著者
下代 昇平 谷本 道哉
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.128_1, 2017 (Released:2018-02-15)

背景・目的:近年運動において、体幹の剛体化は、四肢の土台としての働き、下肢から上肢への力の伝達等の観点から注目されている。体幹を剛体化させるトレーニング(TR)としてプランクなどの体幹TRが注目されており、実施の際には腹圧の上昇を伴うことが重要といわれている。本研究では体幹TRをはじめ、各種運動時の腹圧を調べることを目的とした。なお、腹腔の構造上、腹圧の上昇は体幹を伸展させるトルクが生じる。この観点からの検証、考察も行うこととした。方法:プランク・バックブリッジ等の体幹TR、スクワット・ベンチプレス等の各種筋力TR、ジャンプ・投打動作等のダイナミックな競技動作を実施し、運動中の腹圧を肛門よりカテーテル式圧力計を挿入して測定した。結果:腹圧の上昇の程度は「体幹TR(3~10%)<<筋力TR(7~47%程度)<ダイナミックな競技動作(38~61%:いずれもバルサルバを100%とする)」であり、体幹TRは小さい値であった。また、体幹伸展トルクを生じるような動作において特に腹圧が高まる様子は観察されなかった。
著者
下代 昇平 谷本 道哉
出版者
日本実験力学会
雑誌
実験力学 (ISSN:13464930)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.184-191, 2018-10-11 (Released:2018-10-12)
参考文献数
31

Recently, athletes tend to focus on trunk stability during sports movements. Trunk stability is thought to play the role of an upper and lower limbs' foundation and to improve transfer capacity of power from the lower limbs to the upper limbs. Intra-abdominal pressure (IAP) development is considered to be important for trunk stability training exercises such as planks. The purpose of this study was to examine how IAP changed in sports movements and to compare IAP during various types of movements. Ten healthy men with resistance training experience of more than 1 year performed movements. Maximal IAP during the valsalva maneuver (maxIAP) was measured. The subjects performed trunk stability training (TST), trunk muscles resistance training (TRT), upper and lower limbs movement muscles resistance training (LRT) and dynamic sports movement (DSM). IAP value during TST (8~19%maxIAP) was significantly lower than that during DSM and LRT and was almost the same as that during TRT. IAP value during DSM was the highest (37~62%maxIAP) in all movement groups. IAP value correlated at erector spinae muscles electromyography (EMG) during TRT, LRT and DSM (P<0.05). These results suggest that IAP development did not appear during TST. IAP development may be related to trunk extension moment.
著者
谷本 道哉
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-9, 2020 (Released:2020-07-31)
参考文献数
17

体幹トレーニングとして,体幹の剛体化を目的としたプランクが行われることが多い。体幹屈曲筋・伸展筋の筋力トレーニングとして活用されることもある。また,腹横筋の活動促通を目的としたドローインもよく行われる。しかし,プランクでは実際には体幹を剛体化させるBracingも腹圧の上昇もしていない。また,そもそも多くの競技動作では体幹は固定させるよりも,大きく動作して力学的仕事を行っており,これらから考えるとプランクの意義を見出しにくい。ただし,反証データもあるが,プランクの実施による競技パフォーマンスの向上を認める報告もある。そのメカニズムは明確ではないが,選手にとって効果を実感できるのであれば,プランクの実施はプラスとなるかもしれない。また,ドローインには腹横筋の筋活動の促通効果が腰痛患者において認められる。ただし,腹横筋の筋活動レベルは競技動作そのもののほうがドローインよりもはるかに高い。競技動作を十分に行える身体機能を有する競技選手においては,ドローインを行う意義は薄いかもしれない。プランクやドローインの意義には不明確な部分があるが,体幹の機能から考えて,体幹動作の強い筋力と大きな可動性を有することが重要であることはおよそ間違いないであろう。これらの機能改善には,体幹屈曲筋・伸展筋の筋力トレーニングと体幹の可動性獲得の動作トレーニングが有用となるだろう。
著者
谷本 道哉 高田 佑輔 栗原 俊之 村出 真一朗 柳谷 登志雄 形本 静夫
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.26, pp.63-78, 2010-09

背景: 自転車サイクリング運動はレクリエーションスポーツとして広く行われている. 自転車運動は天候や交通状況の都合などから,実際のロード走行の代わりに室内でエルゴメータ等を用いて行われることも多い. しかし, ロード走行とエルゴメータのペダリング動作の違いは明確にされていない. 目的: 自転車のロード走行とエルゴメータの動作および筋活動の相違点を検証することを目的とした .使用する自転車の形状, 負荷等の条件を統一するため, 本研究ではロード走行とエルゴメータを模したものとして, 前後方向以外の自転車の動きが固定されず動作の自由度の高いフリーローラーと後輪車軸をローラーの土台に固定する固定ローラーを用いて同一の自転車ペダリング動作の比較を行った. 方法: 順天堂大学自転車競技部に所属する選手7名を用いてフリーローラーと固定ローラーでのペダリング運動を60rpm および 90rpmで行い, 下肢の関節角度変位および筋放電量を測定した. 結果: 60rpm, 90rpmともに下肢3関節の関節動作は全般的にフリーローラーにおいて固定ローラーよりも関節稼働量が小さい様子が観察された. 2試技間で有意差が見られたのは60rpmにおける股関節, 膝関節, 90rpmにおける膝関節, 足関節であった. 下肢筋群のべダリング動作中の1サイクル中の筋放電量の平均値およびピーク値は, 60, 90rpmのいずれの回転数, いずれの筋においても2試技間に有意な差は見られなかった. 結論: フリーローラーと固定ローラーではペダリング動作の下肢の関節動作形態は異なる. しかし筋放電量には相違は見られない. (英文) Background: Many people enjoy cycling as a competitive or recreational sport. Sometimes bicycle exercises are performed on bicycle ergometers indoors instead of outdoor road cycling, because of bad weather or traffic. However, the difference of movement between road cycling and cycling with a bicycle ergometer is not investigated sufficiently. Purpose: The purpose of this study is to elicit the difference of movement between road cycling and cycling with a bicycle ergometer by researching kinematics and electromyography data during bicycle exercise. We compared the kinematics and muscle activity of bicycle exercise on a free bicycle roller and on a fixed bicycle roller (bicycle trainer with a fixed rear wheel axis) as a comparison of road cycling and cycling with a bicycle ergometer. Method: Seven cyclists affiliated with the cycling club of Juntendo University performed bicycle exercises on a free bicycle roller and on a fixed bicycle roller by 60 and 90 rpm, and lower limb kinematics and electromyography data were measured. Result: Widths of lower limb joint movement were larger on the fixed bicycle roller than on the free bicycle roller both in 60rpm and 90rpm. Widths of hip joint and knee joint movements were significantly larger in 60rpm. Widths of knee joint and ankle joint movements were significantly larger in 90rpm. However, there was no significant difference in the electromyographic amplitude between the two methods in neither of the lower limb muscles and in neither of the rpms. Conclusion: The kinematics of lower limbs in bicycle exercise with a free bicycle roller was different from that with a fixed bicycle roller. However, there were no such differences between the two methods in the electromyography data of lower limbs.
著者
山本 祥子 高田 和子 別所 京子 谷本 道哉 宮地 元彦 田中 茂穂 戸谷 誠之 田畑 泉
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.195-200, 2008-08-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1 3

We measured the basal metabolic rate (BMR), fat-free mass (FFM) and physical activity level (PAL) of well-trained bodybuilders as typical athletes with muscular development by resistance training in order to examine the standard BMR and PAL ranges for athletes. The subjects were 14 bodybuilders (mean±SD age: 36.8±9.1y.; height: 171.6±6.2cm; weight: 77.1±7.6kg; FFM: 67.6±6.8kg) who each trained for an average of 7.5h per week. BMR was measured by using a Douglas bag, the oxygen and carbon dioxide concentrations were analyzed by mass spectrometry, and FFM was measured by dual X-ray energy absorptiometry. PAL was measured by the doubly labeled water method for 7 subjects selected from the 14 bodybuilders. BMR/FFM was 25.4±2.1kcal/kg of FFM/day. Total energy expenditure (TEE) was 3, 432±634kcal, and PAL calculated as TEE divided by BMR was 2.00±0.21. The FFM value needs to be considered when evaluating a standard BMR range, and both training and daily physical activity levels should be considered when evaluating a standard PAL range.
著者
谷本 道哉 下代 昇平
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.132_2, 2017

<p>背景・目的:スポーツチャンバラはレクリエーション性の高いスポーツであり、少年から高齢者まで楽しみながら実施することが可能である。乱取り形式で行えば、ゲーム感覚で楽しみながら、心肺持久負荷および下肢筋群の筋力負荷を相応に与えることが期待できる。本研究では、継続的なスポーツチャンバラの実施が中年男女のメタボ・ロコモリスク指標に与える影響を明確にすることを目的とする。</p><p>方法:平均年齢の中年男女11名を被験者とし、A群6名は週3回11週間の乱取り形式のスポーツチャンバラを実践し、B群5名は運動非介入対照群とした。乱取りは1分×10ラウンドとし、ラウンド間インターバルは30秒とした。12週間のウォッシュアウト期間をおき、A群とB群の介入内容をクロスオーバーさせた。各介入期間前後に左右上下肢筋力、最大酸素摂取量、血液性状の測定を行った。</p><p>結果:スポチャン介入により、上肢および下肢伸展筋力はともに利き腕利き脚側でのみ有意に増大した。最大酸素摂取量は平均で約15%増大した。また血液性状においてはHDLで有意な増大がみられた。</p>
著者
谷本 道哉
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-9, 2020

<p>体幹トレーニングとして,体幹の剛体化を目的としたプランクが行われることが多い。体幹屈曲筋・伸展筋の筋力トレーニングとして活用されることもある。また,腹横筋の活動促通を目的としたドローインもよく行われる。しかし,プランクでは実際には体幹を剛体化させるBracingも腹圧の上昇もしていない。また,そもそも多くの競技動作では体幹は固定させるよりも,大きく動作して力学的仕事を行っており,これらから考えるとプランクの意義を見出しにくい。ただし,反証データもあるが,プランクの実施による競技パフォーマンスの向上を認める報告もある。そのメカニズムは明確ではないが,選手にとって効果を実感できるのであれば,プランクの実施はプラスとなるかもしれない。また,ドローインには腹横筋の筋活動の促通効果が腰痛患者において認められる。ただし,腹横筋の筋活動レベルは競技動作そのもののほうがドローインよりもはるかに高い。競技動作を十分に行える身体機能を有する競技選手においては,ドローインを行う意義は薄いかもしれない。プランクやドローインの意義には不明確な部分があるが,体幹の機能から考えて,体幹動作の強い筋力と大きな可動性を有することが重要であることはおよそ間違いないであろう。これらの機能改善には,体幹屈曲筋・伸展筋の筋力トレーニングと体幹の可動性獲得の動作トレーニングが有用となるだろう。</p>
著者
谷本 道哉 吉岡 伸輔 瀬戸口 芳正 平島 雅也
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.31, pp.31-45, 2013-03-01

[要旨] 背景: 野球投球時の肩関節まわりの発揮トルク・稼働範囲と肩・肘関節まわりの傷害との関連が示唆されているが, その詳細は明らかではない. 目的: 野球投球動作時の肩関節周りの発揮トルクおよび稼働範囲,また肩関節周りの等尺性最大筋力および静的可動域の傷害発症リスクとの関係を明らかにする. 方法: 大学男子硬式野球部に所属する投手12名を用いて, 投球動作時の肩関節周りの発揮トルク(内旋,水平内転), 稼働範囲(外旋,水平外転)を逆動力学より算出した.また肩関節周りの等尺性最大筋力と静的関節可動域の測定を行った.以上の測定項目と,肩・肘関節まわりの傷害発症リスク指標(肩関節引張力,せん断力,肘関節外反トルク)との関係の評価を行った. なお, 力の要素は球速の2乗で除して標準化したものを評価に用いた結果:投球時の発揮トルクと傷害リスク指標との関係は,肩関節内旋トルクは肘関節内反トルクと有意な正の相関(P<0.001)を,肩関節水平内転トルクは肩関節せん断力と有意な正の相関(P<0.001)を示した投球時の関節稼働範囲と傷害リスク指標との関係は, 投球時の肩関節外旋稼働範囲は肘関節内反トルクと有意な負の関(P<0.05)を,投球時の肩関節水平外転稼働範囲は肩関節せん断力と有意な負の相関(P<0.001)を示した. 投球時の肩関節の発揮トルク(肩関節内旋,水平内転の和)の大きい上位6名の「上半身パワータイプ」は,下位6名の「非上半身パワータイプ」よりも肘関節内反トルクが大きい傾向(P<0.1),肩関節せん断力は有意に高値(P<0.05)であった.結論:肩関節周りの発揮トルクを強く使う投手のほうが,また肩関節周りの稼働範囲が小さい投手のほうが肩・肘回りの傷害発症リスク指標が高くなるという関係が観察された.上肢の発揮トルク主動ではない投法,また肩関節周りの大きな稼働範囲を使った投法が, 肩・肘関節まわりの傷害リスクを軽減するという点において優れることが示唆される. [Abstract] Background: Shoulder joint torque and motion range in baseball throwing are considered to have relation with the risk of shoulder and elbow injury. Purpose: The purpose of this study is to investigate the relation among shoulderjoint torque and motion range in baseball throwing, shoulder isometric muscle force and static motion range, and the risk of shoulder and elbow injury. Method: Twelve baseball pitchers affiliated with the baseball club of the University performed maximum speed ball pitching with motion capture kinematics and kinetics analysis, isometric muscle force tests of shoulder inner rotation, and motion range tests of shoulder external rotation and horizontal abduction. The relation among the kinetic characteristics of throwing, the physical characteristics, and the risk of shoulder and elbow injury was investigated Result: Shoulder inner rotation torque in throwing has strong correlation with elbow inversion torque (P<0.001). Shoulder horizontal adduction torque in throwing has strong correlation with shoulder shear force (P<0.001).Motion range of shoulder external rotation in throwing has correlation with elbow inversion torque (P<0.05). Motion range of shoulder horizontal abduction in throwing has strong correlation with shoulder shear force (P<0.001)."Upper arm power type group" defined as the top six subjects with large upper arm torque (amount of shoulder inner rotation and horizontal adduction) in throwing have larger elbow inversion torque (P<0.1) and larger shear force (P<0.05). Conclusion: These results suggested that throwing motion without strong upper arm torque and with larger shoulder motion range decrease the risk of shoulder and elbow injury in throwing.
著者
真田 樹義 宮地 元彦 山元 健太 村上 晴香 谷本 道哉 大森 由実 河野 寛 丸藤 祐子 塙 智史 家光 素行 田畑 泉 樋口 満 奥村 重年
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.291-302, 2010 (Released:2010-07-15)
参考文献数
23
被引用文献数
17 8

The purpose of this study was to develop prediction models of sarcopenia in 1,894 Japanese men and women aged 18-85 years. Reference values for sarcopenia (skeletal muscle index, SMI; appendicular muscle mass/height2, kg/m2) in each sex were defined as values two standard deviations (2SD) below the gender-specific means of this study reference data for young adults aged 18-40 years. Reference values for predisposition to sarcopenia (PSa) in each gender were also defined as values one standard deviations (1SD) below. The subjects aged 41 years or older were randomly separated into 2 groups, a model development group and a validation group. Appendicular muscle mass was measured by DXA. The reference values of sarcopenia were 6.87 kg/m2 and 5.46 kg/m2, and those of PSa were 7.77 kg/m2 and 6.12 kg/m2. The subjects with sarcopenia and PSa aged 41 years or older were 1.7% and 28.8% in men and 2.7% and 20.7% in women. The whole body bone mineral density of PSa was significantly lower than in normal subjects. The handgrip strength of PSa was significantly lower than in normal subjects. Stepwise regression analysis indicated that the body mass index (BMI), waist circumference and age were independently associated with SMI in men; and BMI, handgrip strength and waist circumference were independently associated with SMI in women. The SMI prediction equations were applied to the validation group, and strong correlations were also observed between the DXA-measured and predicted SMI in men and women. This study proposed the reference values of sarcopenia in Japanese men and women. The prediction models of SMI using anthropometric measurement are valid for alternative DXA-measured SMI in Japanese adults.
著者
谷本 道哉 吉岡 伸輔 瀬戸口 芳正 平島 雅也 Tanimoto Michiya Yoshioka Shinsuke Setoguchi Yoshimasa Hirashima Masaya
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.31-45, 2013-03-01

[要旨] 背景: 野球投球時の肩関節まわりの発揮トルク・稼働範囲と肩・肘関節まわりの傷害との関連が示唆されているが, その詳細は明らかではない. 目的: 野球投球動作時の肩関節周りの発揮トルクおよび稼働範囲,また肩関節周りの等尺性最大筋力および静的可動域の傷害発症リスクとの関係を明らかにする. 方法: 大学男子硬式野球部に所属する投手12名を用いて, 投球動作時の肩関節周りの発揮トルク(内旋,水平内転), 稼働範囲(外旋,水平外転)を逆動力学より算出した.また肩関節周りの等尺性最大筋力と静的関節可動域の測定を行った.以上の測定項目と,肩・肘関節まわりの傷害発症リスク指標(肩関節引張力,せん断力,肘関節外反トルク)との関係の評価を行った. なお, 力の要素は球速の2乗で除して標準化したものを評価に用いた結果:投球時の発揮トルクと傷害リスク指標との関係は,肩関節内旋トルクは肘関節内反トルクと有意な正の相関(P<0.001)を,肩関節水平内転トルクは肩関節せん断力と有意な正の相関(P<0.001)を示した投球時の関節稼働範囲と傷害リスク指標との関係は, 投球時の肩関節外旋稼働範囲は肘関節内反トルクと有意な負の関(P<0.05)を,投球時の肩関節水平外転稼働範囲は肩関節せん断力と有意な負の相関(P<0.001)を示した. 投球時の肩関節の発揮トルク(肩関節内旋,水平内転の和)の大きい上位6名の「上半身パワータイプ」は,下位6名の「非上半身パワータイプ」よりも肘関節内反トルクが大きい傾向(P<0.1),肩関節せん断力は有意に高値(P<0.05)であった.結論:肩関節周りの発揮トルクを強く使う投手のほうが,また肩関節周りの稼働範囲が小さい投手のほうが肩・肘回りの傷害発症リスク指標が高くなるという関係が観察された.上肢の発揮トルク主動ではない投法,また肩関節周りの大きな稼働範囲を使った投法が, 肩・肘関節まわりの傷害リスクを軽減するという点において優れることが示唆される. [Abstract] Background: Shoulder joint torque and motion range in baseball throwing are considered to have relation with the risk of shoulder and elbow injury. Purpose: The purpose of this study is to investigate the relation among shoulderjoint torque and motion range in baseball throwing, shoulder isometric muscle force and static motion range, and the risk of shoulder and elbow injury. Method: Twelve baseball pitchers affiliated with the baseball club of the University performed maximum speed ball pitching with motion capture kinematics and kinetics analysis, isometric muscle force tests of shoulder inner rotation, and motion range tests of shoulder external rotation and horizontal abduction. The relation among the kinetic characteristics of throwing, the physical characteristics, and the risk of shoulder and elbow injury was investigated Result: Shoulder inner rotation torque in throwing has strong correlation with elbow inversion torque (P<0.001). Shoulder horizontal adduction torque in throwing has strong correlation with shoulder shear force (P<0.001).Motion range of shoulder external rotation in throwing has correlation with elbow inversion torque (P<0.05). Motion range of shoulder horizontal abduction in throwing has strong correlation with shoulder shear force (P<0.001)."Upper arm power type group" defined as the top six subjects with large upper arm torque (amount of shoulder inner rotation and horizontal adduction) in throwing have larger elbow inversion torque (P<0.1) and larger shear force (P<0.05). Conclusion: These results suggested that throwing motion without strong upper arm torque and with larger shoulder motion range decrease the risk of shoulder and elbow injury in throwing.
著者
谷本 道哉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.867-870, 2015-09-25

加齢とともに進行する筋萎縮症(サルコペニア:加齢性筋萎縮症)の予防に最も効果的な方法は,筋肉に抵抗をかけるレジスタンストレーニング(RT)である.通常のRTでは高齢者であっても最大筋力の80%程度の大きな負荷強度を用いなければ明らかな筋肥大は生じない.しかしながら高負荷RTには整形外科的傷害や心臓血管系イベントのリスクが少なからずある.本稿では筋発揮張力を維持しながら動作を行うことで,比較的軽負荷を用いて大きな筋肥大効果の得られる筋発揮張力維持スロー法(スロートレーニング)について解説する.
著者
谷本 道哉
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.155_1, 2016 (Released:2017-02-24)

背景:スポーツチャンバラは、子供から大人まで楽しめるレクリエーションスポーツである。スポーツチャンバラの運動特性を検証した研究は少ない。その生理学的負荷特性に関する知見を得ることには大きな意義がある。方法:被験者には10名の健常な成人男性を用いた。実験① 1分× 10ラウンドの1対1の自由乱取りを行い、その際の酸素摂取量等を測定した。実験② チャンバラの代表的な攻撃動作・よけ動作を行い、その際の床反力・筋活動レベルの評価を行った。実験③ チャンバラでの反りよけ動作を行いその際の体幹伸展角度の評価を行った。また、実験①-③すべてにおいて比較対象としてチャンバラ以外の動作での測定を行った。結果:実験① 10ラウンドのチャンバラの乱取りでの平均酸素摂取量は31.5 ± 5.9ml/min/kgであり、時速8kmの走行をやや上回る程度であった。実験② チャンバラの攻撃動作の上下肢の筋活動レベルおよびよけ動作の下肢の筋活動レベルはテニスのスイングと同程度であった。実験③ チャンバラの反りよけ動作の最大体幹伸展角度は95.6 ± 22.0°であり、ラジオ体操の後屈動作と同程度であった。
著者
真田 樹義 宮地 元彦 山元 健太 村上 晴香 谷本 道哉 大森 由実 河野 寛 丸藤 祐子 塙 智史 家光 素行 田畑 泉 樋口 満 奥村 重年
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.243, 2019-06-01 (Released:2019-05-18)

理由:体力科学 第59巻 第3号 291-302(2010)掲載論文における身体組成データ収集の過程で,資格を持たない者がX線骨密度測定装置を操作したことを理由とした著者からの掲載論文撤回の希望を受け,本誌より撤回する. 一般社団法人日本体力医学会 編集委員長 田中 喜代次
著者
真田 樹義 宮地 元彦 山元 健太 村上 晴香 谷本 道哉 大森 由実 河野 寛 丸藤 祐子 塙 智史 家光 素行 田畑 泉 樋口 満 奥村 重年
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.291-302, 2010-06-01
参考文献数
23
被引用文献数
2 8

The purpose of this study was to develop prediction models of sarcopenia in 1,894 Japanese men and women aged 18-85 years. Reference values for sarcopenia (skeletal muscle index, SMI; appendicular muscle mass/height<sup>2</sup>, kg/m<sup>2</sup>) in each sex were defined as values two standard deviations (2SD) below the gender-specific means of this study reference data for young adults aged 18-40 years. Reference values for predisposition to sarcopenia (PSa) in each gender were also defined as values one standard deviations (1SD) below. The subjects aged 41 years or older were randomly separated into 2 groups, a model development group and a validation group. Appendicular muscle mass was measured by DXA. The reference values of sarcopenia were 6.87 kg/m<sup>2</sup> and 5.46 kg/m<sup>2</sup>, and those of PSa were 7.77 kg/m<sup>2</sup> and 6.12 kg/m<sup>2</sup>. The subjects with sarcopenia and PSa aged 41 years or older were 1.7% and 28.8% in men and 2.7% and 20.7% in women. The whole body bone mineral density of PSa was significantly lower than in normal subjects. The handgrip strength of PSa was significantly lower than in normal subjects. Stepwise regression analysis indicated that the body mass index (BMI), waist circumference and age were independently associated with SMI in men; and BMI, handgrip strength and waist circumference were independently associated with SMI in women. The SMI prediction equations were applied to the validation group, and strong correlations were also observed between the DXA-measured and predicted SMI in men and women. This study proposed the reference values of sarcopenia in Japanese men and women. The prediction models of SMI using anthropometric measurement are valid for alternative DXA-measured SMI in Japanese adults.
著者
荒川 裕志 谷本 道哉 比嘉 一雄
出版者
独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では徒手抵抗トレーニング(MRT)と一般的高負荷トレーニング(WRT)の動作特性・生理特性の比較を行った。動作特性を比較した結果、MRTではWRTよりも大きな筋活動および筋出力を対象の筋に課すことができ、特に伸張性収縮局面においてMRTとWRTの差が顕著となることが明らかになった。さらに、生理特性については、MRTはWRTよりも筋損傷を誘発し、WRTと同程度の血中乳酸上昇・内分泌応答を引き起こすことが明らかになった。以上から、MRTでは対象の筋に対してWRTと同等以上の力学的・生理学的刺激を与えることができ、得られる効果が従来のトレーニング方法よりも潜在的に大きいことが推察される。
著者
谷本 道哉
出版者
独立行政法人国立健康・栄養研究所
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、比較的軽負荷強度で行う筋発揮張力維持法(Low-intensity resistance exercise with slow movementand tonic force generation:LST)を用いたレジスタンストレーニングの動脈・血管系に与える影響について調べることであった。以下の横断研究と運動介入から以上の検証を行った。横断研究結果30歳-50歳の男性中年者層の、(1)主にLSTに近い形態でのレジスタンストレーニングを十年以上続けている競技ボディビルダー(BB群)、(2)主に高負荷を用いたレジスタンストレーニングを十年以上続けている競技パワーリフター(PL群)、(3)定期的な運動習慣のない対象群(CON群)の3グループにおける動脈硬化度等の測定を行った。動脈硬化度を示す動脈スティッフネスはBB群、PL群においてCON群よりも有意に高かった。運動介入研究結果定期的な運動習慣・喫煙習慣のない男子大学生を用いて、(1)LST法を用いた全身のレジスタンストレーニングプログラムを行う群(LST群)、(2)高負荷を用いた通常の全身のレジスタンストレーニングプログラムを行う群(HN群)、(3)運動を行わない対象群(CON群)の3群を用いて週2回・3ケ月間の運動介入を行った。LST群においてHN群と同等の有意な筋肥大と筋力増強効果を認めた。動脈硬化度の指標である脈波伝播速度(PWV)はLST群においてのみ有意な低下(硬化度の改善)が認められた。CON群においてはいずれの測定指標においても実験期間前後に有意な変化は見られなかった。以上より、運動介入実験から、LSTでは通常の高負荷を用いたHNと同等の筋肥大・筋力増強を達成しながら、動脈硬化度に望ましくない影響を与えないことが確認された。横断研究において、LST的なトレーニングを主に行うBB群において動脈硬化度が高かったことは、BB群がLST的なトレーニング以外のトレーニングにもこ高負荷重量を用いたトレーニングも行っているためと考えられる。