解の結果に基づき,夫婦出生率が低下に寄与していないと認識されている。本稿は,コーホートの初婚率,出生率を人口動態統計と国勢調査結果に基づきあらためてより厳密に計測し,これを用いて年次別出生率を再現するモデルによってシミュレーションを行うことにより,1970年代半ばからの合計出生率低下に対する結婚と結婚出生率の寄与の大きさを明らかにした。これに必要なコーホートの初婚率と出生率は年次別年齢別の初婚率と出生率から導かれたが,後者は,1947年から1998年まで52年間の人口動態統計による女子の年齢別初婚数と出生数に基づき,今回改めて計算しなおした。コーホートの初婚水準(生涯既婚率),初婚期(平均初婚年齢),既婚出生水準(生涯既婚出生率),既婚出生期(平均初婚出生間年数)の4変数について,それぞれ1933-34年コーホート以後,その値が一定かあるいは現実どおりに変化したかの2種を設定し,16通りのシミュレーションを行った。その結果,1970-2000年の全期間についてみると,合計出生率低下(2.138→1.386)0.748の過半56.7%はコーホートの初婚水準低下(非婚化)によるものであり,13.5%が初婚期の遅れ(晩婚化)による。また,24.5%は既婚出生率水準低下(生涯既婚出生率低下)により,5.3%が既婚出生期の遅れによるものである。したがって,結婚の要因と夫婦出生率の要因の寄与量の比率は7:3である。したがって,少子化対策においては,晩婚化・非婚化に対する対策だけでなく,夫婦の出生率に直接関わる条件についての政策の重要性が改めて明らかにされた。この結果は,Ryderの量指標とテンポ指標による結果ともよく合っており,また,コーホート出生率のテンポの遅れがもたらす年次別合計出生率の低下量についての定量的関係も確認された。
著者
廣嶋 清志
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.56-62, 2016
被引用文献数
1
著者
廣嶋 清志
出版者
島根大学
雑誌
山陰研究 (ISSN:1883468X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-36, 2010-12-31

幕末における出生率上昇,人口増加は,低階層ほど多い(就業に伴う)移動が減少することによりその出生率と家の再生産率が上昇することによってもたらされたとの予想のもとに,幕末石見銀山領における階層別の移動率を観察し,その高さが,10石以上層を別として,階層の高さに反比例することを示すことができた。同時に,家族を残した就業に関わる移動と考えられる出職という記載が宗門改帳にわずかに発見されたが,この記載は,幕末の緊迫した情勢によって一部の村で例外的に行われたものと考えられ,出職の多くは,一度,転出(出人)と記載されたあと,村内の宗門改帳から除外されたと考えられる。この宗門改帳上不在の家成員は,1年に何度か帰宅することがあったとしても,出職が結婚している者の結婚生活にとってさまたげになり,あるいは未婚者の結婚年齢を遅くし,その結果,家の再生産率を低下させ,その階層差を生み出す重要な原因と考えられる。同時に,宗門改帳による在村人口のみによって計算した結婚率や出生率は出職者を多く含む階層では見かけ上やや高くなるものといえる。このことから,1石未満層に比べ無高層の家再生産率は低いにもかかわらず,結婚率と出生率は高くなったものと考えられる。13;