著者
谷本 道哉 高田 佑輔 栗原 俊之 村出 真一朗 柳谷 登志雄 形本 静夫
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.26, pp.63-78, 2010-09

背景: 自転車サイクリング運動はレクリエーションスポーツとして広く行われている. 自転車運動は天候や交通状況の都合などから,実際のロード走行の代わりに室内でエルゴメータ等を用いて行われることも多い. しかし, ロード走行とエルゴメータのペダリング動作の違いは明確にされていない. 目的: 自転車のロード走行とエルゴメータの動作および筋活動の相違点を検証することを目的とした .使用する自転車の形状, 負荷等の条件を統一するため, 本研究ではロード走行とエルゴメータを模したものとして, 前後方向以外の自転車の動きが固定されず動作の自由度の高いフリーローラーと後輪車軸をローラーの土台に固定する固定ローラーを用いて同一の自転車ペダリング動作の比較を行った. 方法: 順天堂大学自転車競技部に所属する選手7名を用いてフリーローラーと固定ローラーでのペダリング運動を60rpm および 90rpmで行い, 下肢の関節角度変位および筋放電量を測定した. 結果: 60rpm, 90rpmともに下肢3関節の関節動作は全般的にフリーローラーにおいて固定ローラーよりも関節稼働量が小さい様子が観察された. 2試技間で有意差が見られたのは60rpmにおける股関節, 膝関節, 90rpmにおける膝関節, 足関節であった. 下肢筋群のべダリング動作中の1サイクル中の筋放電量の平均値およびピーク値は, 60, 90rpmのいずれの回転数, いずれの筋においても2試技間に有意な差は見られなかった. 結論: フリーローラーと固定ローラーではペダリング動作の下肢の関節動作形態は異なる. しかし筋放電量には相違は見られない. (英文) Background: Many people enjoy cycling as a competitive or recreational sport. Sometimes bicycle exercises are performed on bicycle ergometers indoors instead of outdoor road cycling, because of bad weather or traffic. However, the difference of movement between road cycling and cycling with a bicycle ergometer is not investigated sufficiently. Purpose: The purpose of this study is to elicit the difference of movement between road cycling and cycling with a bicycle ergometer by researching kinematics and electromyography data during bicycle exercise. We compared the kinematics and muscle activity of bicycle exercise on a free bicycle roller and on a fixed bicycle roller (bicycle trainer with a fixed rear wheel axis) as a comparison of road cycling and cycling with a bicycle ergometer. Method: Seven cyclists affiliated with the cycling club of Juntendo University performed bicycle exercises on a free bicycle roller and on a fixed bicycle roller by 60 and 90 rpm, and lower limb kinematics and electromyography data were measured. Result: Widths of lower limb joint movement were larger on the fixed bicycle roller than on the free bicycle roller both in 60rpm and 90rpm. Widths of hip joint and knee joint movements were significantly larger in 60rpm. Widths of knee joint and ankle joint movements were significantly larger in 90rpm. However, there was no significant difference in the electromyographic amplitude between the two methods in neither of the lower limb muscles and in neither of the rpms. Conclusion: The kinematics of lower limbs in bicycle exercise with a free bicycle roller was different from that with a fixed bicycle roller. However, there were no such differences between the two methods in the electromyography data of lower limbs.
著者
形本 静夫 青木 純一郎 内藤 久士
出版者
順天堂大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

ソフトボ-ル部活動が児童の体格および体力、特に健康に関連した体力要素に及ぼす影響を1年間にわたり追跡研究した。また、同時に練習時の運動強度およびエネルギ-消費量ならびに練習による尿中成分の変化についても検討を加えた。被験者にはソフトボ-ル部活動に定期的に参加している小学校4年生男子7名と5年生男子6名の計13名と日頃規則的に身体活動を行なっていない5年生男子6名を用いた。なお、5年生部員は翌年の8月の時点でトレ-ニングを中止した。練習時間は冬季が約2時間、夏季は4〜5時間であった。部員が冬季および夏季にそれぞれ平均1時間53分および4時間31分練習に参加したときの運動強度は、被験者のVo_2maxの46±11および39±13%に相当し、冬季の方が高い傾向にあった。また、1時間当たりのエネルギ-消費量も冬季(235±62kcal)が夏季(200±59kcal)よりも高い傾向にあった。しかし、部員が夏季に1日5時間の練習に参加したときのエネルギ-消費量は彼らの1日のエネルギ-所要量の約1/2の1000kcalに達し、栄養学的な配慮が不可欠であることが示唆された。また、練習による蛋白尿の出現は冬季に17例中8例(±〜+)、夏季に18例中11例(±〜++)に認められたが、++の反応(3例)は夏季のみにしか観察されなかった。1年後、トレ-ニングを継続した4年生部員の身長、体重、除脂肪体重、握力、背筋力、垂直跳び、反復横跳びおよび最大換気量ならびにVo_2maxの絶対値には有意な改善が認められた。しかし、体脂肪率や体重1kg当たりの最大換気量およびVo_2maxに有意な変化は見られなかった。このような傾向は夏以降トレ-ニングを中止した5年生部員や対照群の児童にも観察され、定期的なソフトボ-ルへの練習参加が児童の体格や健康に関連した体力要素に及ぼす影響は必ずしも明らかではなかった。